魔導士の図書室
目の前にあったのは図書室、それも僕の屋敷の図書室と似通っているように見えた。
図書室を入ると奥に真っ直ぐ広い通路が伸びている。広い通路の左右、等間隔に少し狭い通路が枝の様に伸び、通路の両側は本棚になっている。
屋敷にあった図書室との違いはさらに高い部分がある。この図書室はどうやら三階層になっているように見えた。
リリアちゃんと一緒に広い通路を進む。入口の扉とちょうど反対側にあたる部分には本を読むための長机が並んでいる。
机の前には明かり取りの為の大きなガラス窓があり、窓から陽光が燦燦と降り注いでいる様に見えた。
「イザークさん、今は夜中のはずなのに明るい場所ですね。」
ルヴァンを脱出し、森の迷宮の転送クリスタルにたどり着いた時には真夜中を大分過ぎていた。だから夜明けまではまだ一時はあるはずだ。しかし、この場所は昼のように明るい。
(そう言えば屋敷の図書室もここの様に明るかった。僕は本を読むのに便利だとしか思わなかった。)
左右に延びる通路に長机がいくつも並び、その先には扉があった。
(屋敷の図書室右側の丁度奥、そこはいつも僕が使う席で気に入った本を幾つも置いていたな。)
奥の扉の近くの長机に積まれた本が僕の目に入った。他の机には本が積まれていないが扉近くの長机には何冊かの本が積まれている。
扉に近づき机の上に置かれた本の表紙を目にした時に僕の足が止まり、思わずその本を手にとった。
「この本が何故ここに……。」
足の止まった僕の横からリリアちゃんがのぞき込む。
「まどうしのぼうけん?」
僕がよく読んでいた魔導士の絵本が机の上に置かれていた。
「魔法使いの本ですか……でも、こんな表紙でした?この魔法使い何かの模様の上に立っていますけど??」
僕が読んでいた絵本と同じ様に表紙に描かれた魔導士は光り輝く紋章を展開している。それだけでは無い、僕には屋敷の図書室にあった本と同じ様に思えた。
「……同じ位置に傷がある。それに汚れも同じ位置。」
この本が僕の屋敷の本であるなら、この場所は屋敷の図書室だと言える。似たようなものが置いてあるだけの偶然の一致ではない。
しかし、図書室の通路の先に扉は無かったし屋敷の図書室は一階だけで三階は無かった。
そう言えば、図書室の入り口はT字路になっていた。屋敷の図書室迄の通路は一直線だった。
この違いは何故だろう?
だが僕にはいくら考えても答えが浮かんでこなかった。答えを出すのに、情報が少なすぎるからだろうか?
それならば他の部屋を探索することで何か手掛かりを得ることが出来るかもしれない。
僕は絵本を長机の上に戻し通路の先にある扉を開ける。
開けた扉の先はアーチ状の渡り廊下になっていて隣の建物まで続いているようだ。
隣の建物を目指し渡り廊下を歩いてゆくと廊下の上から庭の様子が見える。
庭には金属のポールが立っていてその先には光を発する魔道具が取付けられている。図書館の中に外からの光が差し込んでいたのはこの魔道具のおかげだったようだ。
渡り廊下から見える庭もよく手入れがなされている様で色とりどりの花が咲いていた。
隣の建物も図書室と同じぐらいの大きさで渡り廊下の先には金属製の頑丈そうな扉が付いていた。
僕は注意深く扉を調べた。
扉に罠は無く蝶番やドアノブに錆は無い。きちんと油が差されよく手入れされているのがうかがえた。
僕はドアノブに手をかけるとゆっくりと動かした。ドアノブにはあまり力も入れていないのに音もなくゆっくりと扉が開いてゆく。
扉の先には図書室と同じぐらいの大きさの部屋があった。扉は建物の部屋の中ほどに繋がっている。部屋の両端と僕たちが入ってきた正面の壁には扉。入ってきた金属製の扉とは違いどちらも木製の扉だ。おそらく別の部屋や廊下に繋がっているように思える。
この部屋も図書室と同様、部屋の様々な場所に手の込んだ装飾が施されている。部屋には多くの長机が並びその上には様々な実験用の器具が並んでいた。
特筆すべきはこの部屋の中心にあるものの存在だろう。部屋の中央には人の背丈ほどもある巨大な水晶球が置かれている。
どうやらここは研究室の様だ。
この研究室も図書館や廊下と同じく塵一つ落ちていなく、よく手入れされていた。
「イザークさん。大きな水晶玉がありますよ。これは何ですか?」
リリアちゃんは大きな水晶球の前に立ちしげしげと眺めている。
「これは魔導士が扱う水晶球だな。主に探索系の魔法を使うのに使用する物だ。」
水晶球を使う魔法には探索系以外もあるが、一番よく使用されるのは探索系の魔法である。この水晶球もよく磨かれ手で触ったあと一つも無い物だった。
(やはりここも手入れが行き届いている。ここは一つ食堂や寝室を探す必要がある気がする。)




