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精霊の話2


 時計を確認すると、6時半。

 しまった、昨日深夜に一度起きてしまったから寝過ごしてしまった。


「おはようなのだ!」


 枕元で土人形がぴょんぴょん跳ねている。


「昨日は窓枠で寝落ちしていたのをベットに戻してやったぞ。感謝するといい」


 胸を張る土人形に朝からほんわかした気分にさせられた。


「ノワールは優しいね」


「……なっ、何を言っているのだ。当然であろう? 精霊の中でもボクは懐の広い精霊なのだ」


 偉そうにしながら、もじもじと照れている。

 その様子を眺めながら、手早く身支度を済ませて、ノアールを丁寧に肩に乗せれば文句も言わず、座る。


「これからなにをするのだ?」


「んー、畑の管理をした後、ごはんを食べて休憩してから鍛練かな? 午後からノアールの住処に行くつもり。人入れたくないかもしれないけど、住処を綺麗にするために必要な人を連れて行っても良い?」


 ノアールは体を傾けている。多分、顔を傾げているつもりなんだろうけど、体が小さくて体ごと傾いてしまうんだと思う。……かわいい、癒される。


「良いのだ。……お前だけなら場所を知られても良いのだが、他の奴らは嫌なのだ。転移で運べば、知られないからボクが転移で運ぶのだ」


 ……精霊って転移の魔法使えるんだ。


「転移の魔法使えるんだって、思ったのだ? それは違うのだ。人間にも先天的なスキルがあるように、精霊にも先天性スキルがあるのだ。ボクは偶然、転移スキルを持って生まれただけなのだ」


 そうなんだ。……って、これってどの精霊関係の本に書かれてなかった事実じゃない? 精霊はプライドの高い存在だから、どの研究者も接触できても話はできなかったから、見た目の話しか載ってなかった。あとは、攻撃スキルがどんな感じなのかとか。


「ステータスに関しては同じなんだね」


「そうなのだ。違うことは、血縁スキルって呼ばれているものは継承スキルと言うことくらいなのだ」


 場所は特定できても、話ができたことはなかったらしいから、これも新事実だ。……そう考えると青龍様の言うとおり、精霊の中ではプライドが高くないと言うことは事実なのかもしれない。

 聞いても怒る様子もないので、これを機に気になっていることを聞いてみよう。


「精霊はどうやって生まれているの? 人間とは違うのかな」


「人間と一緒にするな。心の性別はあるが、ボクたちの体は無生別なのだ。繁殖行為はできない」


 なるほど。それじゃあ、どうやって、うまれてきているのだろう? と首を傾げる。


「ボクたちは、強すぎるが故に、生命力が少し溢れているのだ。その溢れた力が少しずつ集まって、後継の精霊が生まれているのだ。

生まれる頃には先代の力は溢れないくらいに弱まっていて、生まれた時に力を受け継いで、先代の生命力が尽きるまでは二人体制でその土地を見守るのだよ。まあ、他の精霊は違うかもしれないけど」


「うーん、それは土の精霊だけかもしれないね。精霊はプライド高い存在だから、プライドが高い同士ずっと一緒にいられると思えないな」


 何かを思い出したのか、カタカタ震えているノアール。どうしたのか聞こうとすると、先に口を開いた。


「そうかもしれないのだ。挨拶しに行った時、初手攻撃だったのだ。攻撃的で一緒に入れないのだ」


 精霊相手でも初手攻撃なのかと苦笑する。考えてみると大人しく肩に乗っているノアールは、精霊の中では変わっているのかもしれないと改めて思う。


「ノアールはやっぱり優しい精霊なんだね」


 こうして、話し相手になってくれてるし、寝落ちしたボクに布団に戻してくれたしね。


「先代には変わってるって言われたのだ。でも、それが悪い意味ではないとも言われたのだ。だから、ボクはわざわざプライド高く見せることはしてないのだ」


 僕からすれば、ノアールは自分が思っているよりプライドは高くないとおもうのだが、それは言わないでおく。話を変えようか。


「ノアールは、いつもその姿なの?」


「そんなわけないのだ、ボクは元々人型なのだ。元々の住処と今の住処の周りを管理していると使う力も倍なのだ。今の月光島では成人を維持したまま、2つの住処の周りを管理するのは命を削ることになるのだ。それは避けたいのだ。

お前が思っているより人型を維持するのは力を消費するのだ、この姿は省エネモードなのだ。この姿は幼体なのだ、精霊に挨拶行くくらいしか成人の姿にはならんのだ」


 その姿は幼体なんだ。しかも、律儀に元の住処まで管理してるんだなぁ、偉い。


「僕が住処を浄化すれば、ノアールの力になれるの?」


「なれるのだ! 少なくとも、成人の姿を維持しながら2つの棲家を管理できるようになるのだ。でも、この姿を気に入っているから、力が戻っても幼体のまま過ごすのだ!」


 肩の上で、ピョンって跳ねる。

 落ちないで器用に跳ねるなぁ。……幼体の姿を気に入ってるのか。なんかかわいいもんなぁ、幼体の姿。


「出来れば2カ所の住処を浄化してほしいのだ……。攻撃魔法を求められるあまり、住処を変えたが、あそこは先代との思い出の場所なのだ……」


 そうなると、転移していくわけにはいかないんだよなぁ。転移で行くと、不法滞在になってしまうし。


「うーん、そこはお父様に相談しないとできるかわからないなぁ。……元の住処は土の位なの? それとも、土影の位なの?」


 そこで変わってくるんだよなぁ。緑陽の位はあまり、公の場に出ると言う意味では貴族の役目を果たしてないから土影の位にはよく思われてないから、交渉がうまくいくとは思えない。


「土の位なのだ。先代より前は土影の位にいたらしいのだが、先代は反りが合わなかったみたいで引っ越したのだ。だから、ボクにも合わなかったら移動して良いって言ったのは先代なのだ」


 土の位か。友好関係を築けているから交渉は問題なくできそうだ。


「そうなんだね。土の位なら、お父様に相談すればなんとかなりそうだよ」


「そうなのか? ボクは成人になりたてだから、管理自体はボクがしているが、まだ先代は生きているのだ。先代は僕に優しかったから、余生は空気の綺麗な場所に住んでほしいのだ」


 親孝行だなぁ……、偉い。


「そうなんだね、お父様に頼んでみるよ。……攻撃魔法を求められるって言っていたけど、なんでそれがわかるの?」


「ありがとうなのだ。……わかるのは、先代が引っ越しの挨拶に行った時に、土の位にどうにか接点が欲しいって言われたから、祠を作らせたのだ。その祠に願えば、声が聞こえて気が向けば叶えてやってもいいみたいな感じで、接点があったのだ。……他の精霊は違うのか?」


 うーん、僕は精霊と違うからわからないかな?


「少なくとも、僕はここに水の精霊が住んでいることを知らなかったし、知っている限り水の精霊に力を願える関係にはないと思うよ」


「水の精霊に力を借りるなんて命知らずなことをするもんじゃないのだ! 水属性を高めたいのなら、青龍様に頼んだ方がまだ穏やかにすむのだ。人間嫌いと言えど、無駄な殺生を好まない方だからな。……まあ、そのアドバイスはお前には必要ないみたいだが。青龍様の力を感じるのだ」


 よくご存知で。

 気性が荒いと聞いて、平和的に済ませたい僕は近づきたいと思わないからなぁ。でも、月光島の汚染を浄化するには会わなきゃいけないから、人ごとじゃないんだよな。


「ん〜、月光島の汚染を浄化するためには、水の精霊と会わなきゃいけないんだよなぁ」


「それなら、力で勝つしかないのだ。お前は防御に長けているようだから、別の人間に力技で勝ってもらうのが良いと思うのだ。相手は話も聞かず、攻撃してくるからな。……お前の兄が鍛練すればできると思うのだ! 浄化してくれるお礼に戦っている間、守ってやってもいいぞ」


 ……季水くんに頼むしかないかぁ。もっと強くならないといけないと言うことなので、水の精霊の浄化は後回しだ。こんなに近くにいるなら、手早く終わらせたかったけど。

 僕のことは、ノアールが守ってくれるなら、とりあえずは安心だ。


「その時はよろしくね」


「任せろなのだ!」


 ぽんっと胸を叩くノアール。

 可愛くて、ほっこりした。


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