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帝国情報部 その2

 僕がその男に気づいた時にはその男はもう既に視界の中に入っていた。

 男は華美なレースの付いた黒の上下に白い手袋、動きやすそうな革のショートブーツ、帝国で流行りの黒い三角帽をかぶっている。男は一見すると何も武器を持っていない様に見えた。


「おや?あなたがイザーク君ですか。思っていたよりも若い。……ふむ。」


 細身の男は僕を値踏みするかのように眺めている。男は何故か僕の名前を知っている。

 それにこの男、一見隙がありそうに思えるが全く隙が無い。逃げ出せる方向は細身の男が塞いでいて僕に対して圧力をかけている。

 僕とリリアちゃんは追い込まれた格好だ。


「……あなたは……誰ですか?」


「これは失礼した。私の名前はアルタイルと申します。私は帝国情報部に勤めております。以後、お見知りおきを。」


 細身の男、アルタイルは僕に対して芝居がかったおじぎをする。


「帝国情報部……。」


 帝国情報部、帝国内外で諜報活動を行う組織であり、貴族や平民に対して処罰権限を持つ帝国宰相直属の部隊でもある。


「おや?帝国情報部について知識がおありだ。これは平民にしては珍しい。だがそれなら話は早い。」


「話が早い?」


「ええ、イザークくん。私は君を帝国情報部に勧誘に来ました。」


 アルタイルはにこやかな顔でそう話す、一見単なる勧誘の様に聞こえるがその声には有無を言わさぬ圧倒的な力があった。


「……」



「我々情報部に所属することになれば、あなたの命は保証されますよ。」


 アルタイルが保証するのはあくまで僕の命のだけだ。それにアルタイルはあの女、カルミアと一緒にいた。カルミアと情報部は繋がりがある。いったいどの様な関係なのだろうか?


「何故僕を情報部へ?」


「私がルヴァンに来た時、こちらを観察していましたね。そして私がそれに気づいた時の反応が素晴らしかった。あなたは鍛えれば情報部のエースになりうると考えた次第です。」


 アルタイルは僕を最大限の評価をしている。しかし、そう言いながらも僕が逃げることが出来る様な隙を見せない。


「ふふふふふ、こうして話している間もあなたはこの場所からどうやって逃げるか考えている様だ。」


「……」


「ただ、一つ疑問があります。あなたは何故カルミアを観察していたのかが判りません。カルミアを情報部が手伝い今の地位と名前、オーランドを手に入れたのですよ。その見返りに我々情報部に協力して貰っているのです。いわば情報部の外部協力者です。」


 アルタイルの口から両親殺害に関する意外な情報を聞かされ僕の腕がピクリと動く。

 両親は一体どの様な理由で情報部に危険視されたのだろうか?それも命を狙われるほど……。


「ふむ、やはりあなたが見ていたのはカルミアでしたか。それも、オーランドの名前に反応したところを見ると関係者。残念ですがあなたを情報部に迎える前に色々尋ねなければならない様です。」


 アルタイルの指摘に僕はギョッとする。僕と話していたのはいろいろ確認する目的があったのだ。

 次の瞬間、アルタイルは懐から素早く水晶球を取り出し僕たちに向かって突きつけた。


「収納!目標イザークと……いや、イザークとその装備。」


アルタイルが文言(コマンド)を唱えた途端、僕の体が猛烈な勢いで水晶球へ吸い込まれた。


「この水晶球、性能は良いのですが意識をそらさないといけないのが難点ですね。」

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