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魔力ゼロの魔法使い ー両親は殺され廃嫡され殺されかけた。だが僕は全てを取り戻す。ー  作者: 士口 十介
オーランド領

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いつもの朝

「師匠!朝です!起きてください!……起きませんか、こうなったら最後の手段ですね。」


「!!」


 僕は何やら嫌な予感がしてパッと目を開ける。

 目の前には三角巾をかぶりエプロンをつけた少女が布団の端を握り今にも引っ張るかのような体勢をしていた。

 リリアちゃんだ。

 僕に何度も声をかけても、揺すっても起きなかった為、今まさに強硬手段に出ようとしていたところだった。

(体を揺すっても起きない場合は布団を無理やり引きはがされるのだ。)



 この館に逃げてきてから三年。僕は毎朝弟子であるリリアちゃんに起こされる日を送っている。


「やあ、おはよう。リリアちゃん。今日もいい朝だねぇ……」


 と朝の挨拶をする僕の言葉にリリアちゃんは頬を膨らませ少し怒ったような態度になる。 


「師匠!昨日も言いましたが私はもう15才。ちゃんとした大人のレディなんですよ。」


 リリアちゃんは胸を張り鼻息も荒い。


「あ、そだね、すまない、すまない。リリアさん、おはようございます。」


「……アイザックさんは師匠なんだから私のことはリリアでいいのですけど……」


 少し残念そうな顔をしているが何か間違ったのだろうか?


「ところで、今朝の朝食は何だい?」


「今朝はママレードを塗ったトーストとキャベツとベーコンのオムレツ、アボカドとトマトのサラダです。オムレツにはマシュルームのホワイトソースをかけています。」


「新しい組み合わせだね。リリアさんどんどん新しい料理を覚えるね。」


「当然です。こう見えても宿屋娘ですから。」


 リリアが胸を張ると真新しい白いスカートが揺れる。リリアが今着ているスカートは見たことの無いデザインの物だ。


「そう言えばリリアさんが着ている服は見たことが無いな?ドームが作ってくれたのか?よく似合っているな。」


「そうですか!」


 似合っていると言われたのがうれしかったのか、その場でクルリと回りスカートをフワーッと広げる。

 ドームは執事の姿をした使い魔だ。手先が器用で僕やリリアの服などを作成する。他には庭の手入れや魔道具の調整も行う。

 同じ使い魔のキキーモラは館の掃除や洗濯、料理を行っている。

 リリアの料理のレパートリーが増えたのはキキーモラのおかげでもある。




 朝食後は各種訓練を行う。

 僕とリリアは師と弟子という間柄なのだが、中身に差はあるが同じ訓練を行っている。

 奇異なことに感じられるかもしれないが、どれほど熟達しても基礎訓練は欠かせないものなのだ。


 午前中は基礎訓練。

 魔導士(ウィザード)の場合、重要なのは紋章を早く正確に描く力だ。その為には日々地味な反復練習しかない。


 基本となる文字や図形の手本を見ながら数個描く。


 その次に手本を見ずに今描いた物を描く。


 最後に手本を見ずに描いた物と手本を比べ、正しく描けているか調べる。


 これを1時間繰り返す。その後、軽い休憩だ。

 1時間なのも理由がある、1時間以上時間を費やしても訓練効果が上がらないからだ。


 紋章を描く訓練の次は体力訓練を行う。

 強力な魔導士ウィザードでも体力が無ければその能力を十全に使うことはできない。

 これも地味な訓練で館の周囲を軽く走った後、筋力トレーニングが主なものである。


 基礎訓練が終わる頃には昼食になる。

 昼食を作るのはキキーモラの仕事だ。リリアは訓練を行っている為、昼食の準備ができないのだ。


 昼食後は少し長い休憩を挟んで実践に即した訓練を行う。

 武器による攻防や魔法による攻防を訓練する。

 武器による攻防は僕の腕では訓練にならない為、使い魔であるドームが講師になる。

 ドームは守護者ガーディアンの役目を持っている為、屋敷内では一番武具の扱いに習熟していた。


 実践訓練後は夕食までの間は自由時間だ。僕は魔導書を読むか魔道具の研究に費やす。


 その日の僕は図書室で魔導書を読んでいた。

 この図書室にある魔導書は多岐にわたっており、その書籍数は国でも類を見ないほどだ。

 僕はその書物の一つをいつもの机に座り読んでいた。


 この館に所属していた魔導士ウィザードが残した魔導書で”転送”に関する書物だ。

 館に来た当時の僕では実力不足でこの魔導書の中身はあまり理解できなかった。

 しかし、日々の訓練の結果、中身を理解することが出来るようになったのだ。


 魔導書によると”転送”のクリスタルは特定の紋章と魔石を使えば転送個所を増やすことが出来る様だ。

 その他にも転送場所を特定の場所に設定することでその場所に移動することが出来る魔道具も作れるらしい。

(ただ、1回ごとに魔石が消費される。これは仕方のないコストなのだろう。)


 僕の父母の仇であるカルミラはオーランド領内に住んでいる。

 そのカルミラを倒すためにはオーランド領内で色々活動できる拠点が必要だ。


(カルミラの目が届きにくい場所。人口が少なくて近くに開発途中の場所がある村か……。)


 オーランド領のほとんどの場所は開発され人の手が行き届いている。

 だが、僕の父上が開発しようとしていた場所ならまだ人口は少ないはずだ。


(いろいろ問題があってオーランド家の支援が無ければ数年と持たない村が北の方にあったな……。)


 僕は机に地図を広げ場所を確認する。


(……アルマハ村。たしかここだ……。)

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