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【豪華挿絵】月と金星とステラマジカ ~ヒミツの愛情魔法~  作者: 餅餅餅
第5章 月と金星と文無一行
32/89

冒険録31 みんなで夕日に向かってダッシュだっ!

 無事に森を()けた俺達四人を(むか)えたのは、目の前一面に広がる草原であった。右手方向となる西側を見れば、すでに太陽は地平線付近まで落ちており、棚引(たなび)く雲が(あかね)色に()まって何とも美しい光景だ。また、やわらかに(そよ)ぐ風が、(さわ)やかな草の(にお)いを運んできてとても心地よい。

 進行方向を見れば、ルナを追って少し先を歩いていた夕が立ち止まっていたので、俺はヤスと小走りで近付く。


「う~ん、素敵ねぇ~」

「やははー! かぜがきもちいーのー!」


 すると夕は、茶の制服スカートを(ひるがえ)してクルクル回りつつ、夕焼け色に染まった顔でそう言った。


「ああ。地平線に沈みゆく太陽なんて、日本じゃそうそう見る機会ないもんな?」

「んだねぇ。さっきまではそんな特別感なかったけど、記憶が戻った今はちょっと感動もんだなぁ~」


 そうして四人で和気藹々(わきあいあい)と草原の中を真っ直ぐ南へ進むと、道が正面と左右方向に()びるT字路にたどり着いた。


「へえぇ~、結構しっかりインフラ整備されてるのね?」


 夕が(おどろ)くように、その四m(はば)ほどの道には石畳(いしだたみ)が平らに()かれており、日本の無骨(ぶこつ)なアスファルト道路とは違ってとても(おもむき)深い。


「そだね。今向かってるのは王都なんだけど、その周りは特別気合入れて整備されてるって聞いてる。結構馬車とかも通るからね?」

「なるほど」


 そうなると、田舎に向かうにつれて土の道などに変わっていくのだろうな。

 そこで正面の道の(はる)か先を(なが)めると、(とう)らしきものが建っており、その下部から左右へと(かべ)が伸びていた。


「……あれがその王都か?」

「そう、王都ギャラック。ざっくり言うと五角形の形をしてて、高い壁にぐるっと囲まれてる。んで、今見えてるのは北側の頂点に建ってる塔で、その下に入り口の門がある」


 左右方向に延々と続く壁の先を目で追うと、何㎞先になるかは分からないが、()っすらと塔らしき建物が見える。それが二つ目の頂点となると、全体はとんでもない大きさになるが、普通は王都=国最大の都市だろうと考えれば納得の規模だ。


「えーと、超巨大な城郭(じょうかく)都市ってことです?」

「そう言うんだっけ? そういや城みたいに壁の前には(ほり)があるね。川の水を引いてるから、自由に()んだり魚を取ったりもできるんだ」

「ほえぇ~……ねぇねぇパパ、巨大城郭都市だよ! すっごくワクワクしちゃうねっ!?」

「だな!」「わくわくなのー!」


 城郭都市なんて漫画くらいでしか見たことがなく、とてもロマンを感じさせる。ただ、言い()えれば、王都を城郭都市とする必要があるほどには物騒(ぶっそう)な国ということでもあるが。


「……ところでさ。見えてる塔までまだ結構あるけど、着く頃には日が暮れてないか?」


 周りに対象物が無さすぎて距離(きょり)感が(つか)みにくいが、少なくとも二㎞以上はありそうだ。日没(にちぼつ)まで一時間もないこともあってか、周りを歩く人が全く居ない。


「そうよね……んじゃ、みんなで走ろっか?」

「ああ。夕日に向かってダッシュってとこだな?」

「うふふ。青春っぽくていいわね♪」

「かけっこするのー!」

「僕はぶっちゃけしんどいけどねっ!」


 そこそこ装備が重そうなヤスは、文句を言いつつもどこか楽しげだ。あと、ルナは飛んでいるので()けっことは少し違う気がするぞ。

 そうして夕日を横目に一同小走りになったところで、


「――あ、そうだ。魔法使って加速したらいいんじゃ?」

「だねっ!」


 便利な魔法のことを思い出した。


「ヤス、ここって危険な魔物とか出ないよな?」

「ああ。深夜とかは危ないって聞くけど、今はせいぜい野犬とか? さっきの骸骨みたいなヤベーのは絶対居ない――ってか王都周りにあんなのがうろついてたら、死人が出まくる!」

「だよな――となると出し()しみ無しだな」

「うん。今は二時間四十分の満タンね」


 夕は走りつつも時計を開いて確認してくれた。魔素(まそ)をレンチンした時から十五分増えているが、その間で魔法を一切使っていない……これは力の秘密のヒントに……ああそう言えばさっきルナが……お、これはもしや?


「……何の話?」


 少し考え込んでいたところで、事情を知らないヤスから疑問の声がかかる。


「ああ。この夕の時計に表示される力を使うと、魔法みたいに願いが(かな)う」

「あっそれそれ! さっき大地が魔法使えたのが不思議だったんだ。この世界じゃ普通は長年修行したエリートしか使えんからさ?」

「へぇ、そうなんか」


 どうやら、この願いの力とは別に魔法が存在しているらしい。


「で、そっちの力ってのは何なん?」

「すみません、それはまだ良く分かってないんですよぉ」

「……いや、ひとつ予想がついたかも?」

「え、ほんと!? さっすがパパだわ!」


 夕が(となり)からキラキラの眼差(まなざ)しを向けてくるが、解明できた訳ではないのでそこまで期待しないで欲しい。


「いや、全部に当てはまるかは分からないが……ルナの願いが叶うと増えるのではと?」

「よんだー?」


 小走りに進む俺達の前でルナが万歳(ばんざい)してきたので、(うなず)き返しておく。


「ほら、さっきの骸骨との戦闘で、ルナがやる気満々になった瞬間に増えたろ?」

「あっ、たしかに」

「つまり、ルナがワクワクしたり喜んだりすると増える……最初にルナがしたい事と言ってた、大冒険とか……ア、アレとかな?」

「っ!? ええと、アレ、ね。そっかぁ、そういうことかぁ……」


 夕は照れて(うつむ)いたかと思いきや……「あれ? これってチャンスかも? うふふふふ」などと(あや)しげに(つぶ)きはじめた。……おーい夕さん? 変な雑念(ざつねん)()れてますよ?


「……あのー、僕イマイチわかんなかったんだけど……アレって?」

「お前は知らんでいい!」「そうです!」「なのー!」

「僕の(あつか)いひどくねっ!?」


 俺と夕が仲良くするほど力が()まるなんて、ヤスに言えるかっての。盛大にからかわれる――ってそうか。だからカレンは教えずにいて……裏でこっそりニヤニヤしていた訳か! チキショウメ!

 だがこれで、世界の(かく)であるルナを満足させると、その恩恵(おんけい)として力が使えると分かった。なぜ俺と夕が使えるのかは分からないが……ルナが俺達に心を許しているから、とかだったらちょっと(うれ)しいかもな。



【願いの力:162/162 (+7)】


大地君達が願いの力の秘密に少し気付き始めたようです。……本当にそれだけかなぁ?

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