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【豪華挿絵】月と金星とステラマジカ ~ヒミツの愛情魔法~  作者: 餅餅餅
第4章 月と金星と悪友参上
31/89

冒険録30 悪友はとてもツイてるぞ!

 俺総ツッコミのカオスな(さわ)ぎも収まり、引き続き(みな)で情報交換しつつも歩みを進める。ヤスとの合流地点で三十分と聞いていたので、もうそろそろ出口に着いても良い頃合(ころあ)いかと思う。


「……ところで、靖之(やすゆき)さんはここに来てどのくらいなんです?」

「んー、一ヶ月くらい? 来た時の事は良く覚えちゃいないんだけど、なんか道端(みちばた)(はだか)一貫(いっかん)で倒れてたらしい。んで親切な酒場のマスターに(ひろ)われた」


 裸一貫……ただ単に裸で倒れていただけな。


「……お前よく生きてたな?」

「マジそれよ」


 もし俺達も裸で飛ばされてたとしたら、色々な意味で大変なことになっていたところで、このヤスの強運があってこそ()えられたというものだ。


「おまけにさ、記憶どころかお金や服すらもない僕を、住み()みで働かせてくれてなぁ……いやもうマスターにはガチで感謝しかない! ――まぁ仕事トチったら(こぶし)が飛んでくるような、くっそこえぇオッサンだけどな!?」


 日本では(なや)みもなさそうなお気楽ヤスだったが、ここでの一ヶ月は随分(ずいぶん)と苦労してきたようで……確かに裸一貫からのスタートだな。一応は異世界生活の先輩(せんぱい)ということになるし、(つめ)の先程度には敬っておこう。


「で、その酒場スタッフがなんで剣士に? 一端(いっぱし)の武具まで(そろ)えてさ?」


 ヤスは刃渡り五十㎝程の剣を収めた(さや)を左(こし)()るし、左手に直径四十㎝程の円盾、(かた)と胸に皮の当て物を装着しており、どう見ても酒場で働く格好(かっこう)ではない。それでヤスは顔立ちが悪くなく金髪なこともあって、この西洋風の格好がまた妙に似合っている。……何だか(しゃく)だな。


「あーそれがなぁ……酒場の仕事もフルタイムって訳じゃないんで、空き時間にぐーたらしてたんだけどさ……『おい坊主! (わけ)ぇんだから冒険でもして(かせ)ぎながら(きた)えてこいや! ――んまぁ、頭んなか飛んじまった坊主(ぼうず)にはちとキチィかもしれんが……おっ()んだら骨拾って墓ぐれぇ作ってやんよ、ガハハ!』と強制的にっ! 僕に安息の時はなかったっ!」

「あはは……なかなか豪快(ごうかい)なマスターさんなんですね?」

「ほんとそれよ? 街に帰ったら紹介(しょうかい)するけど……魔物と思って悲鳴上げないようにね?」

「そっ、そんな失礼なことしませんよ!」


 夕は心外ですとばかりに(ほお)(ふく)らませている。

 魔物と間違えかねないって、どんだけだよ……聞いた感じでは、ヤスの苦手補正もありそうだ。


「――んでこの装備一式は、マスターの若い頃のを借りてる。さすがに装備も無しに外へ放り出すほど鬼じゃなかった」

「ほえぇ、すっごぉ……実物の武具なんて博物館くらいでしか見る機会ないし、何だかワクワクしちゃうね?」

「ああ。古いけど、どれも造りがしっかりしてるな」

「うん、物はいいらしいんだけど……結構臭い!」


 盾には欠けや(へこ)みが見られ、鞘や防具にも古い傷がいくつも付いており、随分と年季の入った品々だ。恐らくそのマスターさんの思い入れもあるはずで、そんな品を貸してくれるとなると、ヤスは案外気に入られているのだろうか。弓道部でも部長として部員から(した)われていたし、このアホさ加減が良い味となって人を()き付けるのかもしれない。


「となると、今日はその冒険がてらで森に来てたって訳な」

「いんや別件――というのも、今朝厨房(ちゅうぼう)で料理の仕込みをしてたら、突然目の前に知らない美少女が現れてね? 『ヤッス君、突然で済まないが昼過ぎに北の森へ行ってくれないかな? (たの)みを聞いてくれたならば相応の礼はするよ、くくく』と言ってきたんよ。もち秒でオッケーした」

「「……」」


 俺は夕と顔を見合わせると、(そろ)ってヤレヤレと首を振る。口調と状況から考えて、間違いなくカレンだろう。まさかヤスと会えるように裏で手を回してくれていたとは……ほんとお節介(せっかい)大好き魔王様だな。


「えっとぉ、靖之さんはよくそれで言うこと聞きましたね? その方に(だま)されてるかもとか考えなかったんです?」

「え、そりゃぁ女の子のお願いだし? 聞くでしょ、常識的に考えて」

「世間の常識に謝れ! お前の常識は非常識だ!」

「っだろぉ? 僕ってトガッてるよなぁ~」

()めてねぇよ!」

「ふぐぁ!」


 ツッコミのチョップを入れようとしたが、すでにルナが「なのー!」と叫んで眉間に体当たりし、手際良くヤスを悶絶させていた。ああ、なんて優秀な娘なんだ。


「アツツツ……んでそのかわい子ちゃんはすぐどっか行っちゃったけど、こうしてちゃんとお願いは聞いたし、きっとまた会えるはず! うーん、小悪魔的な笑みが何とも素敵な子だったなぁ……ああそういや、その子の顔とかSっぽい雰囲気(ふんいき)が……そう、クラスのなーこちゃんに似てたような――ん? ひょっとして姉妹だったり? ってか大地らも来てるってことは……むしろ本人まであるんじゃね!?」


 ヤスは日本での記憶が戻ったことで、その正体に思い至ったようだ。


「やっと気付いたか。ちなみにここでの名前はカレンだ」

「マジか!」

「しかも魔王」

「ちょまっ!? やっべぇ……ホイホイ言うこと聞いたらまずかったパターン?」


 美少女の正体を知ってヤスの顔が一瞬で青ざめる。ちなみにヤスも、俺と一緒にカレン(なーこ)からお仕置きされた仲なので、あの子の恐ろしさは重々理解している。


「そもそもカレンじゃなくてもマズイとは思うが……ただ今回については、単純に俺らを会わせたかっただけで、何か悪巧(わるだく)みをしようって訳じゃないと思うぞ?」

 

 とは言え、カレンの考えている事なんて俺程度に読めるものではないが。


「んー……大地がそう言うなら大丈夫だな」

「うふふっ、信頼(しんらい)してるんですね。嬉しいです」

「ははっ、そうかも?」


 なぜかヤスは、俺の判断に全幅(ぜんぷく)の信頼を寄せてくる。……まぁ悪い気はしないが、少しは自分で考えて欲しいものだ。

 そう(あき)れつつ歩いていたところで、


「――お? そろそろ出口っぽいよ?」


 ヤスから(うれ)しい報告があがった。それで視線を奥へと向ければ、遠くの樹木の間には光のカーテンが広がっており、どうやら森の切れ目のようだ。


「ふぅ、やっとか」「もりはあきたのー!」「早く街で休みたいわねぇ」「ああ、僕生きて(もど)れたんだなぁ!」


 色々と盛り沢山(だくさん)だった森林探索(たんさく)もようやく終わりということで、皆で安堵(あんど)の表情を浮かべて口々に話す。


「やははー! るながいっちばーん!」

「んもぉルナちゃん! 危ないからあんまり先行っちゃだめよ~?」

「わかってるのー! だからままもはやくはやくー!」

「はいはい、そう急かさないのー」


 一人飛び出して両手を振るルナを、夕が小走りに追いかけて行く。


「へぇ、夕ちゃんはすっかりママさんだなぁ――っとなると、大地もパパらしくしないとじゃね? 予行練習も()ねてさ? ハハハ」

「ほっとけや!」


 こうしてヤスを加えて四人になった俺達は、期待と少しの不安を胸に抱きつつ、まだ見ぬ新世界へと一歩()み出すのであった。



~ 第四章 月と金星と悪友参上 完 ~  



【155/155 (本章での増加量+55)】


第4章までお読みいただきまして、誠にありがとうございます。


このヤスってヤツ面白いぞ? やっぱハピスパにはヤスが居ないとな! などと思われましたら、ぜひとも【★評価とブックマーク】をお願いいたします。


第5章は、悪徳商人との商談バトルが見どころでございます。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

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