表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

34/82

ダンジョンの探索

 ルヴァンに来て半年。

 僕はこの町での生活やダンジョン探索での斥候の仕事にも慣れてきた。


 その斥候の仕事だが、仕事はダンジョン探索の前から始まっている。


 先ずは武器の手入れ。これは他の職業クラスと同じ様に思えるが斥候の場合、近接用と遠距離用の武器を状況に応じて使い分ける。

 他の職業クラスも遠近両方の武器を持っている。ただし、一方は予備もしくは副武器だ。斥候の場合は遠近どちらも主武器になり他の職業クラスの倍(単純に数えて)の数の武器の手入れが必要になる。これに予備武器が入る。


 その次に専用道具シーフツールの手入れ。

 専用道具シーフツールの良し悪しによって鍵開けなどにかかる時間が変わる為、念入りに行う。


 地図やダンジョンの最新情報などの収集も斥候の仕事だ。


 食料などの備品は各自が用意する物であるから自分の分だけの用意でいい。

 中には荷運びを雇う冒険者もいるがイザークのパーティで雇わない。食料を持つ荷運びとパーティが分断された時、各自が持っていないと餓死は免れないからだ。

 同じ様にたいまつ(もしくはランタン)やロープ、水袋は各自が用意する物である。



 ダンジョンにおいても斥候の役目は多岐にわたる。


 まず先頭にたっての魔物の警戒。

 ダンジョンのマッピング。

 通路の罠の発見や解除、扉の鑑定(罠の有無)や鍵がかかっていた場合の鍵開け。(これは宝箱においても同じ)

 休息時の見張りをサポートする罠の設置。


 斥候スカウトにしかできない事は戦闘よりも戦闘以外の時の方が多いともいえた。


「ガストンさん、通路の罠を解除しました。」


「よし、では前に進むか。隊列はいつも通り、イザークが先頭、俺と今度はセーナがその次。真ん中のサムとアルゼを挟んでグレモリーとさっきまで先頭だったボードが最後尾だ。」


 常に前衛で戦闘を行うと緊張が大きくなるので疲れが溜まりやすくなる。その為、ガストンさんは前衛職の様子を見ながら隊列を変更する。まして、今まで我々が訪れたことのない新しい階層である。みんなの疲れが溜まらない様にいつもよりも慎重に行動している様だ。


「イザークもだいぶ慣れたようだな。」


「そうそう、町での生活も慣れてきたみたいだしね。」


 ガストンさんに同意するかのようにセーナはニッコリ笑い頷いた。


「買い物も出来る様になったし、来た時みたいにスラムに行こうとしない様になった。それに宿代を銀貨で払うようになったものね。」


「その節は御世話になりました。」


 僕はセーナやガストンさんにぺこりと頭を下げる。この半年の間、ガストンさんやセーナのお世話になりっぱなしだ。



「よし、各自周囲を警戒。次の角までゆっくりと進むぞ。」


 パーティの隊列が整ったことを確認したガストンさんはキリリとしたまじめな顔に戻り号令を出す。

 パーティでのダンジョンの移動は早くない。むしろ遅い。

 これは余計な音を出し魔物に気付かれることを防ぐ為であり、パーティ内での速度差を埋める為でもある。早く走る必要があるのは逃げる時なのだ。


 ゆっくり進んでいる内に僕の脳裏に何か反応がある。

 斥候スカウトのスキルの探索サーチに反応したのだ。


「ガストンさん前方二十mの所に大型の魔獣が一匹います。」


 反応の大きさから見て大型の魔獣。

 情報によれば、この階層なら“アックスピーク”か“ジャイアントアントリオン”なのだが、アントリオンの方は必ず複数体で現れる。

 数から判断すると“アックスビーク”だろう。


「大型が一匹か、アクスビークだろうな。確か、嘴、羽が高く売れたな。……サム、炎系と雷系の魔法は禁止だ。」


「わかった」


「よし、イザークは周囲を警戒してくれ。セーナ、ボード、グレモリー、隊列を組むぞ!」


 重戦士であるボードとガストンを先頭にその後ろでセーナとグレモリーが槍を構える。僕は短弓ショートボウを構え、サムとアルゼは付与魔法の詠唱を始めた。

 詠唱している内容から判断するとサムは身体強化フィジカルブースト、アルゼは防護プロテクションの魔法の様だ。


ギャウォォォォォォォ!


 詠唱の声を聞きつけたのかアックスビークがこちらへ向かって突進してきた。魔獣の中には魔法を嫌う物がいる。このアックスビークも魔法を嫌う種類なのだろうか?


「ボード!盾を構えろ!一撃が来る!」


 アックスビークはその名前の通り嘴が斧のようになっていて、その嘴を利用し突進攻撃を行う。その威力はベテランの斧の一撃以上だとも言われている。


ドゴッ


 重量のある突撃の前にボードとガストンが後ろに押される。その上、盾で防御したにもかかわらず何処か負傷した様だ。

 アックスビークの嘴を見た僕は僧侶であるアルゼさんに尋ねた。


「アルゼさん。魔力減少マジックデクリーズは使えますか?」


「使えるけど、相手は魔法を使わないのだから関係ないじゃないの?」


「見てください。」


 僕はアクスビークの嘴を指さした。

 アックスビークの嘴を見ると、付与エンチャントが掛かっているかの様に嘴の先が輝いている。もしあの輝きが魔法の効果なら盾で防御したのに負傷した理由が判る。プロテクションや盾は通常攻撃を防ぐことは出来るが、魔法による攻撃は防ぐことが出来ないのだ。

 嘴の輝きの強さから考えるとかなり威力が高そうだ。だが、魔法的な物なら魔法減少マジックデクリーズで防ぐことが出来るはずだ。


「魔法?付与かしら……判った、やってみる。」


 アルゼが前衛のボードとガストンに魔力減少マジックデクリーズを掛けると目に見えてダメージが減った様だ。やはりあの斧の光は魔法の付与エンチャントだったようだ


 アックスビークはダメージを受け無くなった時点で僕たちの敵ではない。

 ほんの数分で倒すことが出来た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ