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兄の愛の重さを舐めていた2


「これで、本格的に冒険者稼働再開なのぉ?」


 依頼が受理されて、移動中。

 もやっとしていた原因がわかったから、速攻終わらせて、弟の元へ帰りたい。つんつんしつつも、心配して、待っていてくれているかわいい弟だから。


「いや、大々的に移動して依頼を受けるのは、今回だけだ。あとは零……じゃない、家庭教師の予定の合間に近所の依頼をこなしていくつもりだ」


 自分でも、弟に対する愛の重さは、重すぎるとは理解している。だが、これくらい重くしておかないと零が消えてしまいそうなくらい、存在が軽くて……、零の代わりに零のことを大切にしなくてはと思ったのだ。

 活動しないって選択するのも一つの考えだったのだが、このおっさんのことも心配だし、なによりも妖精使いのことも心配だ。妖精使いには、かわいそうなことをしたかもしれんが、俺と同じく俺が信用できるギルドを通して、ここを拠点に活動してもらっている。

 零曰く、学園に通うには十分な学びをできていると言われたので、これからはこまめにギルドに顔をだしておきたい。


「おじさんのことはいいからぁ、妖精使いの子を助けてあげてよ。あの子、季水よりも年上なのに騙されそうで、おじさんこわ〜い」


 今回初見で、飛翔靴を渡してみたが、ものの数分で使いこなせて移動できているおじさんにまず、腹立った。そして、なによりも妖精使いは確かに騙されかけていたところを助けたことはあるが、心の闇の程度が低いし、騙されやすいところ以外は心配ない。


 だがな?


 おじさんの肩をどつく。


「零が最優先だ。だがな、俺は妖精使いよりもあんたが心配だ。俺がいないと、パーティも組めない。パーティ必須のはずの高ランクの危険性のある薬草採取ばかり行きやがって、命を大切にしない。騙されたやすいのと、命を大切にしないやつどちらを優先するかなんて決まってんだろ!

騙されたら、あとあと騙した奴らを徹底的に潰せばいい。だがな、いないのところで死なれたら助けようがないだろ! だから、定期的に依頼受けるし、学園に入ったら毎週帰ってくる。そうしてほしくないなら、自分の命を大切にしろ! 以上だ」


「……うん、ごめんなさぁい」


 うむ、よし。

 それにしても、妖精使いはこの世界の常識が足りてないな。玲亜に頼んで一緒に学園に入れてもらうか。年は違うが、誤差の範囲内だろう。テキトーに、病弱で適齢の時に受けられなかったとか、理由をつければいけんだろ。

 妖精使いの力に関しては常に俺のそばにおいておけばいいか。有栖の報復が怖い、貴族らは手を出してこれんだろ。心配なのはあれだな、天神家の奴らだな。零に執着しているやつが確か、俺と同じ年だった気がするわ。


「まあ、お前が言うことも一理ある。テキトーに理由つけて四年後に一緒に学園入れさせるわ、妖精使いは。この依頼が終わったら、妖精使い探しでもして、あいつを巻き込んでまた勉強中心の生活に戻るとするか」


「それがいいよ。あの子とはパーティ組んでもいいけど、おじさんじゃ、あの子のこと守りきれないしね。季水が物理的にも権力的にも守るのが一番安全だよ」


 ふぅ〜ん? 妖精使いとはパーティ組めるとは思っているんだ。珍しいこっちゃ。


「じゃあ、今度3人で依頼でも行くとするか。おじさんが大丈夫っていうやつなかなかいないもんな。

それはともかく、あいつにはこの世界の常識が必要だ。それに、弟が妖精使いの力を貸して欲しいって言ってんだよ。だいぶ、待たせてるからなぁ。人を避けているあいつでも、零なら平気だろ。零が一番警戒している相手の懐に入るのが上手いしな」


「なに? 妖精使いの力を利用するつもりなの?」


 一瞬で空気が凍ったな、おい。


「いや、妖精使いに力を借りなくても解決方法は見つかってるから、強制じゃないぞ。弟は、嫌なことを無理矢理させるようなやつじゃないからな。お前、強烈に怒ってたところしかみてないから、貴族らしいやつと勘違いしたんだろうが、有栖の中で一番心優しいのは弟だぞ。俺に対して、ツンツンしちゃうところがまたかわいいんだ」


 聖獣2匹でも孵る気配すらないんだから、妖精の力が借りられなくても、まあって感じだろうしな。このままだと、精霊の力を借りないと孵らなそうだし、できるだけ生命力で生きている多くの生物から、力を借りておきたい。

 見た感じ、精霊より聖獣の方が性格は良さそうだし、聖獣4体で卵が孵ってくれた方が零の負担が少なくなる。水の精霊は性格がきついらしいし、玲亜曰く女性体である可能性が高いらしい。女性が苦手な弟に会わせたくないし、妖精の力が借りられるのが一番だと思った。

 恐らく、玲亜曰く、土の精霊は力を貸してくれるだろうとは言っていたが。弟に負担にならないようにしたいし、危険な目に遭ってほしくはないと兄は思う。


「できれば、妖精使いの力を借りたいのは俺の方だ。弟がしていることは、命をかけてたくさんの生き物に力を借りなければいけないことなんだ。時には気性の荒い生物に力を借りなければいけない時もくるだろう。できる限り、穏やかにすむ方法で、弟の望みを叶えてあげたいそれだけなんだ。権力は使わない、妖精使いが納得して力を貸してくれるまで説得するつもりでいる」


「無理矢理しないって約束するんだな?」


 おじさんの問いに頷く。


「それならいい。この靴、すごいね。もうすぐで目的地よ」


 それにしても腹立つな。俺が何時間とかけて慣らした、飛翔靴を数十分で慣れやがって。そもそも、このおっさん、まともにパーティ組めてたら、今頃ーー。


「目的地はあそこだよ」


 ーーそれ以上は考えるなってことだな?

 何があったかは知らんけど、まあいいや。今は零の手土産をどうするかについて考えようではないか。


「あれが、雨に当たっても燃え続ける炎ってか。別に被害がないならそのままでも困らんだろ。わざわざ依頼するようなことか? これを知りたがるとか、この力の持ち主の力を利用したいですって言っているようなもんじゃねーか。……ん? 燃え続ける?」


「そう言ってやるなよ。だから、権力のある季水を連れてきたんじゃないかって、どうしたの? なんか、引っかかることでもあった?」


 燃え続けるってことは、だ。

 常に力を使い続けているってことだ。

 コイツはいい!


「正体を見つけて、零の土産にする!」


「は? 何言ってんだ! 人間だったらどうするんだよ!」


 どうするだって? そんなの決まってんだろ!


「成人してれば冒険者なり、就職させて屋敷に住まわす。子どもだったら成人するまで養って、就職させて零のそばにいさせるだけだ。うちには孤児院から引き取った三つ子もいるし、何人増えたところで経済は破綻しねーよ! 魔物だったら、零の従魔にすれば良いし、それを嫌がれば森に住まわせればいい。もちろん。本人を説得して、連れて行くがな?」


 これで、零が一人で生きていかなくてすむなら、なんだってする。俺じゃ、寿命を延ばして出来るだけ一人にしないようにすることはできても、限りがあるからな。

 常に力を使っているやつなら、限りなく零に近い寿命になることができるはずだ。


「兄ちゃんに任せとけ!」


 俺の愛の重さをなめんじゃないぞ!

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