ダンジョン
ダンジョン。
この世界とは異なる法則、異界のエネルギーによって作り出される迷宮である。
最下層では異界からのエネルギーを放出する為にダンジョンコアが存在している。
ダンジョンの階層は何層にもわたる場所であり、そこには地上には存在しない凶悪な魔物がいる。
多種多様な魔物から採れる素材は固有の物であり地上では存在しない。ダンジョンの深い階層に存在する魔物が落とす物は珍しいこともあって法外な金額で売れる。
その為、多くの冒険者たちは一攫千金を目指してダンジョンに潜るのであった。
古代人たちはダンジョンの富を安全に採取するためにある様々な仕掛けを作り上げた。
その仕掛けの一部が転送クリスタルやセイフティゾーンである。
「魔物か……ミノタウロスがこの森に現れたという事は厄介だな。単独だから大ごとではない様だが……。」
「師匠、ミノタウロスが現れると厄介なのですか?」
さほど苦労せず倒したミノタウロスを“厄介“と言ったので、リリアは疑問に思ったようだ。
「リリア、ミノタウロスは何処にいる魔物だ?」
「ダンジョンの中層ですね。ルヴァンのダンジョンで言うと“森の迷宮”の十五階層以下の階層から見られ……あっ!」
どうやらリリアも気づいた様だ。
ダンジョンの魔物は地上には存在しない。もし、ダンジョンの魔物がいる場合は三つの理由のどれかしかない。
一つが魔法使いによる召喚。
この場合、魔物をコントロールする為、近くに魔法使いがいる必要がある。
だが、近くに魔法使いはいないため召喚ではない。
「魔物の暴走が起こったのでしょうか?」
もう一つが魔物の暴走。ダンジョンから魔物が溢れ出す現象だ。
これは一説によると、古代人たちが作った仕掛けの弊害であると言われている。
普通、ダンジョンは魔物が外に出ない。と言うよりも古代人たちが作った仕掛けにより外に出さない様にようになっている。
だが、魔物を外に出さない仕掛けにも限度はある。仕掛けは日々増えて行く魔物を無限に押さえておくことは出来ない。
ダンジョン内の魔物がある一定の数に達した時、仕掛けは解除され魔物が溢れ出す。
これが魔物の暴走である。
一説によると溢れ出る魔物も一網打尽にする古代人の仕掛け(魔道具?)があると言う話だが未だかってその様な仕掛けを発見したと言う話は聞かない。
「いや、ミノタウロスは一体だけの様だから魔物の暴走は起こっていない。魔物の排出だろう。」
最後の一つが魔物の排出、中層にいるような魔物がダンジョンの外に一体だけ出る現象である。
これは古代人たちの仕掛けがダンジョンから中層の魔物を転送するのである。
魔物の排出が見られた後、さほど時間をおかず魔物の暴走が必ず発生する。
その為、魔物の暴走自体も古代人たちが利用していたという根拠になっている。
「この近くのダンジョンと言えば“草原の迷宮”か。さほど苦労する迷宮ではないのだが、冒険者はどうしたのだろうか?」
ダンジョンに魔物の暴走を起こさない様にするにはダンジョン内の魔物を一定数狩る必要がある。
その為に冒険者がいると言っても良い。
平民も存在する冒険者に一定以上の特権(魔道具の使用など)が与えられているのもその表れである。
「“草原の迷宮”近くの町は“アンセルム”か。兎も角、アンセルムに行ってみないといけないな。」
数時間後、森を抜けた先にアンセルムの町並みが見えてきた。アンセルムはダンジョンで生計を立てる冒険者が少なからず存在するはずである。
「アンセルムが見えてきた……それにしては静かだな?」
遠くからでもわかるほどアンセルムの町は静まり返っていた。




