結界
お久しぶりです。
無事、モデルナ摂取終了しました。発熱はしましたが、37度台を2日間出たくらいで済みました。
10月下旬を目処に再開するつもりでしたが、思ったより課題が大変で、再開するのに時間がかかりそうです。
今制作していた話が難産でして、書きだめができませんでした。リメイク前、伝承性スキルに全く触れていなかったので、設定を深く作るのに時間がかかりまして。
話の流れは記録してありますので、今回はリメイク前みたいに書きたかった内容がわからなくなることはないのでご安心を!
一つ言えることはリメイク前の、主人公へ対する姫呼びはなくなります。これを不快に感じて読めなかった方にも、楽しんで読んでいただけたらと思います。
書きだめをしつつ、余裕があれば不定期に更新していきます!
よろしくお願いします。
1人で植えたので、へとへとだよ。
コハクに抱きついて、寄りかかる。
「白虎様、青龍様の土地を結界で守らせて頂きたい」
お父様は跪いて、お願いしていた。
……そうした方が良いとは思うけど、伝承性スキルが知られてしまう危険性がある。危ない賭けだと、僕でもわかる。
『……青龍の土地ならともかく、我の土地には守護騎士が入ってくる。伝承性スキルの存在が広まるのは望ましくない。結界を張るとしたら、青龍の土地だけだな』
……やっぱり。
白虎様以外の聖獣様の土地に結界が張れると言うことは、白虎様の土地は隙になってしまう。どうにか張れないものか。
……稀な力を使うときには逃げ道を作ってから使う、そう白虎様が言っていた。結界にはその、逃げ道が存在する。
「白虎様、白虎様の土地も結界を張りましょう!」
この優しい方を失うわけにはいかない。
お父様に通訳する前に、そう言った。
『伝承性スキルを知られるわけにはいかない、我の土地に結界を張るのは諦めてほしい』
「白虎様が言ったのではないですか! 稀な力を使うときには逃げ道を作りなさいと! 結界には逃げ道があります」
朱基さんが、驚いたように僕を見た。そう、それは僕も使える。
「結界には隠れ蓑があります。後天性スキルの札結界があるじゃないですか! お父様が結界を張り、僕が札結界で結界の存在を隠します。それならば、結界の存在をカバーできます」
参った、そんな表情をした。
『条件がある。学園に入る歳までに零が結界スキルを覚え、結界を張る役目を父親から代わること。土地を維持する者として、他の貴族に違和感なく我の守護騎士を派遣することが出来るからな。それが無理なら、結界を張ることを許可できない』
「わかりました。学園に入る歳までに結界スキルを覚え、お父様から引き継ぎます。それなら、結界を張ることを許して頂けますね?」
深いため息をした後、頷いた。
『……有栖にしては大人しいと思っておったが、考えを改めよう。この有無言わせない強引さは、有栖家の血筋だな』
白虎の姿ではあまり表情がわからないけど、なんとなく苦笑いをしているような気がした。
お父様が結界を張った後、僕が四天結界を張り、青龍様の土地の開拓は終わった。
『私の祠はアイテムボックスに入れてちょうだい』
自分の祠を雑に扱う青龍様には驚かされたけどね。
その後、白虎様の土地に連れて行ってもらい、同じように結界を張り、借りている家に戻ったわけだけど。
『もう王都にいる必要ないのなら、緑陽に転移しても構わないわよ』
王都が居心地悪いのか、緑陽に行きたがる青龍様を白虎様が宥める。
『それは困るのだ。零には、我の守護騎士を派遣しなくてはならん。少なくても派遣する守護騎士を決めるまでは待ってておくれ』
『そうだったわね、性格重視でお願いね。ゆうと琉陽だったかしら? あの子達かなり実力者だから、実力はそこそこでも構わないわ。零を裏切らないような子にして頂戴』
人嫌いの割には面倒見が良いんだよなぁ、青龍様。まあ、多分身内扱いに認定した人間限定なんだろうけど。
『了解した、光帝と相談して性格の良いやつを選んで来よう』
そう言って、転移してしまった。
「青龍様の土地はやっぱり湖があったほうがよろしいでしょうか?」
水を操ると聞いて、試したいことがあるのだ。嬉々としてそう聞く。
『湖があるなら、あったほうが良いわね』
よし、きた。
「季水くん!!」
あのね、と手招きして要望を伝える。
少し大変な要望だとは自覚しているんだけど、弟に激甘な兄はにこやかな笑顔を浮かべて、相槌を打つだけ。
「兄がなんとかしよう、任せろ!!」
文句も言わず、頼まれてくれる兄が頼もしいこと。僕は思わず満面の笑顔で、「ありがとう!」と抱きついた。
季水くんは嬉しそうに抱きしめ返してくれた。
『全ての兄弟が貴方達のような平穏な関係であれば、私も人間を好きになれるのにね。人間はめんどくさいわ、本当なら有栖と契約しても良いくらい貴方達を気に入ったのよ。
でも、白虎が光帝と契約しているでしょう? それでパワーバランスを保っているのなら、私と契約することで崩れてしまう。それを気にしないといけないなんて、面倒な生き物だわ。……それより、今から結界を張るみたいよ。見てなさい』
ごもっともです。
言われるがまま、お父様の方を見た。
ただただ、結界と呟くお父様の姿であることしかわからなくて、僕は首を傾げる。
「見てなさいとは?」
そう聞けば、青龍様は我に返ったような顔をする。
『そうよね、そういえばあなた人間だったわ。生命力の流れを見れないのが当たり前だった。あまりに言葉が通じるから同種と同じ扱いをしてしまったわ、ごめんなさい』
ん?
僕は人間の中の珍種な何かなのか? すでに、人間扱いを忘れられているんだが。
『伝承性スキルで使う力は人間で言うと気、私たちからすると生命力よ。人間が使うと短命になると思うでしょう、その逆。不老不死みたいになるのよ、あそこで聖水作りに格闘している男のようにね。まああの男は伝承性スキルの第二段回までしか使えないようだけど、魔力と生命力を鍛えたから不老不死に近い状態になっているようね』
「つまり僕も朱基さんと同じようになると? それなら、季水くんも第二段階まで鍛えといても良いってことですよね?」
できることなら、季水くんにも長生きしていただきたいのが弟心。
『あなたの場合そうね。狙われた時に助けてもらえる存在がいた方が良いわ。私から、あなたの父には伝えてあげる。あなたも弟が心配で、来世を純粋に楽しめないでしょう? ならば、いっそ寿命を伸ばしてそばにいた方が良いんじゃないの?』
「是非とも、お願いしたい!! 子どもが後継いだあとは余生を冒険者として過ごせば良いことだしな! 零が一人になるのは心配だ!」
嬉しいよ? 嬉しいんだけど、まるで僕がやらかす前提で話が進んでいるのが釈然としないんだが。
『弟思いの良い兄ね。本当なら父親の彼が説明すべきなんだろうけど、特別に私が説明しちゃうわね。伝承性スキルを身につけるにあたって、三段階の鍛錬をこなしていく必要があるの』
青龍様、詳しいな。なんでだろう?
まあ、プライバシーに踏み込みすぎるのも良くないか。
『第一段回は、生命力が全身に行き渡るように、生命管を生み出す。次に心臓にある力を感じ取り、それを全身に行き渡せるように力を流せるようにならないといけないのよ。
伝承性スキルを使う前には、基礎を最低一つ使えるようになることが第二段階。第三段回で、やっと結界の訓練に入れるの。しかし、結界のイメージはそれぞれ。個人的な鍛錬となるわ。
零、結界を生きている限りずっと張り続けるつもりなら、第一・二段回目の鍛錬を血を吐くくらいやる必要があるの。兄の方はそもそも結界に向いていないわ、あなた見た感じ攻撃タイプでしょう? 強化に力を入れた方が良いわね』
生き抜くためには、しょうがないね。
それにしても、攻撃特化だと言うことをほぼ初対面の青龍様に見破られるだなんて。季水くんのわかりやすさは、当主になる上で直していかないといけないよね。
『あなたたち兄弟は気に入っているの。第二段回は父に聞いた方が良いわ。でも、第一は別。私が見てあげた方が生命力の量と質が良くなる、手を出して』
僕は素直に手を出そうとすると、季水くんが割り込んできた。
「何が起こるかわからないのに、例に先にやらせるわけにはいかない。俺が先にやる」
か、過保護……。
でも、今回ばかりはそうもいかない。
「大丈夫だよ、季水くん。僕にしかできないけど、考えがあるんだ。先にやらせて」
いつもなら引き下がる。兄にどれだけ心配させているか、理解しているから。でも、今回は試したいことがあるんだ。
ただ、見つめる。見つめ続けると、季水くんは力強く目を瞑り、顔を逸らした。……勝った。
「青龍様、僕からお願いします」
そう言うと、
『末恐ろしい子ね』
とそう言われてしまったのだった。




