結界 その2
なかなかストックが貯まらない状態なので、できた1話を投稿します。
もうしばらく不定期投稿になります。
申し訳ございません。
『あなた、強いわりに弟に弱いのね』
そう言って、季水くんを撫でている。
気まずそうにそっぽを向いて、口調はあらためていないが、聖獣である青龍様に抵抗するつもりはないようだ。
ふむ、意外と青龍様と季水くんの相性は良さそうだ。
『あなたの方が気に入っているわよ?』
心を読まないでください。
いつのまにか近づいてきたのか、手を取られている。
『さあ、始めましょう?』
その声を合図に僕は目を閉じる。
……想像するんだ、僕の全身に行き渡る血管を。それに寄り添うように新しく、生命管を作り出す。頭の先から末端まで行き渡るように。
何かが指先から流れ出す、その力を導くようにイメージ通りに生命管を作り出していくように。重要なのは生命力の核の把握だ。……まあ、多分核は心臓あたりだろうけど。
そう予想をつけた瞬間、青龍様の力と逆流するように力が流れ出す。それに驚いたように、青龍様の手が小刻みに一回動いた。それから、何事もなかったかのように流す作業を続けた。
十数分後、青龍様の生命力と僕の生命力が交わった。それに合わせて青龍様が、僕の力が流れる方向に合わせていき、もう一度全身に巡らせ始める。合わせて、細かな生命管の調整を行なっていき……、もう一巡した時には生命力を全身から感じるようになっていた。
『血管と同じような配置にするとは、あなたの知識量と発想力の引き出しには驚かされたわ。これなら、視力・聴力強化もすぐにできてしまいそうね。私は教えられはしないけれど理屈は理解しているから、確実にね』
と言うことは、だ。
単純に考えて、視力を強化するには生命力を目に集中すれば良い。聴力は、耳。基本にはないけど、単純に考えれば嗅覚は鼻、味覚は舌に集中させれば良いと言うことだ。
やってみよう!
まずは、被害の少なそうな……うん。どれも被害は少なくなさそうだ、わかりやすい視覚を強化してみようか。
目に生命力を集めて……と。
その瞬間、僕は眩暈がして地面に倒れ込んだ。
まるで、視力がいいのに度が強い眼鏡をかけたような感覚だった。
『早く、生命力を分散させなさい! ……発想力が豊かなのと、思いつくと行動するのは会ったばかりだけど良くないと思うわよ!』
うぅ、すみませーん……。
失敗しちゃったなぁ、なんでだろう? 僕には強化スキルがないから加減がわから……ん? これならいけるかも!
スキルと併用して使おう! 僕には探索があるじゃないか。その仕組みを使って、強化をしよう。探索と併用なら、聴力・視力ともにいけるはず。
スキルを使う時、魔力ではなく生命力を使う感じでと。
「探索!!」
魔力が出ていきそうになるのを抑えて、生命力を目に集中させる。さっきは見ることを意識せず、視力の強化だけを意識していたから、度の強い近視の眼鏡の状態だったんだと思う。だから、広く土地を見ると言う意味で探索を使ってみた。
僕には強化する感覚がないから。
『ちょっ、あなたさっき失敗したばかりでしょう?! 思いつくと行動しちゃうのやめなさい! 懲りないわね』
馬じゃないから、180度の視界分しか見えないけどなんとか成功した。……でも、見えすぎて頭が痛くなってきた。
……解除しよう。
「視力を強化するのは、目に負担がかかりますね」
もうやりたくないんだが。
「それは、師事する私が適当な生命力量を体感で教えるからだ。あまりに、生命力を目に集中させすぎたから、目に負担がかかったんだろう。発想力があることは大いに結構、だが好奇心のまま動くのは良くない。わかったな?」
「はーい」
釘を刺されてしまった。
……適量を覚えれば頭痛を起こさずに発動させることができると言うことか、これは武器になるかもしれないな。
生命力で、探索スキルが使えた、と言うことは。
「視力強化、聴力強化だけに使えると思い込んでいただけでスキルを使うことができるのでは?」
僕がボソリとそう呟くと、お父様が思案したような顔をして。
「まずは私が試す、零はそれまで大人しくしていなさい」
釘を刺されてしまった。
2回も失敗したし、さすがにもう同じようなことはしたくないので素直に頷く。
今気づいたみたいな顔をしていたけど、やはり思い込みの力は強いと思った。この世界の人は昔からスキルがあった、その常識に囚われて工夫しようとしない傾向があると思う。
僕が言ったことは少し考えれば誰でも発想できるようなことだしね。
さて、札結界を張ることにしよう。
四天結界がいいかな? 札結界を実用するために張るのは初めてだから、緊張する。大体、正方形になるように木に札を張っていく。結界自体にに張るのは、別の存在があるのを気づかせないためにやめた。
本当は生命力で、札結界を張って見たかったけど、好奇心で生命力の存在が知られては行けないので我慢する。
「四天結界」
魔力を通せば、薄い膜のようなものを感じた。どうやら上手くいったようだった。常に一定の魔力が抜けていくような感じがするが、日頃から育ての手を使い続けている僕にとっては体調に異常をきたす量ではない。
魔力量を増やすのにいい鍛錬だと思う。まあ、攻撃スキルが使えないから、攻撃手段にはならないけど。多いことに越したことはないからね。
「よし! 植物を植えていこうか」
常に魔力が抜かれているが、それはいつも通りのこと。一気に魔力が抜けたわけではないので、さっさと整備してしまおう。
白虎様の土地にも結界を張らないといけないしね。
それから、1日かけて土地を整備し、青龍様の案内のもと白虎様の土地に結界を張ったのだった。
次の日。
守護騎士が派遣されるまで王都にいるように言われたのでのんびりしていたところ、お父様に呼び出された。
「……結界のことでしょうか?」
「ああ。お前は有栖家の後継者ではないし、ましては季水のように攻撃に特化しているわけでもない。札結界は使えるみたいだが、所詮は後天性スキル。先天性・血縁性スキルをお前と同じくらい鍛えてるやつには負けてしまう。結界スキルは常に使えるようにして欲しい。だから、お前が言う隠れ蓑とやらを利用することにした」
お父様は札を取り出した。
「札に、生命力を流すということですか?」
探索スキルを生命力で発動させることはできたので、できないことは無いと思う。でも、生命力の存在がバレてしまわないか心配なのだが。
「そうだ。朱基さんに手伝ってもらって、実験したが、問題なく成功した。結界の役目のことを考えると生命力と魔力が常に奪われるのは、体に負担がかかるからな。
生命力の調整の感覚を掴めば、生命力でスキルを発動させたお前なら、使いこなすことができるだろう」
確かに、勢いで発動させたけども。
「ですが、本来の結界方法が廃れてしまうのでは?」
「そうなったら、そうなる運命だったのだ。気にする必要はない。それに、伝承性スキルは現在は本来存在しないものだ。遅かれ早かれ廃れる。まあ、使わせるのは札結界なだけで、本来の結界も教えるつもりだから安心してくれ」
それに、私はお前が思っている以上に長生きするからな、新たに後継者もできるかもしれんし、とそう付け加えた。
「時間制限もある。生命力を伸ばすところから始めようか」
そうだった。
今はお父様が肩代わりしているだけで、本来は僕の仕事。常に、生命力を使っていても具合悪くならないようにならなくてはならない。
……朱基さんとの鍛錬をプラスしてだから、頑張らないと。思わず遠い目をした。




