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【豪華挿絵】月と金星とステラマジカ ~ヒミツの愛情魔法~  作者: 餅餅餅
第5章 月と金星と文無一行
33/89

冒険録32 悪友はエリートだった!

 そうして願いの力の源について一つの答えが出たところで、俺が小走りを止めれば、合わせて周りも立ち止まる。


「んじゃ、ルナの恩恵(おんけい)に預かって魔法ブーストといこうか。……あ、俺でいいよな?」

「うん、その方が良いわね」


 余裕(よゆう)があるにしても力を節約するに()したことはなく、今回のように用途が明確な場合は、夕の汎用(はんよう)魔法よりも俺のピンポイント魔法の方が適しているだろう。


「では……【縮歩(ファスト・ムーヴィン)!】」


 長めの効果で若干(じゃっかん)足が速くなるイメージを浮かべ、自分の足に魔法をかけると……無事に(あわ)い青の光を放った。それを見たヤスは(うらや)ましそうな顔をして、ほへぇと息を()らす。


「消費四十分ね」

「あいよ。んで夕にも、【縮歩(ファスト・ムーヴィン)!】。ルナは……すでに速いな。あとはヤスに――」

「たんま! 僕は自分でかけたい!!!」


 ヤスはかざした俺の手を軽く退()けると、自信満々の顔でそう(さけ)ぶ。


「……は? お前も魔法使えんの?」

「え、試したことはないよ? でも初めての大地が使えたんだし、僕にも使えるはずだろ?」

「いやいやそうはならんて」


 それが成り立つなら誰でも使えることになるだろうが。それにカレンが「キミ達三人以外は使えない」と断言していたので、ヤスはルナの力を使えないはずだ。


「まぁまぁ、ものは試しじゃん? えーと何だっけ……そうそう、【()()()()ムービン!】」

「おい!」「ぷふっ――すみません」


 訳は「デブの歩み」と真逆の意味の詠唱(えいしょう)であり、夕が思わず吹き出すのもやむ無しだ。

 これでは力の源うんぬん以前の問題かと思いきや……


「ホラキタァ!」


 なんとヤスの足が(まばゆ)い黄色の光を放ち始めた。


「うっそだろ!?」「ちょちょ、なんでよぉ!?」


 そうか、ヤスがイメージさえできていれば、詠唱はデタラメでもいいんだよなぁ……にしたっておかしくね?


「そもそも何でお前も使えるんだよ? ……夕、減ってるか?」

「んーん。ルナちゃんの力じゃないみたい」


 そうなると、まさかこの世界に元々ある魔法を使えたってことか? 修練を積んだエリートしか使えない魔法を? このアホヤスが? んなバカなっ!!!


「おおお? てこーとーは? 僕の秘められし魔法の才能が開花したパトゥ~ンではぁ? いやぁ自分の才能が怖いなっ! ヘッヘッヘェ」

「うっそくせぇぇ……んですぐ調子ん乗りやがってうっとおしいなぁ!」

「ハッハッハ。人の才能を(ねた)むのは関心しないなぁ、大地先生?」


 ヤスは(かた)(すく)めて両手を上げ、ヤレヤレと首を振る。


「僕を見習って精進したまへ――」

「しゃらくせぇ!」「なのー!」

「へぶぁっ!」


 俺の宇宙大地斬(チョップ)と共に、フェアリータックルが鼻に()()さる。よし、連携(れんけい)もバッチリだ。


「あはは……でも靖之(やすゆき)さんらしい、かもね?」

「だなぁ……」


 ヤスだから仕方ないと納得するしかないのか。ほんと理屈(りくつ)の通じないヤツだぜ。


「イツツツ……ダブルは効くなぁ……」


 鼻を押さえて(うずくま)っていたヤスがムクッと立ち上がると、


「よし! これで僕は超エッルィ〜ト魔法で足がすんげぇ速くなってるはずだなっ!?」


 ドヤ顔でスタンディングスタートの構えを取った。その両足は依然(いぜん)と眩い黄色の輝きを放っており、かなり強い効果が発動していると予想される。


「おいヤス、どんくらい加速するか分からんから注意して走――」

「ヒャッハー! 僕は英雄(えいゆう)アキレウスっ!」


 俺の忠告も聞かずに全力で飛び出した自称(じしょう)英雄は、カタパルトの(ごと)く超加速し……


「――ちょまっ!? へぶっ、ごっ、ぶへぁ!」


 当然制御などできる訳もなく、道路(わき)へ頭から大転倒してゴロゴロと回転し続け、ズザザと地面を(けず)りつつ土煙(つちけむり)を巻き上げて止まった。……息の根も止まってなければ良いが。


「「……」」


 気まずい沈黙が(ただよ)う中で夕と顔を見合わせると、見計ったかのように遠くでカラスがカァ~と鳴く。


「あー、えとぉ……そ、そっと歩きましょ!」

「……だな」


 二の(まい)にならないよう夕と慎重(しんちょう)に歩き出すと、()け足ほどの速度で勝手に足が前へ進み、(おどろ)きはしたものの転びはしなかった。――ああ、実験台(先達)はあらまほしきことなり。


「……靖之さん、生きてます?」

「……なん……とか……」


 十mほど先で地に倒れ()すヤスへ近付いて、夕が心配そうに声をかけると、ヤスは絶え絶えながらも生存報告してきた。


「ははっ、流石(さすが)は超エリート魔法(笑)の使い手だ、速すぎてアキレウス(けん)でも切れちまったか?」

「……おうよぉ……すげぇ……だろぉ……?」

「一ミリも()めてねぇからな?」


 さらに俺が皮肉を言ってやると、なぜか得意げな返事が返ってきた。まったく、身も心も打たれ強さだけはエリート級――まさにエリートドMだな!




【82/162 (+0)】

ヤスに理屈は通じないようです。

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