生命力について
喪中なのでご挨拶はできませんが、挨拶の代わりに1話投稿させていただきます。
相変わらずの不定期となりますが、この作品をよろしくお願いいたします。
50cmくらいの白蛇の姿になった青龍様は、僕が起きている間は首にゆるく巻き付いて離れることがない。
『有栖のことは気に入っているけれど、力を託したのは零と季水だからね。季水はあの調子だから攫われるわけがないし、零のそばにいることが安心なのよ。聖獣に気に入られた人間に手を出すことを、思い知らせてやるわ』
弱くて、すみません……。
『そこら辺の盗賊相手なら零は負けないわよ、汚い手も使われたらどうしようもないじゃない。まあ、そうそう汚い手も使えなさそうだけど』
ちらっとコハクを見る。
みなさん、コハクの信頼度が高すぎやしませんかね? まあ頼りになるんですが。
『この子の、卵の子についてはわからないけどあなたのことを守ると言う意志が、誰よりも強いわ。どうして、契約していないのかわからないくらいに。……まあ、恐らく、』
「ゔぅわんっ!」
びっ……くりした。
コハクが唸るように吠えるなんて、僕が危険な目に遭わない限りしないのに。よっぽど知られたくないことを言われそうになったんだね。
僕は宥めるようにコハクを撫でる。
「コハク、僕は何が知られたくないのかはわからない。隠し事をされても良いと思ってる。……青龍様も、そこまで嫌がることをバラしたりしないよ。落ち着いて」
警戒態勢のままのコハクを、宥めるように撫で続けていると申し訳そうな顔をして。
『知られたくなかった、いや知られると側にいれなくなるのね。ごめんなさいね。
まあ、王都にいる今は私がそばにいるわ。それからは、私の分身を作って常にそばに居させて、どうしようもない時に助けられるようにする。言い方は悪いかもしれないけど、悪事に使われるくらいの価値のある力を持っているの。戦力が多いことに越したことはないわ』
攫われるよりも、また翡翠に会うかもしれないことの方が怖い。水脈の力で、転移することができる青龍様のそばにいた方が安心だ。……それに関しては、怒っていたコハクも同意見みたい。
『なぁに? あなた、タチの悪い女に狙われているの? どれ、見せてみなさい』
綺麗な顔が近づいてくる。
女性的な顔で悲鳴をあげそうになるが、青龍様は額と額を合わせただけで、僕は肩の力を抜く。……男性とわかってきても、中性的な人が一定の距離以上に来ると怖いな。
『……タチが悪いわね、彼女も。あなたの体質も。玲亜にも言わないといけないわね。……安心して、必要以上のことは言わないから』
また、警戒体制になったコハクにそう言って、肩から降りてどこかに向かった。恐らく、お父様のところだろう。それにしても、僕のタチの悪い体質ってなんだろうか……?
そう考えた時、こめかみに鋭い痛みが走った。
これは、前世での良くないことを思い出そうとした時に起こるやつ……! 深くまで考えないほうがいい、そんな体からの警告だ。
「とりあえず、今の僕にできることは魔力量と生命力の総量を増やすことだ」
魔力量は常に育ての手を使っているから問題ない。
生命力の量を増やすことに集中しよう。恐らくだけど、生命力を増やすには全身に生命力を循環させて、生命管を強くすることが重要だ。生命管が強くなるのに伴って、生命力を貯める器が大きくなる、そう言う仕組みだと思う。
一度、生命力を循環させているから難しいことではないと思う。……さて、やるかとあぐらをかいて、座る。
そんな僕の肩をとんとん、と叩くハッサクがいた。
「どうしたの?」
『んきゅっ!』
え?
自分達も、僕より先にいくわけにはいかないって? だから、生命力を見つけ出して鍛練をしたい、それがハッサクの、と言うよりみんなの意志みたいだ。
そんな意志に、僕は感動する。
「上手く生命力を、自分で見つけ出さないといけないんだよ? わかってる?」
リトルベア・メイプルベア組が力強く頷いた。
……意志は固いみたいだね、上手くできるかは分からないけどとハッサクの触手を取る。そして、僕の生命力をハッサクの体も一部と考えて、生命力を流していく。
診断スキルがあれば、ハッサクの血管の位置がわかって生命管の流れも作りやすかったんだけど……、まずは核を見つけないとね。
右手から流していくかと思った時、ふと魔力も同時に流せば魔力がどのように流れているかがわかるんじゃね? と。
「まず魔力を流すけど良い?」
魔力の流れに合わせて、生命管を作る。そうすれば自ずと核が見つかるのでは? と思ったのだ。触手でハテナマークを作りながらも、最後には丸を作ってくれた。好きにさせてくれるみたいだ。
何周も魔力を流し、正確に体感で魔力の流れを掴む。それから、魔力を流すのをやめて生命力に入れ替える。
「ハッサクは僕に魔力を流して」
魔力が動きを感じながら、それを沿うように生命力を流していく。初めはわかっていないのか体を傾けていたのだが、徐々にわかってきたのか、魔力が流れてくるのが止まった。生命力を感じとるのに集中しているんだろうな、まあもう流れはわかったので繰り返し生命力を流していく。
恐らく、生命管ができるのは本人が核を認識できるようになったらだ。それまでは根気良く、生命力を流していかないといけないからとても疲れるし、力を増やす鍛練になる。
これは、1日一人くらいのペースでしか今はできないな。それ以上は気絶する。
おっと。
生命力の道筋が確定した? ハッサクが自分の核の位置を把握したみたいだ。生命力を流すのをやめよう。
『んきゅ!』
胸を張る仕草をする。うん、見つけたみたい。
「1日一人しかできないや。順番決めといて」
ハッサクがんきゅ、んきゅ言って仕切っている。
どうやら、じゃんけんで決めるらしい。
……ん? じゃんけんってどこで知ったんだろう? まあいいか。コハクは生命力には関心がないようで、傍観するようだった。
しかし、勝敗はどう判断するんだろう? リトル・メイプルベア組はチョキとかできないだろうに。
え? 審判をハッサクがやる? なるほど……。
と言うことで、ハッサクのジャッジ? で平等に順番が決まりましたとさ。
『何やってたのよ……って、いつのまにかスライムに生命力が生えてるじゃないの!! 目を離すとすぐやらかすんだから。……これ、あなたがやったのよね? 具合悪いところはなぁい?』
生命力って生えるものなんだ……。
思わず、笑ってしまう。
『笑いごとじゃないのよ。魔物の生命力開花は難しいのよ。なんせ、意思疎通が出来ないから……そうね。あなた、生き物の言葉がわかるんだったわ。生命力の扱いが未熟なのに、開花させるなんて、あなたの発想力には驚かされるわ。
笑えるくらいなんだから無茶しすぎていないようね。今度やらかすなら、私の前でしてちょうだい。その発想があなたたちの命に関わるか否か、判断してあげるから』
力のある聖獣様が言うのだからそうなんだろう、と素直に頷いておく。
「ですが、この子たちに1日一人のペースで生命力を開花させると約束してしまったんですよね。……僕をおいていくことが心配のようなんです」
そう言えば、何か言いたげであったが、ぐっと飲み込んだような顔をした。多分、おいていくことを心配してと言う部分で、こいつを一人にするとまたやらかすからと葛藤しているんだと思う。……すいません、思いつくとすぐ好奇心で試してみたくなるんです。
『わかったわ。でも、これだけは約束して。あなたの生命力の扱い方は未熟だから、誰かの生命力を開花させることは下手すれば命に関わることなの。必ず、私か玲亜がいる前でそれを行うこと。人に関してもそうよ、大切な人間1人くらいなら許せるけど、基本的には望ましくない。それを守れないのなら開花させることは許可できないわ』
僕としては、彼らとそばにいれるだけで構わない。誰かを開花させようとは思っていない、今のところは。だから、素直にその約束に頷いた。
『あなたの良いところは素直なところよね。人間なら、欲望のまま利益を求めることの方が、私が見てた時には多かったわ。……そのままのあなたでいてちょうだい」
それで、生命力についての話は終わった。




