冒険録22 ヒロインの時計は時計にもなるぞ!
そうしてお節介魔王様のオンライン魔法講座を受講し終えた俺たち三人は、おかげ様で危険な魔物への対処法を身につけることができた。実に物騒な世界ではあるものの、この願いの力を上手く活用していけば、冒険の先行きも明るくなるだろうと期待している。
それからカレンが魔法講座の他に細々とした追加アドバイスをくれたところで、そろそろお開きと言った雰囲気になってきた。
『さて、あとは実践を積むことだね。しっかりと可愛い娘達を守ってあげるのだよ、パパ殿?』
「もちろんだ。任せとけ」「あたしも頑張りますっ!」「るなもー!」
『うむ。艱難汝を玉にす――異世界の荒波に転がされて、ピカピカファミリーになりたまえ』
最後にカレンは、講師らしく有り難い訓示で締めくくった。
『――ではわたしはこの辺で失礼。こう見えて色々と忙しい身なものでね』
「ああ、色々とありがとな!」「本当にありがとうございました!」「かーちゃんまたねー!」
『ふふっ、キミ達に素敵な異世界冒険ライフを!』
受講生一同のお礼を受け、カレンがニヤリと口の端を上げてサムズアップをしたところで、ホログラムスクリーンがシュンと閉じられた。
「――ふぅ。いつも通り色々と七面倒臭い魔王様ではあったけど、アドバイスは大助かりだったな」
「ほんといい人過ぎるわよねぇ。んー……でもさ、いずれはカレンさんと戦うってこと……だよね?」
「うーん……」
ひとまずの目的は冒険をしつつ魔王を倒すこととなっているが、お友達を倒す気になんて全くなれないし、そもそも勝てる気が一ミリもしない。夕も同じ考えなのか、悩ましげなため息を吐く。
「――んまぁカレンのことだ、このお題にも色々と意味があるんだろうよ。今は成るように成れでいこうぜ?」
「ふふっ、それもそうね? ――よぉーし、さっそく森に再チャレンジ……の前にっと」
夕が言葉を切って懐中時計を開くと、力は一時四十分を示していた。また三十分も増加し、合わせて全回復している。
「相変わらず謎だなぁ」
「だねぇ……」
ゲーム的な思考をすれば、俺の魔法が成功することで熟練度的な何かが上がったから……? でも夕が失敗した時も沢山増えたし……うーん。
「でもこれで戦う準備は万端ね? あと、たしか……」
続けて夕が文字盤中央のボタンを押すと……三本の針がグリンと回り、十五時半過ぎを示した。
「お、ちゃんと変わった。時計があるのはでかいよなぁ」
「ええ。魔改造されたのはちょっとアレだけど、便利になるのは大歓迎よ」
実は先ほどカレンから、力の計器と通常の時計の切り替え方法を教わっていたのだ。
「それと一日の時間や気候など諸々の環境は、日本と大体同じって言ってたわね。今は五月頃らしいから、日没は十八時半頃……おとと、あんまりのんびりしてられないよ!」
「おお、もうそんな時間か」
魔法講座は絶対に必要なものだったが、少々時間を使い過ぎたかもしれない。魔物は光に弱いと言っていたので、何としても明るいうちに森を抜けたいし、できれば街などの安全な場所まで辿り着いておきたいものだ。
「じゃぁ、善は急げで出発よぉ!」
「しゅっぱつしんこー!」
「ああ、見てろよ骸骨め! しっかりとお礼参りしてやんぜ!」
一度は骸骨から逃げ帰った俺達だが、新たに得た魔法という武器を手に、来るリベンジマッチへと闘志を燃やすのであった。
【現在の願いの力:101/101 (+1)】
はてさて、今度こそ森を抜けられるのでしょうか。




