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暇つぶし その2


 まだまだ暇なので、やっていきましょう。


 使うのは、改築してもらっている専属の大工さんに作ってもらった板状の金属を円形に切ってもらったものと、頑丈な布。円形の金属を布で良さげに包んでいきます。

 なぜか、書類を作っている朱基さんにガン見されているけど、気にしないようにしよう。


 またまた大工さんに、暗幕と彫ってもらった板を用意する。文字がある方を墨汁に浸し、札に合わせ、布で包んだ円形のものでこする。


 そう、僕が今回作ったのは、前世で言うばれんと呼ばれるものだ。判子で、術が発動したのだからこの方法でもいけると思って、試して見たかったんだよね。


 板を外すと、綺麗に暗幕と写せていた。


「よしよし」


 これを集中してたくさんの量を作っていこう。


「れいちゃん……、これも発見者登録をするぞ」


 なぜか、目が据わっている朱基さん。

 作り方などを徹底的に説明させられて、暗幕の札を量産する暇なく、これだけで今日が終わってしまったのだった。



 朝4時。

 我ながら早起きです。

 季水くんはすでに起きて、外でリトルベアたちと鍛練をしているようだ。ちなみに、僕はいつ誘拐されるかわからないから、鍛練はダメだと言われているので暇している。


 今日は朝食の時間まで札作りをして、朝食を食べ終わったところだ。


 何歳から行くかはわからないけど、僕は騎士族の領地にある墓守の森で、鍛練をすることが決まっている。それは、僕がその森にいるゾンビの防御力を低下させる清潔変化のスキルを手に入れたからだ。


 今日は騎士族について調べていくことにしよう。


 騎士族が領主を務める街は、水源と鉱山に長けた街である。騎士族の歴史は他の貴族よりも浅い、今から前世の言葉で言えば7世紀くらい前のことだと言われているらしい。

 騎士族の初代当主は庶民出身の人らしい。

 今以上に貴族と庶民の溝が深かった時代のことだ。今は王様によってどこを誰が治めるか決まっているのだが、その当時はまだされていなかったらしく、土地を巡る争いが盛んに行われていた時代。


 その頃に、彗星の如く現れたのが騎士族の初代当主でだった。

 騎士族の歴史本によると、誰かのこの武勇伝を知って剣を扱うようになったわけではなく、純粋に兄弟を守り抜きたくて強くなったと綴られていた。

 騎士族の初代当主は幼い頃に母親と父親を亡くして、知り合いだった冒険者ギルドのギルドマスターが親代わりで冒険者として働き、自分を合わせた6人を養っていたそうだ。


 その人は大金を手に入れられるくらいの実力はあったのに、日帰りで済ませられるクエストに行き、幼い兄弟達の面倒を見る毎日を過ごしていたと書かれている。

 そんな穏やかな日々は長くは続かなかった。初代当主と末の弟以外、正体不明の人物に殺害されたのだ。

 何よりも大切にしていた兄弟を殺害された初代当主は復讐を決意する。今まで手加減していた実力を発揮し、犯人を突き止め、復讐を達成させた。


 結果、復讐ではあったが、根が優しいことは変わらなかったため、国民を一切巻き込むことはなかった。本人にとっては復讐であったが、周りから見ればヒーローでしかない。

 そして、王にもヒーローだと認めさせ、騎士族の初代当主と言う座を手に入れたのだ。


 ……きっと、わかっていたはずなんだ。復讐をしても自分の兄弟は戻ってこないと、貴族になろうと自分の兄弟は生き返ることはないとわかっていたはずなんだ。

 それでもやめられなくて、自分の復讐だったはずなのに、周りからはヒーロー扱いされる罪悪感はなかったとは言えないだろう。

 だから、初代当主は重圧に耐えられず、前世で言う還暦で自殺した。そして、後を追うように彼の末の弟が亡くなったそうだ。

 末の弟はもともと体が強い方ではなく、兄が自殺したことにより、悪い方へ引きづられてしまったことが死の原因ではないかと言われている。


 ……まあ、口頭での歴史の伝達だから、本当に正しい歴史であるか否かは、本人に聞くしかないだろうけどね。それはもう、亡くなった今出来ないけれど。


 初代当主の後を引き継いだのは、彼の長男で政治に向いていたから、一代で今の状態に限りなく引き上げたのが2代目の彼だと言えると政治関係の書物に綴られている。

 ……でも2代目もまた自殺しているんだよなぁ。そこが不自然なんだ、そしてしっかりと後継者を示し、自殺した。


 別に後継者を示したことに違和感を感じているわけではない、ただ何かが引っかかるのだ。


「……でも、他人が口出しする訳にはいかないしなぁ。この違和感はあまりに抽象的で、大人が納得する根拠がない」


 騎士族の当主は現在45代目だ。

 そのうち、自殺しているのは初代、初代の弟、2代目、5代目、8代目、12代目、20代目、25代目、31代目、39代目だ。

 あまりにも不自然に多すぎるのだ。何よりも、自殺している当主は、なにかしら大きな物事を動かした人物だ。


 初代の弟は、自分の体調と相談しながら学校に通っていたため、人より卒業するのに時間はかかったが、秀才だったため、2代目の家庭教師をしながら、自分の兄である初代当主のデスクワークのサポートしていた。

 初代当主の時代では、安定していたのは初代の弟のおかげとも言える。そして、原石であった2代目の才能を開花されたのは彼だとも言える。


 騎士族の歴史を見る限り、自殺した当主達は悩みを抱えていたとかそんな事実もなく、突然自殺している。……初代の弟は理由も無理やり作ろうと思えば作れるが、なんかもやもやする。

 お世話になるから、騎士族のことを知って置こうと思ったら、思った以上にもやもやさせる歴史だったよ。


 ちなみに、土地争いが落ち着いたのが今より5世紀前のこと。有栖家を含む4大貴族より上は、土地争いがある時代から争うことなく領地を持っていたらしい。今の貴族構成で落ち着いたのが5世紀前ということになる。

 で、天神家が悪魔と契約したものが現れ、争いをしたのが3世紀前。その争いは10年くらい続き、今の緑陽の場所を有栖家の領地としたのがその頃で、そこから土地の回復に努めてきたんだ。


 だから、今の緑陽は争いがあったことを感じさせないくらい自然豊かになっている。


「調べたところで、ゾンビ対策は思いつかないと。あと、10日もうちに引きこもり状態かぁ、暇つぶしもつきてきたしなぁ」


 そうつぶやいていたのを聞かれていたなんて、思いもしなかった。



「庭付きの一軒家を王都に在住している間、借りることにした。朱基さんの力も借りて結界も張り、安全性も高めた。庭だけなら、外に出てもいいぞ」


 次の日の朝、お父様がそう言ってきた。

 え、嘘。やった、鍛練が再開できるってこと?


 宿の人に挨拶をして、借りたと言う家に移動することになった。僕は歩くのを許されず、コハクの背中に乗せてもらっての移動だった。


 借りた家に着いたと同時に、朱基さんに鍛練をお願いすれば苦笑いをされつつも、了承してくれた。

 ウォーミングアップに家の周りを回るようにランニングをしているとき、


「いずれは騎士族の土地に行くことになるじゃないですか。僕が清潔変化のスキルを持っているから、墓守の森でゾンビ相手に鍛錬すると言われて、色々考えたんですけどどう戦うか思いつかなくて」


 血迷って騎士族について調べたりもしていたと伝えれば、微笑ましそうに見つめられた。


「れいちゃんは真面目じゃのぅ。有効なのは、清潔変化だけではないんじゃよ。前に頼まれた火傷の効果を与えたり、凍傷の効果を与えるナイフは有効じゃから墓守の森で実戦を積むことにしたんじゃ。じゃから、そこまで考え詰めなくても大丈夫じゃよ」


 その言葉に一安心だ。

 ん? 火傷と凍傷の効果があるナイフが効果的だと言うことは、だ。


「なんらかの方法で、火や氷の効果をつけた弾を作ることができたら遠距離からでもゾンビを倒すことが可能と言うことですか?」


 そう聞いた瞬間、朱基さんが立ち止まる。そして、小さな声で何かを言い始めて、何か考えているようだった。

 これはしばらくだめそうだ。

 家で、やっていた鍛練メニューをこなそうと決めた僕は考え込む朱基さんに声をかけず、そっとしておくことにした。


 鍛練メニューを終えた頃には、朱基さんは消えていて、実現する方法を思いついたんだろうなと苦笑いするしかなかった。




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