再会②
私用で忙しく更新ストップしておりました、すみません。
リリィ視点です。
「セシル、貴女でしょう?アルカディア侯爵令嬢に話をしたのは…」
アルカディアが庭園を去った後、静かにリリアンは背後に向けて言った。
「申し訳ありません、お嬢様。でも私は直接は伝えていませんよ。」
苦笑しながら出てきたのはリリアンの専属侍女であるセシルだ。
ポニーテールにした金髪と青い瞳、セレスティーヌ家特注のメイド服を身に纏った高身長の女性だ。
年は19歳でリリアンと家族以外では最も仲が良い姉のような存在である。
「侍女専用の施設で仲良くなった子が偶然にもアルカディア侯爵令嬢の専属侍女だったんですよ。ほら、リリィお嬢様は1年前アルカディア様とお会いしてから何かと気にかけていたでしょう?」
「も、もうっ!だからと言って簡単にこの場所を話しちゃ駄目じゃない!アルカディア様が良いお方だったから良かったものの……」
「それは申し訳ありません、軽率でしたが…アルカディア様なら良いと判断したんですよ。でもそのおかげで良かったじゃないですか、お友達になれましたし!」
セシルが少しからかうように笑いかけるとリリアンは赤くなりつつ咳払いをした。
「コホンッ、ま、まぁ…本来ならこの場所は話を聞いたからと言って簡単に来れるような場所じゃないわよね…」
この特別な薔薇の庭園まで来ることが出来るのはごく僅かな限られた者だけ。
かつての王妃が密かに作った庭園というのは事実であり、まだ王妃になる前の学生時代に、厳しい王妃教育の息抜きのために出来たと伝えられている。
王妃が作った庭園なので王族の管理下にあるのだが、しかしこの存在は王妃だけが知っており、代々次期王妃にのみ伝え受け継がれている場所なのだ。
だから王や王子は知らないし入ることも出来ないようになっている。
唯一リリアンが羽を伸ばし休むことが出来る憩いの場所なのだ。
「でもだからこそおかしいわね…この場所は私のような次期王妃の資格を持った魔力の持ち主か、よほど強くここに来たいと思わないと繋がる道は開かないのに…」
ここに繋がる道の出入り口には特殊な隠蔽魔法がかけられている。
リリアンのような次期王妃の資格がある女性以外では、よほどの魔力の持ち主か強い思いがあってこちらに来たいと願う必要がある。
「アルカディア侯爵令嬢……ルカの魔力はそれほど強くなかったはずだわ。どちらかと言えば剣の扱いの方がずば抜けていたわね。」
アルカディアの剣の腕前をリリアンは偶然見た剣実習で知っていた。
同じ女性とは思えないほど卓越した剣裁きで男性相手にも余裕で勝利していた。
噂には聞いていたがあれほど凄いとは思わずあまりの立ち回りの巧さに拍手してしまいそうになったほどだ。
ただ魔力が少ないので魔法実技では少し苦戦しているようだった。
その様子を思い出し、リリアンはやはり魔力があるから通れたわけではないと考えた。
「セシルはなんてルカの侍女に話をしたの?」
「確か、代々学生時代の王妃たちが使用していた特別な薔薇の庭園があって、それはそれは美しい薔薇が咲き誇っているらしい……という感じに。」
「………それ他の人たちは聞いてなかったでしょうね?」
「大丈夫ですよ、人気のないとこでこそっと話しましたし念のため防音魔法もかけましたから!」
えっへんと胸を張るセシル。
セシルもそこそこ魔力が強く扱いにくい魔法もそれなりに使える万能侍女だ。
しかし胸を張るところを間違えているような気もする。
「それにアルカディア様の侍女…エマって言うんですが、あの子は会ってすぐ信頼できると感じました。口が堅いタイプですし何より話の節々からアルカディア様に対する忠誠心が見え隠れしていたので。きっとアルカディア様が大好きなんでしょうね。」
クスッと笑うセシル。
「…そうね。ルカの侍女ならきっと信頼できそうね。」
セシルが楽しそうに話すその様子見て安堵するリリアン。
「ルカはこの薔薇の庭園をよほど見たかったのかしら?薔薇が好きとか?あっ、そういえば確かに薔薇のことをやたらと褒めていたし感激していたわね……ものすごい薔薇好きなのかしら…」
口に手を当て考え込むリリアンにセシルが何かに気づいたようにはっとする。
「お嬢様、先程の私がエマに話した情報でお気づきになりませんでした?」
「えっ?なに?」
セシルは妙ににやにやしながらリリアンを見つめた。
「この場所は学生時代の王妃たちが代々使用してきたって話をしたことですよ。学生時代の王妃ってことは次期王妃のこと。つまりリリィお嬢様も含まれているんですよ。」
「…?それは、そうね…?」
きょとんとするリリアンにセシルがため息をつきながら笑いかける。
「つまりですよ!アルカディア様はこちらにお嬢様がいると少なからず考えたのではないでしょうか?」
「えっ」
「エマがどう伝えたかわかりませんが普通こんな侍女同士の噂話信憑性にかけませんか?でもアルカディア様はその話を聞いてこちらにお嬢様がいるかもしれないから、あるかもわからない噂話なのに探しに来たとか…」
「ま、待ってセシル!それって…それって…」
気づいたリリアンの顔がどんどん赤くなっていく。
「ま、まるで…ルカが…よほど私に会いたかったみたいじゃない………」
真っ赤になったリリアンにセシルは楽しそうに笑いかけるのだった。
読んでくださりありがとうございました!
今後また更新ペースは大分ゆっくりになりそうです……。




