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秘密の部屋

 メディオロ商会にある“奥の部屋“と呼ばれる部屋はルトルスが秘密裏に人と会う為の使われる部屋だ。

 その部屋である人物の多くがメディオロ商会に多大な影響を与えてきた。

 その事を知っている会頭付きの秘書であるソナはゴクリとつばを飲み込んだ。

 ソナの知っているだけでも一度、それも前領主との会談の時に使って以来、使用されていない部屋である。


(大丈夫、部屋の調度品は日々手入れを怠っていない。ソファーもテーブルも申し分ない物だ。ああ、いけない。給仕に連絡しなければ。いつもよりも上等……いや、最上級の物を用意しなければ。)


 ソナは給仕の物に指示を出すために厨房へ急ぐのであった。


 ―――――――――――――――――――――――――――――――


 奥の部屋でルトルスがソファーに腰を掛けしばらく待っていると秘書のソナがやって来た。“アルマハ村の飲み友達“がやって来たようだ。

 ソナに案内され頭からローブを被った男が部屋に入って来た。記憶にある執事と背格好が同じだが、漂う雰囲気が異なっている。


「どうぞお掛け下さい。」


 ルトルスは男にソファーを薦めた。テーブルの上にはソナが選んだらしいお茶菓子とお茶を入れたポットが置かれている。


 男はローブも取らずにルトルスの正面のソファーにどっかり腰を下ろした。


「失礼を承知で頼む。ローブを取ることを今はご勘弁願いたい。」


 そう言って男は頭を下げた。この状況でローブを取らないのは余ほどの理由があるのだろう。


「いえ、かまいませんよ。ではソナ下がっていなさい。」


 これから話す事は場合によって他の誰にも話せない事になる。その様な話を秘書のソナに聞かせてしまった場合、彼女を処分しなければならなくなる。

 ルトルスにとって優秀な彼女を処分することは避けたいのだ。


「はい、ルトルス様。ご用がありましたら隣の部屋で控えておりますのでおよび下さい。」


 ソナは軽くお辞儀をすると隣に部屋に向かった。


「……そろそろ話を聞かせてもらおうか、スティーブン。」


「ああ、その前に私のこの姿を見てくれ。」


 スティーブンはゆっくりとローブを外すとその下から獣の頭、狼の頭が出てきた。


「その姿はいったい……。」


 ルトルスは変わり果てた姿のスティーブンを見て驚きのあまり動きが止まってしまった。


「これは呪いだよ、ルトルス。ある男によってこの姿に変えられてしまったのだ。」


「何と!そんなことが可能なのか!だがカルミラはその様な呪文を使って何をしようと言うのだ?」


 驚くルトルスだったが、スティーブンは首を横に振った。


「いや、カルミラはこの呪文については知らない。この呪文はカルミラの手下としていた男が使ったものだ。いったい誰に仕えているのやら……。」


 ルトルスはスティーブンの言葉から自分が考えていたよりももっと問題が大きい事に気が付いた。裏で暗躍する何者かが存在する。このままではオーランド領がその人物によって乗っ取られかねない。

 これまではカルミラを抑えさえすれば問題は解決できると考えていた。しかし、裏で暗躍する何者かが存在するのならカルミラを抑えるだけでは問題は解決しない。


「カルミラを後押しする者の存在か……厄介だな。ただでさえアイザック様が行方不明なのに、更に問題が発生するのは……。で、今日は何用出来たのだ?」


「ああ、その行方不明のアイザック様からの用事だ。」


「何と!」


 ルトルスにとって待ちに待った知らせが届いた瞬間であった。


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