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精霊の話3


「そう言えば、ノアールはどうやって水の精霊に一緒の土地にいることを認められたの?」


 気になっていたんだよね。

 プライドが高く、攻撃的。そんな性格をしているのに、共存を許しただなんて。


「1日分のエネルギーを使い果たすまで、防御し続けたのだよ! 先代から、産まれた時から先代より高かったと言われたのだ! だから、持久戦に持ち込んだのだ! 狙ったとおり、ボクの方が生命力が高くて、一緒の場所にいるのを認めさせたのだ!」


 ……驚いた。

 このかわいい精霊さんは、かわいいだけじゃなく、スペックも高かったようだ。


「……もしかして、生命力が高すぎるが故に、攻撃スキルの弊害が出てたりする?」


 その言葉に、肩の上で飛び上がった。

 きっと、人で言う方がビクッとした動作がこれなんだろうなぁ。図星で驚いたってところか。


 説明すると、生命力は総量が大きければ大きいほど、力を操作するのに神経を使う。総量が小さければ、それに応じて神経を使わなくても生命力が排出される量は少なくなる。

 つまり、神経を使わないで使うと総量に比例して、スキルを使うと生命力が排出される量も増えていくと言うことだ。


 防御スキルで力が排出され過ぎてしまうのは問題がないが、攻撃スキルは駄目だ。総量が大きければ大きいほど、的確に排出する量を操作しないと、一撃必殺になってしまう。つまり、殺めてしまう必要がない生き物も殺めてしまうと言うことだ。


 それは、有栖の土地では都合が悪い。


「……ノアール、図星なんだね? 有栖の土地にいる生き物達は、僕らが管理している住人だよ。力のコントロールが原因で住人に被害がいくのは困る。有栖の土地に住むつもりでいるなら、力のコントロールをできるようになってもらうよ」


「ボク! 攻撃スキル使わないのだ! だから、土の位に帰れだなんて言わないでほしいのだ、お願いなのだ」


 僕の頬に、抱きついてくる。

 ……一言も追い出すなんて言ってないんだけどなぁ。


「ノアール、もしノアールを利用しようとする悪い人間がいて捕まえようとしてきたら、攻撃もせずに防御だけに徹して力尽きるまで待つつもりなの? 幼体になるくらい、管理することに苦労しているのに、効率悪くない? って言っているの。

何も追い出そうとしているわけじゃないの、反撃手段がないノアールのことを心配しているし、罪のない生き物を殺めてしまう後悔をさせないために力をコントロールできるようになってほしいって言ってるの。わかる?」


「……心配してくれてありがとうなのだ。でも、力のコントロールの練習したら周りの人を傷つけてしまったのだ。自分の力が怖いのだ」


 ……この子、本当に成人になったばっかりだったんだ。

 何とかしてあげたい、このトラウマをなくしてあげたい。


「ノアール、僕に任せて!」




「お父様! おはようございます」


 この時間は書斎で仕事をしているはず。思った通り、そこにお父様はいた。


「おや? いつもより遅い起床だね……って、肩にいる方は誰かな?」


 穏やかに笑っている。……なんとなく、ノアールの正体に感づいているような気がする。


「この子はノアール、土の精霊です。本人からの希望で、様付けも敬う態度もいらないそうです」


「……そうか。季水から話は聞いていたが、本当にいたとはね。ノアール、よく来たね。好きなだけ、うちで過ごしていってくれ。それで? 零は何しに来たんだい? いつもなら日課の畑の管理の時間だろう?」


 ノアールの問題の方が緊急性が高いからね。


「ノアールの攻撃スキルの弊害をどうにかしてあげたいんです。……どうやら、周りを傷つけたトラウマがあるようで、鍛錬しても誰も傷つけないようにするにはどうしたらいいでしょうか?」


 お父様は今、最低でも白虎様と青龍様の結界を張っている。強度の面で言うと、お父様に頼むのが一番だが、これ以上結界を張るように頼むのは負担が大きすぎる。それ以外の方法があるならと思い、相談しに来たのだ。


「あら? 零と……、土の精霊のノアールじゃない」


 お父様が何かを発する前に、後ろから青龍様が来た。


「何の話をしていたの? ノアールを連れているから、精霊関連の話かしら?」


 ……そうだ! お父様ではなく、青龍様を頼ろう!


「青龍様、ノアールは生命力が強すぎるが故に攻撃スキルの弊害に悩まされています。どうやら、周りを傷つけたトラウマがあるみたいで、どうにかしてあげたいんです」


「精霊で、生命力の弊害になるなんて珍しいわね。聖獣で生命力の弊害が出ることはかなりの確率であるけれど、ちょっとごめんなさいね」


 手でおいでおいでされて、脊髄反射で近づくと肩に乗っていたノアールを手のひらに乗せ始めた。


「あら! あらあらあら! この子、玄武に近い力を持っているじゃないの! ……まだ、玄武は私ほど弱まっていないはずなのに、どうしてかしら?」


「精霊から、聖獣が生まれるんですか?」


 降って湧いた疑問に対して、青龍様が首を振る。


「零なら言ってもいいかもしれないわね。生まれる原理はほぼ一緒だけれど、聖獣は卵を持って生まれるのよ。力を使うことによって余計に排出された力を卵が吸収して、同じくらいの力になった時に卵が孵る準備を始めるの。

で、孵るタイミングは精霊と同じよ、先代の成獣の力が衰えた時に孵るの。まあ、私の場合、総量自体が弱まっていたから吸収する量も少なくなっていたから、卵が孵る事態は防げたんだけどね。零がいなければ、最弱の青龍が産まれて、この世界は衰退していたわ」


 世界滅亡の危機の要素一つを救ってしまったのか……、僕。

 そりゃ、緋陽が必死に自分の身を守れと言うはずだ。

 やったことは、勇者や聖女のようなことなんだもの。教会に気をつけろって言われるよね。

 僕の周りの人は悪い人間がいないかもしれないけど、どこに利用してくる奴がいるかわからないから、周りの大人達は僕のことを過保護に守るんだね。


「やっと、自分のしたことのことの重大さに気づいたようね。……まあ自覚したんだから良いわ、今はノアールのことよ。今じゃ、精霊は属性ごとに一体しかいない貴重な存在よ。そんな存在を悪い人間が悪用しないわけがないわ、力が強過ぎて攻撃スキルが使えないのは致命的すぎるわ」


「……わかってますなのだ。零のことは気に入ったのだ、力が戻ったら分身体を渡すつもりですなのだ。力のコントロールができないままだとまずいのだです。聖獣様に教わるのは恐れ多いことなのですが、よろしくおねがいしますなのだ」


 ノアールの分身体がそばにいるとなると、さらに狙われるんじゃ……と思ったが、ありがたい気遣いなので、黙っておく。


「この子には過剰戦力くらいがちょうどいいから、徹底的に鍛えてあげるわ。……問題はあなたの存在をどう偽るかよね。実際はノアールがプライドが高くないから、力を貸してくれるんだけど、精霊と契約する力があると勘違いされると厄介だわ。……どうしましょうかね、朱基と相談してみるわ」


 わぁお。僕の身辺警護の強化には、反対ではなさそうだ。


「零以外にも話がわかる奴がいるなら、力を貸してやってもいいのだ。……そうそう気にいる奴がいるとは思えないのだが」


 偉そうに僕の肩で、踏ん反り返っている。……いちいち、かわいいんだよなぁ、この子。

 まあ、どこが気に入られたのかすらわからないけど、そばにいてくれるようだ。


 僕にしたら、かわいい子がそばにいていれるのは癒しになるからいいけど。



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