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守られる理由と水源


 私はとんでもない人に、仕えることになったのかもしれない。

 玲亜様とともに自由気ままに、王城へと赴き、白虎様の祠を結界で守った。


「結界を張る約束、忘れてました?」


 光帝ですら、無邪気な笑顔を向ける我が主人。


「聖獣様のことで何かあれば、帝令ではなく、青龍様を伝にお願いいたします」


 そう言って、王城から直に緑陽へとお帰りになったのだ。

 有栖には光帝すら強く出れないのは、世界を維持するための能力に長けている家系だからなんだと改めて思い知らされた。……有栖に捨てられたら、きっと。


 この世界は滅んでしまうところまで来たんだと。


「緋曜? どうしたの、深刻な顔をして。部屋気に入らなかった? 部屋数あるから今からでも変えるといいよ」


 穏やかに笑う、零様。

 そうじゃない、そうじゃないんだ。

 零様は自分の力の重要性を理解していない。


 妖精の残した力は、ゆっくりではあるが尽きていく。

 妖精の力の一つである、植物の育成はプライドが高い精霊は行ってはくれない。

 そんな中、植物育成特化の零様は悪用されかねない!


 それを知るのは光帝に近いものと、神殿騎士、そして神殿。だか、いつかは国民にもわかることだ。誘拐された末路は、悲惨な未来しかないのはわかりきったこと。


「零様、今から話すことは貴方がなぜ、ここまで守らなければならないと言う話です。護衛の身で、偉そうなことを言うかもしれませんがお許しください」


 この方には、弱いから守られているんじゃないと自覚してもらわなければならない。




 緋曜が、偉そうかもしれないと言っていたけど、優しく丁寧に教えてくれた。

 簡単にまとめるとこう。


・過去にいた妖精は、僕の血筋ではなくても良質な植物を育てるために契約すると言う形で助けてくれていた。

・しかし、天神の事件で妖精が被害に遭い、消える寸前で妖精が存在しなくても育つように力を残してくれた。

・その力もゆっくりだが、衰退している。そうなると、植物育成特化の僕は聖人扱いになり、誘拐され、悲惨な末路を歩む未来がある。

・精霊はプライドが高く、人には簡単に手を貸してくれないため、尚更僕の能力は貴重。


「ですから、貴方は弱くても強くても関係ないんです。貴方の命を利用されないためには必要なことなのです」


「それを話して良かったの?」


 隠されていたことなんじゃないの?


「強さよりも、重要な力があると言うことを理解していただきたかったからいいんです。あなたはこの世界で、必要とされる力を持っていることを自覚してください」


 需要がある力だってことはわかったけど、それなら……。


「妖精を召喚できる冒険者を保護した方が良いんじゃないの? 僕は植物を育てる力が強いだけで、根本的な解決にはならないでしょ。彼が教会に見つかる方が厄介なんじゃないの」


 妖精を召喚できると言うことは、土地自体の回復力を上げることができるかもしれないと言うことだ。

 僕は、手を出すと怖い貴族である有栖家の人間。守られるバックアップはある。

 本当に危ないのは力を持つ、平民。


「知っていらっしゃったのですね、彼のことを」


 やっぱり、光帝側も知っていたのか。


「彼は大丈夫ですよ。なんせ、季水様が権力振りかざしてお守りになっていますし、活動範囲も緑陽だけと聞いております。それに、季水様がパーティに無理矢理入れ込んでるみたいですから手も足も出ないでしょう。

珍しい力が有栖に集まっているのが少々問題ですが、有栖は敵にまわさなければ謀反を起こさないと確信している家系ですので、無問題とされています。

何よりも彼はお隠れになるのがお上手ようですよ。度々、神殿が近づくたび消息不明になられていますしね」


 季水くんにも、貴族らしい行動ができたのか。これは後で褒めてあげないと。


「季水くんは性格はアレだけど、強さは折り紙付きだから安心だね。

僕も妖精使いさんには会いたいんだけどね。優先順位が高いものをこなしてからじゃないと会えないかなぁ。まずは、青龍様の祠の整備をしないといけないし」


 僕には色々やることがあるのだ。

 これから、本格的に青龍様の祠の整備を始める予定だ。


「手作りされるのですか?」


「うん。でも、僕のすることは少ないよ。今下準備は季水くんとコハクたちがしてくれてるしね。そろそろ、終わってるんじゃないかな? 行ってみよ」


 部屋から出れば、護衛をしていたゆうが先導してくれる。後ろでは怖い顔をした緋曜が警戒をしながら、背後を守っている。

 いや、この屋敷でそうそう攫われるようなことにはならないから! なんせ、緑陽の人間以外が侵入すれば野良の子たちが対処してくれるし、屋敷に侵入できるのは僅かな人材だけだと思う。


 ましてや、青龍様もいらっしゃるし……。


 真面目な二人に僕は苦笑いをするのであった。



「おっ、零。案内終わったのか! こっちもちょうど終わったところだ!」


 朝から作業してたみたいだけど、日に日に土地整備が早くなってるなぁ。


「ありがと、次は慎重な作業になるから力任せにやらないでよ」


 まあ、慎重な作業なんだけど、結局は力任だけどね。専属の大工さんに指示を出しながら、印をつけていく。


「季水くん、無茶言うけど植物植えた所以外をへこませてほしいんだ」


 さすがの季水くんも苦笑する。無茶を言っているのはわかってるけど、青龍様の住処をいい加減に作るわけにはいかないのだ。


「私がやってもいいのだけれど、季水にはコントロールする力が足りないわ。頭の中でイメージするのよ、残したいところを正確に把握してそれ以外を攻撃するの」


 ……いつのまに。

 気配がなかった。


 その言葉に頷いた。位置を何度も測量して、時間をかけている姿をただただ見守る。僕は攻撃魔法使えないし、季水くんに頼るしかないからね。

 1時間が経過して、季水くんの額からは汗が流れていた。……こう言う細かい作業は苦手そうだもんなぁ。と考えていた時、住処になる位置に立ち、真剣な表情で深呼吸をした。


 一瞬だった。

 僕の望むとおりに、地面はくり抜かれた。


「じゃあ、僕が聖水で……「いいえ、私がやるわ。あなたがやると、神殿に狙われる。私はこれでも聖獣、力が回復の兆しがある今、神殿如きに負けたりしないわ」


 あ、その前に。


「大工さん! 植物を植えるところと棲家の周りを、煉瓦で囲ってください!」


 壊れないように工夫をしないと!



 事情は知らないけど、元土の位の大工さん達を中心に急ピッチで、補強されていく。うちの大工さん達は、スピーディで丁寧なお仕事をするのです。

 ゴーレムがせっせと動く様を、ほのぼのと見守ること数十分。


「坊っちゃま、出来上がりました」


 その言葉を合図に、青龍様は動き出す。

 そして、くり抜いた地面に向けて手を伸ばした、一瞬の出来事。水は満たされ、その水の上を歩き、祠の立つ予定地へと向かった。

 ものの数秒で、ちょうど真ん中の位置に立ち、地面へと触れる。すると、その瞬間、強い力の通り道ができていくのを感じた。


「これが水脈……」


「これで、水不足はおおむね解決できたと思うわ。私は人が好きではないけれど、この世界の水の管理者。その役目を放棄するつもりはないわ。それに、有栖に近しい人間は好ましいと思っているしね」


 この地は水不足に困ったことはなかったけれど、そんなに深刻な状態だったのかと、指先を口に当て考えこむ。するとどうやって移動したのか、季水くんが僕の額を撫でて、ニカっと笑っている。


 はっ?!


「飛んだわ」


 面白そうに、青龍様は近づいてきてそう言った。

 どんな身体能力しているんだ、この兄は!!


「水不足が深刻だったのは土影の位と土の位の土地くらいだ。あそこは鉱山地域でな、元々水源が少なかったのが問題になっていたらしい。それも今回解決した、零が険しい顔をする必要はないぞ」


 へぇー? ちゃんと勉強が身になってる。いい子、いい子と撫でてあげれば、季水くんは嬉しそうに笑っていた。



久しぶりの投稿で申し訳ございません。

これからも不定期の更新になると思います。

今度は未完ではなく、完成させるつもりはありますので、気長に待っていただけると幸いです。

よろしくお願い致します。

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