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帝国情報部 その5

 激しく強烈な光とともに水晶球は砕け、その中に取り込んでいた物が裏庭一面に散らばる。


「モーリス、イザーク、無事か!」


 投げ出されたガストンさんは素早く立ち上がり辺りを警戒する。


「ああ、こっちは大丈夫だ……。」


 リリアちゃんを片手に抱え、モーリスさんはガストンさんの横に並び立つ。裏庭には多くの物が散らばっていて、その中でもひときわ大きな本棚の上に男が腰掛けていた。二人の視線はその男、アルタイルに向いていた。


「やれやれ、せっかく捕らえていたのに水晶球が壊れるとは……!」


 アルタイルの視線はリリアちゃんが持っている魔法の鞄ホールディングバックで留まった。


魔法の鞄ホールディングバック……修復したのか?だがしかし……。」


 アルタイルの鋭く見透かすような視線が僕の方を向いた。


「……平民が何故修復魔法を知っていますか?魔導士ウィザードになるような平民は攻撃魔法か補助魔法を覚えます。修復魔法は魔道具を作れなければ知ることはありません。そして魔道具を作ることが出来るのは貴族のみ……あなたは何者ですか?」


 たじろぐ僕の前にガストンさんとモーリスさんが割って入る。


「イザークが何者であろうと関係ない。今は俺たちの仲間だ。」


「然り。手伝ってくれることもある気のいい青年でしかない。」


 ガストンさんとモーリスさんはアルタイルに殺気の混じった強烈な闘気を放つ。

 だがアルタイルはそんな闘気にも動じず涼しい顔のままだ。


「やれ、怖い、怖い。有名な剣王と拳帝のコンビが相手とはいやはや……。」


 そんな中、モーリスさんの腕に抱えられているリリアちゃんが身じろぎする。


「お父ちゃん……。」


 気を失っていたリリアちゃんが周りのただならぬ気配で目が覚めたようだ。


「リリア、目が覚めたか。……イザーク済まんが頼めるか?」


 モーリスさんが抱き上げていたリリアちゃんを下ろし僕方へ押しやる。


「リリアを連れて逃げてくれ。何、こやつを倒せばすぐに追いかける。」


「逃げろと言ってもどこに逃げればいいのか……。」


 相手は帝国情報部だ。このまま逃げても町の出入り口で捕まる可能性が大きい。それに近隣の町や村に逃げてもすぐに追手が掛かるだろうし、第一、町や村に入ることが出来るとは思えない。


「リリア。例の場所だ。イザーク、場所はリリアが知っている。」


「例の場所?」


 モーリスさんはニヤリと笑った。


「俺が何のために大通りから外れた場所に宿を構えていると思っている。金が無かったからじゃないぞ。」


 つい先ほど迄、モーリスさんは“お金がない”から奥まった所で宿を開かざるを得なかったと思っていた。モーリスさんが剣王と呼ばれるほどの人物ならお金がないとは考えられない。何か理由があるはずなのだ。


「そこに隠し扉がある。そこから壁の外、ダンジョンの近くへ脱出できる。こんな時の為に用意してあるんだよ。」


「ダンジョン?」


「ああ、俺達冒険者ならダンジョンなら相手を撒くことが出来る。特にお前は斥候スカウトだ。そんなことはお手の物だろう。」


「でも、ダンジョンなんて……。」


 モーリスさんの言う通り、情報部に捕まらない場所、それこそ僕たちが慣れていて彼らが慣れていなさそうなダンジョンぐらいしかないのかもしれない。


「大丈夫だ、イザーク。心配するな。俺たち二人でこいつを倒したらすぐ追いつく。何、こいつには色々聞く事あるしな。」


 少し躊躇する僕にガストンさんが笑って答える。アルタイルはセーナ達の行方を知っているはずだ。ガストンさんはそれを無理やりにでも聞き出す気らしい。

 だとすればガストンさんのやることをリリアちゃんに見せるわけにはいかないだろう。それにモーリスさんやガストンさんの戦闘には僕たちは足手まといになる。その為にもこの場所から逃げた方がいい。


「……判りました。行こうリリアちゃん。僕たちがこの場にいればモーリスさん達は全力を出せない。」


 僕はリリアちゃんを連れてその場を後にした。


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