第4話 母(マリア)の実家で開かれるパーティーに呼ばれました(パーティーって、良い予感がしませんね)
強制イベントが発生し、トーマの運命が動き出します。
秋のある日、母の実家で開かれる『パーティー』の招待状が届いた。招待状の差出人は、母の父であるランカスター辺境伯。トーマの祖父にあたる人物で、バスティア共和国の軍務大臣を務める偉い人らしい。
母いわく、普段は、王都守護のため王城に駐屯しているが、立派に育っているという噂の絶えないトーマ見たさに、休暇を取って領地の領都に帰ってきて、パーティーを開くとのこと。
母も、久しぶりに父に会いたいようで、
「私も久しぶりに、父様に会いたいし、少し遠いけど、マリーナも、トーマも、一緒に行ってくれる?」
「えー、どうしようかな?お爺様のお城って遠いし」 あまり乗り気でないマリーナ。
「僕は、一緒に行きたいです。凄く楽しみです!」 トーマは、二つ返事でOKした。
「トーマが行きたいなら、しょうがないわね。私も行こうかな?」
「ふふ、ありがとう、マリーナ、トーマ」
出発は1週間後に決まった。ランカスター辺境伯領から迎えが来るらしい。その日は、母の嬉しそうな顔が見れて、トーマは、とても良い気分で眠りに就くことができた。
翌早朝、ミレーニア教会で朝のお祈りを済ませてから帰宅する。父が、何か立派な剣を携えて待っていた。何か話しがあるのだろうか?
「ただいま、戻りました!」
父が無言で近づいてくる。トーマの目の前で立ち止まり、真剣な面持ちで語り始めた。
「トーマ、父は封印の祠の警護があるため、マリアとマリーナの護衛として、ランカスター辺境伯領に同行する事ができない。8歳とは思えないほど立派に成長したトーマを、ハサウェイ家の男と見込み、頼みがある。」「父が冒険者時代に手に入れた『ハヤブサの剣』だ、これをトーマに託す。この剣で、マリアとマリーナを守って欲しい」
ルースが、『ハヤブサの剣』をトーマに手渡す。
「さあ、この剣を抜いてみなさい」
「はい」
トーマは、明かに魔剣と思われるショートソードをルースから受け取り、『キンッ』という小気味良い音で鞘走らせる。抜き身の刀身は両刃の直刀で約70cm。やや藍みを帯びた刀身は、誰が見ても惚れ惚れするであろう業物で、その軽さに驚く。
「父様、素晴らし剣ですね。」
『カチリ』とハヤブサの剣を鞘に納めながら、トーマは、神妙な面持ちを崩さず続ける。
「この剣は、確かに素晴らしいと思いますが、ランカスター辺境伯領への道中はそれほど危険なのですか?父様がこれなくとも、バーダックの護衛があれば、何も恐れるものは無いと思うのですが?」
トーマの、最もな問いかけに、ルースは、真剣な面持ちのまま答える。
「うん、バーダックは護衛に就かせるつもりだ。それに、ランカスター辺境伯からの迎えにも、腕の立つ護衛はいるだろう。」
「それなら、」と、トーマが言いかけると、
「しかし、万が一という事がある。護衛が何かのタイミングで馬車を離れないとも限らない。その時にマリアとマリーナを守れるのは、トーマ、お前だけなんだ。頼まれてくれるか?」
父が、両手でトーマの両腕を、力強く掴む。目が本気だ。
父は、母と姉を溺愛しており、逆らってはいけないと感じる。
「父様、分かりました。この剣はまだ、手に馴染んでいません。使い方のコツを教えて頂けませんか?」「もちろんだ、これから1週間、みっちり稽古をつけてやる。魔法剣士の戦い方を体で覚えるんだ、良いな?」
「はい、頑張ります」
父の冒険者として危険を察知する感が働いたのかもしれない。ハサウェイ家に2本しかない魔剣の1本を託すというのだから、その本気度が伺える。
その日から、激しい訓練が始まる。ルースの訓練は、バーダックよりも容赦がなく激しい。午後も、ルースの訓練が続く。訓練後は、すっかり疲れきってしまうので、ミレーニア教会で夕刻のお祈りをして、疲れを癒すトーマであった。
暫くは、剣がメインで、魔法は控えめに登場します。