第1話 プロローグ(皆さん、仕事は頑張っていますか?)
皆さん、初めまして。
剣と魔法の冒険ファンタジー的なお話しの連載を始めました。
頑張り屋の主人公が紡ぎ出す物語りを、皆さんにも楽しんで頂ければ幸いです。
拙い文章かもしれませんが、どうか楽しんで下さい。(作者より)
僕の名前は、佐藤斗真、普通の会社員。
仕事は、ソフトウェアの開発。とは言っても、IT業界での華々しい活躍ではなく、自動車の中に組み込む、ソフトウェアの開発をしている。
とにかく、地味な仕事だ。
仕事も地味だが、会社での役職も地味で目立たず、ずっと万年係長をしている。
自動車業界自体は、自動運転や電気自動車という、注目されている新技術の開発競争真っ只中。決して地味ではないが、こと、自動車に組み込むソフトウェアの開発となると、全く話しは違う。
設計書を書いて、PCに向かってコーディングして、ひたすらテストを繰り返すという、とても地味な、裏方ともいえる仕事だ。
変に業界が注目されているので、ソフトウェアの開発の仕事は、どんどん大変になっている。正直、昼休みも休んでいる暇がない。
しかも、働き方改革だ、ワークライフバランスだ、との掛け声で、「今日は、定時の日だから早く帰って下さい」と、言われ会社を半ば強制的に追い出され、ソフトウェアを開発する時間が減っている。
いつもは早く帰れ、という上司の課長が、
「お客様のご要望で、納期が1ヶ月早まりました。皆さん、頑張りましょう。気合があればやれるはずです!」
と言うもんだから、ついつい文句を言ってしまう。
「ソフトウェアを開発する時間が減っているのに、どうやって納期を早くするんですか?気合では、ソフトウェアが作れない事くらいわかりませんか?」
と言っては不興を買い、いつまでたっても昇進できない。
そうはいっても、自分達で開発しきれない部分を放置しておけないので、アウトソーシングと言って、他の会社にソフトウェア開発をお願いする事になる。
ところが、こちらも予算削減で、安くて、あまり出来が良くない会社にしお願いするしかない。そうすると、出来上がったソフトウェアにバグ(ソフトウェアの問題)が多いのて、結局、自分達でテストと、手直しをする事になる。
こんな感じで、益々仕事が増えていく日々をおくっている。
ソフトウェアを開発している人は、根がまじめな人が多く、少しでも良いソフトウェアを作ろうと毎日精一杯努力している。
が、頑張っても頑張っても終わらないどころか、逆に増えていく仕事。
バグ(ソフトウェアの不具合)を出しては叱責される日々。
精神力は鍛えられているが、やはりツライものはツライ。
そんな感じで、ずっと仕事一筋だった為、東京で一人暮らしを始めてから彼女もできず、気付けば、49歳のアラフィフになってしまった。
週末の皇居の周囲を回るジョギングで肥満体系は何とか回避しているが、特別に運動神経が良いわけでもなく、ソフトウェア開発以外にとりたてて特技もない。
転職も難しい年齢になってしまったので、この先を考えると、正直、凹む。
そんな地味男の楽しみと言えば、仕事終わりに飲むお酒につきる。
旨いお酒とおつまみに、何とか支えられていると言っても過言ではない。
何を隠そう、今も、アパート近くの大手居酒屋チェーン店の赤い暖簾を潜り、カウンターの端に腰を落ち着けた所だ。
今日は、ソフトウェア開発が一段落したので、ささやかな、お一人様打ち上げを行うつもりだ。会社の仲間たちは帰宅したが、僕はどうしても一杯やらなくては気が済まなかった。
カウンターの端の席について、いつもお世話になっているメニューに目を通す。
目に入るのは、やっぱり、好物のおつまみだ。
通りかかった女性店員に声をかける。「注文いいですか?」
「はーい!」(「アルバイトかな?元気そうな可愛い系の女の人だな」)と、心の中で思いつつ
「若鶏の竜田揚げ、甘辛手羽先から揚げ5個、焼き鶏盛り合わせ5串と、レモンハイのジョッキ」を注文。
「少々、お待ちくださ~い」と去っていく女性店員を見送りながら、
「鶏がかぶったけど、大好物だし、いいよね」と、独り言をツブやき、ニヤつく。
先ほどの女性店員が、キンキンに冷えたレモンハイをもってきてくれた
「ご注文のレモンハイです!」
早速、グイっと煽る。一息でジョッキの半分ほど飲み干す。
タン!っとテーブルにジョッキを置くと、「ア~、旨い」と自然に言葉が漏れた。
直ぐに、甘辛手羽先のから揚げ、と、焼き鳥盛り合わせ、がテーブルに置かれた。
すぐさま、かぶりつく。「旨い!」言葉が漏れる。あっという間に食べつくし、レモンハイを飲み干す。
ちょっと氷が解けてうすまっていたが、口直しにはちょうど良かった。
「ご注文の、若鶏の竜田揚げになりま~す」という声と共に、若鶏の竜田揚げが運ばれてきた。
「ありがとう、レモンハイのジョッキをお替りで」と注文。
「は~い、直ぐにお持ちしま~す」と去っていく女性店員。
「よしよし、これを待ってたんだよね」小麦粉をまぶしてパリっと揚がった鶏肉に、タルタルソースが掛かっている。とても美味しそうだ。
「さあ、頂きます」と、大好物の若鳥の竜田揚げに箸を伸ばした瞬間、
「ブチっ」と何かが切れたような音が頭の中で聞こえ、急激に視界が歪む。
ちょうと、箸を伸ばそうとしていたので、まるで、酔いつぶれて眠り込んでしまったように、緩やかに、静かにカウンターに倒れ込む。
『カタン』と、箸が、カウンターのテーブル上に落ちる音が聞こえる。
「竜田揚げを、一口でいいから、食べさせて」と、思ったのを最後に、意識がブラックアウトした。
書き溜めがあるうちは、早いペースで更新していく予定です。
トーマに負けないように、頑張ります!