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第6話 ランカスター辺境伯領への出発と始めての戦闘(冒険者の感って、予知能力ですか?)

今回は、盗賊との戦闘を描いています。

戦闘描写が苦手な方は、読み飛ばして頂いて、次の回(第7話)をお待ちください。

いよいよ、ランカスター辺境伯領へ出発する日がやって来た。

マリアマリーナ、トーマの3名が馬車に乗り、御者1名が馬車を操る。騎馬護衛4名が馬車を守る。ランカスター辺境伯領の騎士 1名と従士 2名、と、バーダックだ。

馬車はゆっくりと進むので、街道沿いの停車場で2泊、街で1泊するという、片道3泊4日の行程。


商隊の往来も多い街道のため、道路はしっかりと整備されており治安も良く安全で、馬車の揺れも少なく順調だ。初日の昼間は、盗賊や魔物の襲撃もなく、予定通りの停車場(小規模な宿営地)で夜を過ごしたが、何も問題なく夜が明けた。


2日目の移動も順調で特に問題もなく、2泊目も予定通りの停車場(小規模な宿営地)で夜を過ごし、何も問題なく夜が明けた。このまま順調に進めば、3日目の夕刻には、ランカスター辺境伯領の地方都市(ランキュラス)へ到着する予定だ。


(「父様、感が外れましたね。何の問題もなく、街に到着できそうですよ?」)と、思ってしまった。

フラグが立ったのか、バーダックの緊張した声が聞こえる。


「坊、盗賊の襲撃だ。馬車の前と後ろから、6名の盗賊に狙われている。前の3名は、ランカスターの騎士様に任せて、後ろの3名は俺が受け持つ。馬車は頼んだぞ、ハァッ!」


『ドドドド』と、ランカスター騎士と従士1名の2名が前方、バーダックが後方に駆けていく。

馬車には、従士1名が護衛として残った。馬車の中では、マリアマリーナが手をとりあい震えている。


「トーマ、どうしよう。大丈夫かな?」マリーナが不安そうに声をかける。

「大丈夫です。姉様と母様は、トーマが必ず守ります。馬車の中で、じっとしていて下さい」


トーマは馬車の御者に声をかけるために、御者台に這い出した。

と、「グワー」という呻きと共に、馬車の護衛に残っていた従士が、馬から転落した。


周囲を伺うと、馬車の横方向から弓矢を捨てた盗賊が3名、猛然と駆け寄ってきている。

馬車の護衛に残った従士は、脚と腕に矢を受けており、動けそうもない。ランカスター騎士も、バーダックも馬車から遠いうえに交戦中だ。


(「うーん、これって、父様の感があたったのかな?、僕の出番ってわけだね」)

つと、御者に目を向けると、ニヤリと笑っていた。


「ゲッヒッヒッヒ、高く売れそうな女共は頂いて、ガキとはここでお別れだ」と言って、右腕を懐に入れ、短剣を取り出す。瞬時にトーマは魔力を身に纏い、ハヤブサの剣を鞘走らせ抜刀する。

『ズバッ』と、御者の両腕を切り飛ばす。

「ウギャー」という悲鳴をあげ、盗賊に通じていた御者が、馬車から転がり落ちた。


(「絶対に、母様と姉様は渡しません」)

御者が動かなくなったのを確認し、トーマは馬車を飛び降りる。

猛然と駆け寄ってくる3名の盗賊と対峙する。先頭を駆けて来る盗賊が、御者を倒した敵に向かって、

「クソがー!」という、汚いセリフを吐き、本気で向かってきている。


先頭を走ってきた盗賊が、盗賊には不釣り合いなブロードソードを引き抜いた。

剣は刃こぼれが目立ち、防具は身に着けていない。どうやら、身を持ち崩して、盗賊にまで落ちぶれた元騎士のようだ。


盗賊は、自分の剣の間合いに入ると、「ウオッ!」裂ぱくの気合と共に、上段から猛然と剣を振り下ろす。

(「父様の剣に比べると、遅い」)と考える余裕があるトーマ。

振り下ろされた剣筋を右への踏み込みでかわし、スレ違いざま、防具のない敵の左脚を大腿部から切り飛ばす。片足を失った盗賊は、バランスを崩し、その場に倒れ込む。「ムグググ」と呻いているが、出血多量で動かなくなった。


残りの盗賊は2名。

チラリと遠くを見ると、ランカスター騎士もバーダックも戦闘継続中。

トーマが対応するしかないが、残りの2名は無理に突っ込んでこず、ブロードソードを構えて慎重に間合いを詰めてきた。


(「『ハヤブサの剣』で多少早く動けたとしても、訓練を受けた、2名の騎士崩れを同時に相手できるのか?。でも、ここで盗賊を倒さないと、母様と姉様がどんな酷い目にあうかわからない。そんな事はさせない」)

覚悟を決めたトーマは、なりふり構わず全力で魔力を開放する。

オッドアイの左目の碧色の瞳と、ハヤブサの剣の刀身が、強く輝く。


トーマに対峙している騎士崩れの盗賊2名は、仲間を一刀の元に切り伏せた小兵の剣士トーマを、恐るべき手練れと考え、2人がかりで、全力で倒しにきた。

「オリャ!」「オオオ!」鋭い剣筋が、左右から同時に襲い掛かる。

左の敵は横薙ぎ、右の敵は振りおろし、一見、逃げる事も防ぐこともできないように見える。


しかし、トーマは地面スレスレに屈み込み、左の敵の横薙ぎの剣を掻い潜り、盗賊の懐へと飛び込む。

トーマの頭髪を敵の剣が横に薙ぐのを構わず、左の敵の両脚を切り飛ばす。

すぐさま、身をひねり、左側の盗賊の体を踏み台にして、右側の盗賊へと飛び込む。


飛び込んでくるトーマに向かって、右側の盗賊は、振り下ろした剣を切り上げてきた。

『ギンッ』と、ハヤブサの剣で盗賊の剣を受け流す。トーマは、勢いのまま、ブロードソードを持つ盗賊の両腕を切り飛ばす。そのまま、地面へと転がり込む。


剣を振るう事を優先したトーマは、受け身を取る事ができず、地面に叩きつけられ、口の中を切る。

地面の土の味と、口の中の血を味わいながら、立ち上がろうとする。

しかし、『ドガッ』と、両手を失った盗賊に、腹部を激しく蹴り飛ばされた。トーマの体が宙を舞う。

「ウグッ」

激しい痛みに意識を失いかけたが、反射的にハヤブサの剣を敵の胸に投げる。

剣が突き刺ささった盗賊は、『ドウッ!』と、仰向けに倒れ込んだ。


暫く浮遊感をあじわった後、トーマは再び地面に叩きつけられた。

「グハッ!」と血を吐く。

何とか意識を保ち、立ち上がろうと、両手・両足に力を入れるが動けない。

盗賊の全力の蹴りで、腹部の内臓に致命傷を負ったのかもしれない。


(「しまった。防具にまでは、気が回らなかったよ」)

トーマは、薄れゆく意識の中で、「「トーマ」」と呼ぶ、マリアとバーダックの声を聞き、完全に意識を失った。

頑張って家族を守ったトーマでしたが、重症を負ってしまいました。

早くも絶体絶命のピンチ?

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