実験
思いついたことがあるので、部屋で実験してみようと思う。
安静にしろとのことなので、良くしてくれる使用人のゆうに、部屋に植木鉢と土、種を用意してもらった。
本当は、外で土を耕したかったのだけど、熱を出したばかりなので却下された。
お父様が教えてくれた精霊は魔力ではなく、生命力でしか回復をしないと言うので、魔力がなくても生命力で成長する植物が周りにあったらスイの回復力にも少し影響するのではないかと、試して見たかったのだ。
「さすがです、零様!」
なぜか、否定しないゆうは全力で協力してくれたおかげで、僕は部屋で安静した状態で必要なものが揃ってしまったと言うわけだ。
用意した、植物の種は薬草と清潔草だ。これを選んだ理由は安直で、薬草は回復するために必要な材料だし、清潔草は一番聖石に近そうな感じがしたからだ。
薬草図鑑と睨めっこして、何を植えるか吟味した結果が、安直な考えだったんだけどね。
ゆうに8割重さを負担してもらって、植木鉢に土を入れて種をまいた。すると、肥料を巻く前に可愛らしい双葉の芽が生えてきた。
うん、早すぎるね。
一応、肥料をまいて、ほどよく日光に当たるところに移動させる。もちろん、水もまいたよ。
「実験効果が出ると良いなぁ」
「そうですね」
それからは、大人しく読書をしていた。けど、夢中になりすぎていたらしく、心配した使用人に本日の読書は終了とさせられてしまったのだった。
本日の収穫。お年齢ごとに設けられた冊数条件を満たしたことで、後天性スキル速読を手に入れたこと!
ベッドでお粥を食べた後、身支度を整えたら大人しく就寝します。
二日目。
朝起きたら、植木鉢に植えた薬草が溢れんばかりに生えていました。さすが、血縁スキル。
午前中は、ひたすら読書をしていたんだけど、さすがに体に悪いと使用人から止められて読書タイムは終了。……残念。
思い出す前の記憶によると、僕は薬作りとか裁縫が好きだったらしい。僕自身も裁縫とか細かい作業が好きなので、記憶を思い出す前から僕のままだったことに安心した。
ゆうに、側にいてもらうことを条件に午後からは薬作りに励むことにした。
用意してもらったもの。
・コンロ
・鍋(中)ーーー1個
・薬瓶ーーーーー60本
・保存瓶(中)ー20個
・木ヘラーーーー1本
・味見スプーンー3本
・タオルーーーー3枚
・水瓶すいびんーーーーー三本
・すり鉢ーーーー3個
・すりきり棒ーー3本
・薬草ナイフーー3本
・包丁ーーーーー2丁
・まな板ーーーー2枚
・ひやひや草入りの水ー1L
・カシュの実ーー4個
・マッチーーーー1箱
・筆記用具ーーー1セット
・ノートーーーー2冊
・薬の作り方の本ーーー1冊
・薬草図鑑ーーー1冊
ひやひや草は便利だよ。水瓶に入った水に1枚入れるだけで冷水になる草なんだ。本によると、ポーションを作る時にはこの一手間が大事なんだって。
100mlにつき、1枚必要だからこの水瓶には惜しみなく10枚入っています。そんなに入ってても草臭くならないから躊躇わず使うよ!
ちなみに水瓶は1Lまでが上限なんだ〜。
カシュの実は大事。火をつけるために必要なアルコール成分を持ってるんだ。アルコールにするために必要なのが冷水なんだ。
カシュの実は冷水に入れると溶ける性質を持っていてね、しばらく混ぜるとアルコールに変化するんだ。
前世の記憶を持ってると知識が違いすぎて驚いちゃうけど、異世界だからしょうがない。
薬調合にもルールがあって、新鮮な水で薬を作らないと逆効果な薬が出来てしまうんだ。しかも、感染症にかかる危険性も上がる。
薬調合にも色々ルールがあって……、
・薬草はすり鉢でする。
・水は新鮮なものを使いましょう。
・スライムは必ず新鮮で、清潔草で清めたものを使う。
・100mlに対して薬草は2枚。
状態異常薬草(例ピリピリ草、ミニドク草など)は1枚にしよう。
・果物風味にしたい時は100mlに対して、10グラムの果物を入れよう。
・状態異常効果薬(例麻痺薬)は100mlに2枚使おう。
・ピキピキの実など液体に溶かして使うものは、500mlに1つ。
というルールに気をつけて薬を調合しなければならない。強すぎる薬は人にとって毒、薬は直す手段でもあり、量を間違えれば人間の体を蝕む毒でもある。
だからこそ、治すための薬が毒にならないようにルールを守らなきゃいけない。
一般的には、薬師台があるみたいだけど、僕は調理器具の方が使いやすくて、それで調合してたみたい。
僕も馴染み深いから、調理器具を選んだけど。
できた薬草を摘んで、薬草2枚を大きめに刻んで、すり鉢でする。一応、一手間で水の中に清潔草を入れて、水をきれいにしておく。
きれいにした水を、40度になったらすった薬草を入れて煮沸させる。透明な緑になるまで煮込んだら、常温まで冷やして薬瓶に入れて完成。
そんな作業を繰り返していると、小さなお店が開そうなくらいの量ができてしまった。
「これどうする?」
「旦那様に相談してはいかがでしょうか?」
今日は一緒に食事する予定だし、その時にでも相談してみようかな?
「今日は部屋で回復ポーション作りをしていたようだね、ゆうから聞いたよ。それで? 相談したいことがあるみたいだけど、どうしたの?」
食堂に行き、先に席に座っていたお父様がそう聞いてきた。僕はまず席に座ってから、質問に答える。
「作りすぎてしまったのです、どう処理しようかとお父様に相談しようかと思って」
「……回復ポーションを鑑定していないから何とも言えないけど、ここら辺は魔物も少ないし、支配下においてるから襲ってこないから回復ポーションを私達が使う機会はないし……。貴族におろすにはレベルが足りてないだろうし、冒険者ギルドか雑貨屋に買取をお願いしようか」
なるほど、買取をしてもらう手があったか。明日、ゆうに頼んで売りに行ってもらおう。
「買取してもらいます。……ゆう、明日回復ポーションを売りに行ってくれる?」
「いや、その必要はないよ。2日安静にしていたみたいだし、明日冒険者ギルドに行こうか。依頼していた聖石の収集についての進行具合も知りたいしね」
やった! 熱で倒れたとは言え、知恵熱だったから元気だったし、2日間も部屋で過ごして飽きていたところだったんだよね!
「行きますっ!」
いやぁ、お出かけ楽しみだなぁ。