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街へ行こう!


「準備はできたかい?」


 その問いに、僕は苦笑いをする。たかがこの500gのアイテムボックスでさえ、持たせてもらえない過保護っぷり。

 僕には先天性に攻撃スキルも、防御スキルもない。運が悪いことに有栖家の血縁スキルの防御スキルすらもなかった。

 過保護に守られるのもしょうがないことなのかもしれないけど、ここまでとは……。


 しかもだ。


「零様、今回ゆうと護衛を担当させていただく琉陽と申します。よろしくお願い致します」


 屋敷にいる時でさえ、過剰防衛と言っても過言ではないくらい腕が立つゆうが側にいるのに、同じくらいの実力を持つ琉陽まで護衛につけるだなんて、ここらへんそこまで治安が悪いの?


「ここらへんは、奥様の拠点でもありますから有栖家に楯突く冒険者がおりませんし、スラムがあるわけでもありませんので、治安が悪いわけではありませんよ。過剰戦力ですので、御安心ください」


 ああ、僕が攻撃スキルがないばかりに、過保護な護衛に……。これは、早急に後天性スキルで攻撃の手段を考えないと。

 そう考えながら、馬車に揺られ、街へと向かうのだった。



「わぁ……!!」


 レンガ調の街並み、活気のある街の光景に思わず立ち止まる。

 平均よりも小さく、華奢に生まれた僕に対してお父様は記憶を取り戻す前から過保護で、有栖家が管理している街に来たのは初めてのことで感動する。


「零は街に来るのは初めてだったね。季水はステータスがわかる前から、攻撃に対する頭角を現していたから良く、月夜さん……零のお母様のことね、冒険していたから街にいる方が多かったから忘れてたよ。……さあ、いこうか」


 お父様に手を差し出され、思わずその手を握った。促されるまま、僕は歩き出した。

 その間、住人に話しかけられながらも、冒険者ギルドにたどり着いた。

 見てきた建物よりも、三階建てで立派な建物だった。


「お待ちしておりました。玲亜様、零様。奥の対応室にご案内致します」


「私はいきなり来るわけにいかないからね、前触れを出しておいたけど、零は最低2人の護衛をつけてれば自由にくると良いよ」


 ……最低2人の護衛が必要なんだね、僕。でも、自由に街に来て良いって許しが出たのは良かったけど。


「はい、わかりました」


 これからも調合するつもりだし、何なら薬草の栽培もしていくから、買い取ってもらうこともあるかもしれない。

 護衛つけるの嫌って言って、自由に街を行き来できる許しを撤回されても困るから素直に受け入れておこう。

 ギルドの人は何か言いたげな顔をしていたけど、すぐに営業スマイルに戻って、奥へ案内してくれた。


「玲亜様、零様。この度はお越しいただき、ありがとうございます。私、冒険者ギルドの鑑定の取り締まりを行わせていただいている者です。今回は回復ポーションの鑑定、買取と聞いております。商品を拝見させていただいてもよろしいでしょうか?」


 中で待っていた職員さんが席に案内してくれた後にそう言った。その言葉に、荷物を持ってくれているゆうをちらりと見ると、「お任せを」と言い、テーブルに買取してもらう物を出してくれた。


「こちらは下位回復ポーションでしょうか?」


「うん」


 そう答えると、職員さんは「鑑定」と呟いた。

 ファンタジー小説だと、定番のスキルだぁ。現世では初めて見たな……。前世では、同僚に鑑定の恩恵をもらっていた子がいたから、見たことはあったけど、こっちだと鑑定って言うだけでできるんだな……。


「……丁寧に作られていますね。そのおかげで、普通の下位回復ポーションより効果が少し上昇しております。お金がかけられない初心者冒険者には有難いアイテムです。是非とも、買い取らせていただきたい。零様が来ていらっしゃると言うことは、こちらはご子息が制作したアイテムでございますか?」


「ああ、そうだ」


「効果が上乗せされているアイテムであるため、買取と、常時依頼としてある下位回復ポーションの納品を達成扱いとしたいので、お手数ですがギルド登録をしてはいかがでしょうか?」


 そう提案してくれた。これからも買取してもらうし、僕は登録してもいいけど、お父様次第かな?


「この子には季水のように、討伐依頼はさせないが、それでも構わないなら良いぞ」


「これからも、どの地域でも構わないので冒険者ギルドに回復ポーションの納品をしてくださるなら大丈夫ですよ。それでは、登録してもよろしいですね?」


 お父様の許しが出たのなら、僕は大丈夫なので頷いておく。

 あ、そうだ。納品依頼を達成するなら、余った薬草も買い取りしてもらお! 育ちの手と成長のおかげでたくさん生えてきたし。


「ついでに薬草も買取してもらえる?」


「もちろん。商品を拝見させていただいても?」


 その言葉に、ゆうがさっとアイテムボックスに入っている薬草をテーブルに並べた。


「さすがは、植物の領分を担当する家系のお方です……。鑑定しなくても、品質が良い薬草であることがわかりますが、一応鑑定……。

さすがです……、この薬草も常時依頼の達成の代金を上乗せしたものをお渡しさせていただきます。もし、可能であれば回復ポーションの納品の際、支障がない量の薬草も納品いただくことは可能でしょうか?」


 そんな恐る恐る聞かなくても……。あ、そうか。僕一応貴族だった。


「うん、いいよ。使わなかった分だけでいいなら持ってくるね」


「ありがとうございます!!」


 喜んでもらえて何よりだ。

 別の職員さんによって、テーブルの空いているスペースに、前世で占いで使われているような丸い水晶玉が置かれた。


「こちらの水晶に手を置いていただいても?」


 僕は言われるがまま手を置くと、少しの間水晶が光った。


「はい、ありがとうございます。零様この地の領主様のご子息、身元ははっきりしております故、手続きはこれで終わりとなります。こちらは所属していることを証明するカードとなります、こちらで依頼達成の手続きを終了しておきましたのでお受け取りください」


 前世では、こう言う手続きは時間がかかったのに早く終わったな。ノンストレスだ。


「ありがとう」


「こちらは依頼達成の代金と買取代金、買取詳細書類でございます。ご確認ください」


 すると、書類をお父様が受け取り、代金の確認をしてくれた。


「うむ、確認した。……今回は保護者の私がいるため確認したが、この子には一般的な教養は施している。幼いから計算できないと言う考えで、買取価格を安くするなんて、信頼を失う行為は安易にしないように一応忠告しておく」


 その言葉に、僕は流石にドン引きした。過保護がすぎるよ、お父様……。流石にそんなことしないでしょ、行き過ぎる過保護はモンスターペアレントと変わらないよ?

 なんて考えていると、職員さんも流石に苦笑いしているのが見えた。……ですよね、お父様が申し訳ないです。


「冒険者ギルドで、緑水の位の方が育てられた薬草を取り扱える滅多に来ない機会を逃すような真似は致しませんよ」


 その言葉に、お父様は満足そうに頷いていた。

 この様子だと、お父様の過保護はどうしようもなさそうなので諦めよう。

 とりあえずは……。4歳児のお小遣いでは渡しすぎな金額の代金な気がするが、このお金はお小遣いにしていいらしいので、事前に渡されていたお財布にしまっていく。


 でもなぁ。種とかは屋敷にあるものを自由に使っていいって言われてるし、趣味の読書に使うにしてもうちには読み切れないくらいの本があるから本代にお金がかからない。

 お父様からもお小遣い渡されていたけど、外に出ないから使ってなかったから、貯まってたし、これからも貯まる一方なのでは……? と財布に入れたお金を見ながら考えていた。



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