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プロローグ。


 今より昔、科学が発展していた時、人外はいないと信じられていた。

 その常識は、2222年のゾロ目年に覆る。

 理由はわからない、世界中に空間の歪みが生まれ、精霊・天使・妖精……とさまざまな人外が地球へと押し寄せた。

 自動翻訳により、世界の政府は共通の条約を作り、人外との共存を選んだ。共存を選んだことにより、彼らの協力を得て空間の歪みは塞がれた。


 塞がれた、はずだった。


 人々は共存を選んだことにより、スキルと言う恩恵を得た。それから、約100年。地球はスキル頼りの世界となった。

 もちろん、僕、有栖零もスキルの恩恵を得ている。


 両親を事故で失い、両親の親友に引き取られたものの、とある理由で一人暮らしをしている。

 僕の恩恵は、テイマー。

 傷ついた人外を保護する機関の、彼らのお世話がかりをしている。人間不信になった彼らは暴れることもある、危険な仕事なため義務教育(高卒)で卒業したが、結構な額を貰えている。

 そんな仕事を、高校時代のアルバイトを合わせると5年勤務している。


「きょーも、お疲れ様だぞ! こんっ!」


 この子は僕の唯一の従魔、スイ。恵みの雨の力を持つ、下位天使だ。……他にも特別な力があるみたいなんだけど、知ってしまうと僕が危ない目に遭うらしい。

 ……なんで、下位天使のままなんだろうね?


 スイとの出会いは保護機関。手に負えないくらい傷ついていた子で、初めて担当になった子でもある。

 農家に酷使されていたところを保護し、その時には痩せ細り、数日遅れていたら間違えなく天に還っていた。3年かけて癒していたら、自動的に従魔になっていた。……なぜ?


「ありがと。……嬉しいけど、あんまり外で姿を現したら危ないでしょ?」


 注意したのに、スイはすりすりと顔を寄せてきて喜んでいた。

 ……注意されてるの、わかってるのかな?


 

 そう言っている僕もまた、平和ボケしていることに気づいていなかった。……平和であることがどれだけ大変なのかを。

 そして、なくなる時は一瞬でなくなってしまうと言うことにも。


 長い平和が続き、2333年になった今年悲劇は起こる。


「ニュースです。今朝、人が生きた状態から何者かによって心臓が取られる残虐な事件が立て続けに起こりました。警察によると、心臓以外は無傷のままの状態であることが発表されました。いずれも抵抗したような点は見つからないことから、人外による犯行であることも視野に入れて捜査を行なっております」


 偶然、電気屋の前に通りかかった時、流れていた報道が耳に入る。


「ここ、近所じゃないか……! 怖いなぁ」


 SNSでも、この話題で炎上しているようだった。

 調べてみれば目撃証言も見つからないし、犯人に繋がる証拠もないみたいだ。

 そんな事件を僕は、不可解な事件だなと思った。人間への復讐にしては年代や地域もバラバラすぎる……。

 本当に、今ここにいる人外がやったことなのかな……?


 今思えば、危険性の認識が甘かったと思う。僕はいつもそう、ことの重大さに気づくのが遅いんだ。不可解な恐ろしい事件だと気づいていたのに、その危険性を甘くみていたのだ。

 ……自分はそんな目には合わないと変な自信を持っていた。……午前六時に鳴った呼び鈴に出てしまうくらいには。


 出て後悔した、今更後悔しても遅いのはわかってた。だって、目の前にいたのは人間じゃない『何か』だったから。

 本能的に理解した、僕は殺されると。殺されないと言う選択肢はないんだと。


「零くんっ!!」


 悲鳴のようなスイの声がした。

 その声に、スイを一人にするまいと必死で心臓に攻撃を喰らわないように、仰け反った。

 きっと運が良かったんだね、きっとそう。

 不幸中の幸いってやつだ。……胃があるであろう場所まで、攻撃を誘導することが出来たんだから。


 顔も真っ黒、全てが真っ黒な何かは躊躇いなく僕の身体から武器を引き抜いて、その場から去っていく。

 あまりに一瞬すぎて、突き刺されたことに細胞は気づいていなかったんだろう。体の一部が損失したことに気づいたようで痛くなってきた。


「零くんっ、零くん!!」


 痛みで、身体が動かない。……泣いているスイの涙を拭いてあげたいのに。

 ジンジン、ヒリヒリと血が外に出る感覚と傷の痛み、死に引っ張られる感覚に耐えながら僕はダイニングメッセージを残す。

 せめて、『何か』が気付けない文だとしたら、なんなんだろう? と、時間との戦いの中、必死に考えながら。


 そうだ、彼? 彼女は日本語を話さなかったな‥‥とふと閃いた。

 死に引き寄せられる感覚に、痛みで何も考えられない頭で激痛に耐えながら、賭けに出ることにした。

 自分の血液で、あと最後の一文字ってところまで書き進めた後、意識が途切れる。

 その間際、


「僕が助けるんだぞっ、こんっ!」


 そんな声が聞こえたような気がした。



 次に目が覚めたのは雲の上だった。

 ふわふわした感触なのかなって期待はしたけど、全然感触がなく、ただ感触がない存在しているだけのものって感じ。


(当たり前か、綿のようで綿じゃないもんなぁ)


 ふわふわしてた方が良かったなぁ……とそう考えながら、一応辺りを見渡して見れば、僕から少し離れたところに身を寄せ合う人がいた。

 何かから怯えるかのようにこちらを見て警戒していた。


(もしかして、僕と同じくあの真っ黒い何かの事件に被害に遭った人達だろうか)


 現実逃避をした後、僕はしっかりと現実を受け入れようと遠い目をやめ、正面に視線を向ければ、いつのまにか目の前に白狐がいた。

 キュルンとしたかわいい顔をした後、


「君は有栖零くんですね。この度は君に、そして地球に多大な迷惑をかけたことをお詫びさせてください」


(……お詫び?)


「ええ、そうです。今回のことは我々、世界を管理する天界の者の失態です。お詫びだけで許されるとは考えておりませんが、大変申し訳ございませんでした。そして君の勇気に、あの状況下での機転にお礼を言わせて頂いたい」


 小狐な見た目なのに、声が中身ダンディー系の執事系紳士とか拍子抜かれたのなんの。

 思わず、お礼を言われたことに対する反応が遅れてしまったよね。

 正直、あれは僕の失態でもある。あんな時間に無用心に開けたのも悪いんだから。

 

 SNSでは証拠もなかったのは、人間が即死する心臓を一撃で攻撃していたから。証拠を残すなんて心配はなくて、現場に戻ってこないって賭けに勝っただけ。


(日本語で書いても証拠抹消されないかなって考えが上手くいって良かったです。それでも、これから先他にも被害者が出ると思います、それでも少しでもお力になれたなら幸いです)


 声に出したつもりなのに、まるで携帯電話を通して話しているみたいな感じの声になってしまった。

 まさか、自分で携帯電話を通した声を聴く経験をするなんて思っていなかったなぁ。

 自分で声だしているつもりなのに、別の人が声を吹き替えしているようでもやもやした。


「地球の方々には申し訳ないことを致しました……。このような事態を防ぐため、空間を歪め、天使達を移住させたと言うのに……」


 ……目の前にいる彼は、一生懸命アフターケアをしてくれようとしてくれている。その前に、被害が出ないように事前に動いてくれていたようだ。それなのに、憎しみなんて感情抱けないよ。

 まあ、今の彼に言ったところで心の折り合いがつかないだろうから言わないけどさ。

 でも、一応恨んでないことだけは話しておこう。


(あなたのことは、恨んでませんよ。じゃあ、僕がこうしていられるのはあなたのおかげなんですね。)



「……ありがとうございます。1人でもそう言ってくださると気持ちが楽になります。

いいえ、有栖零くんの従魔である下位天使の力によるものです。あの子の本当の力は、転生です。精霊から天使に成り立てで、修行の身であったため、対象者は契約者だけ。あの子のおかげでアフターケアも思いつきました」


 悪用や利用されないように、僕にも転生能力を隠してくれていたのか。

 それにしても正直、前世の名前は思い出せるけど、自分の顔も、家族の顔も名前もあやふやだ。一部の出来事は思い出せなくはないけど、ある部分だけ全ての記憶がすっぽり抜けている部分があるのは、なぜ?

 ……忘れてしまって、ホッとしている自分がいるのも不思議だ。


「あの悪魔たちの目的は、天界への復讐です。今天界は危険な状態にあります。あなたには転生をしてもらおうと思います。

ここには第4の空間があり、君は第1の空間に存在している魂ですので、転生できるのは第1ゲート内にある世界だけどなります。

スイの事情からさらに転生先は絞り込まれ、転生できるのは月光島のみです」


(……スイになんかあったの?!)


 魂の状態であることを忘れて、僕は彼に飛びついた。そんな僕を微笑ましそうに見つめ、


「スイは、無事です。特異な力を持っているとはいえ、転生は負担がかかる能力です。今は卵に戻り、身体を休めています。

彼を早く回復させるには故郷である月光島に行くことが一番なのです」


(スイとともに転生させてくれるってことですか?)


「そうです。それ抜きでも月光島がオススメですね。地球から正反対の位置にありますし、しかも管理している神は防御の達人ですから、安心して暮らせるでしょうし。……それに月光島は位置的にも、守りの面でも完璧ですからね。

貴族制で王政ではありますが、漢字名ですし、何よりも科学が存在します。街並みは中世風ですが、技術的には地球にいちばん近い文化と言えます。

大きく違うのは国の政治システムと加護が存在することですね」


(月光島に転生します)


 迷わず答えると、白狐は嬉しそうに尻尾を振った。魔法? で手帳を出し、器用に前足でページをめくっていく。

 何、面倒ごと押し付けられちゃう系? やだよ、泥沼のお家騒動とか。

 それとも何、自分の意見を参考にしてくれたことが嬉しかったの? そうだったら健気だわ。


「君に合う転生先が見つかりました。ちょうど、同姓同名で、しかも性格も合いそうな転生先です。

影響力が高く、しかもこちら側としては嵌められて没落されては困るので次男候補が保留されていた転生先なんですよ。前回の候補者は性格に問題がありまして、却下されてしまったので乗っ取りではないので犠牲は出ません。

いかがでしょうか?」


 ふぅん、貴族ね。まあ、性格が合いそうなら貴族一家でも良いかな。


(じゃあ。そこで)


「早速転生の儀を開始します。それでは良い眠りを。

貴方の貴方の新たな人生の旅に、幸あらんことを」


 そう言われた瞬間、強烈な眠りに襲われた。

 僕はああ、スキルは選べないのかーと考えながら、せめてテイムだけはスキルに入れといてくれーと内心で懇願しておくことにした。

 それからは、眠気に逆らうことなく眠りについたのだった。




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