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世間の常識

一人で暮らすにしても基盤の無い僕が知らない土地で暮らすことは極めて難しいだろう。それなら少しでも信用のおけそうな人物のアドバイスに従う方が良い。

 僕はガストンさんのパーティに入ることになった。

 現状、僕は冒険者の生活について知っている訳では無い。まして、ルヴァンに知人もいない。それなら多少でも信頼のおけそうな人のパーティに入れば問題は少ないだろう。そう考えたのだ。


 かくして僕のルヴァンでの冒険者としての生活が始まった。


 最初の一週間、知らないことの連続だった。

 中でも一番の問題はガストンさん曰く、金銭感覚だそうだ。


 ガストンさんのパーティは定宿として、“暁の星亭”をつかっている。僕はその宿代を払う時、大金貨を出した。

 宿代は一月借りると小金貨一枚。大金貨は小金貨五枚なので余分が出ると考えたのだ。


「お前、なんていう物を出すんだ……。」


 大金貨を出した時、ガストンさんは呆れた顔でため息をついた。


「イザーク。大金貨てのは貴族様や大商人が大きな取引の時に使う物だぞ。宿代を払う場合、大きくても大銀貨(十枚で小金貨一枚)。中には小銀貨(五枚で大銀貨一枚)や大銅貨(十枚で小銀貨一枚)が混じる。それを大金貨、どこの御大尽だよ……。」


 どうやら僕はとんでもない物を出していたようだ。今、手持ちにあるのは大金貨三枚だけだ。銀貨に替えてもらう必要があるみたいだが、どこで替えてもらえばいいのだろうか?

 僕が両替の場所を考えているとそれに気づいたのかガストンさんが耳元に小声で話しかけてきた。


「……あと何枚大金貨があるんだ?」


 僕はすっと人差し指と中指を立て二枚あるとガストンさんに伝えた。


「三枚か!!よし、それは俺が預かろう!」


 今度は大声でガストンさんが話し手を差し出した。僕は素直に残りの大金貨をその上に載せる。枚数を確認したガストンさんはギラリと周りを睨みつけ、大声で僕に話しかけた。


「よし!ちゃんとあるな。今からギルドへ行くぞ!」



 大金貨はルヴァンの冒険者ギルドの僕の口座に預けられた。そこから必要な貨幣を下ろすのだ。


「こうすれば町の両替商よりも安く金貨を銀貨に替えることが出来る。」


 冒険者ギルドに貨幣を預ける場合、預けるのに小銀貨一枚かかる。それに対して両替商では大体2%が手間賃として取られるそうだ。

 確かにギルドへ預けた方が安い。引き出すのにお金がかからないのが大きいのだろう。


「ガストンさんは算術もできたのですね……。」


 僕が感心したようにガストンさんを称賛すると当の本人は不思議そうな顔をした。


「いや。俺は算術なんかできないぞ。これはただの経験則、教えてもらったことだ。」


 ガストンさんは昔組んだパーティで大金を得た際、仲間に”金貨一枚以上ならギルドに預ける”と教えてもらったそうだ。

 金貨一枚なら小銀貨50枚、それの2%なら小銀貨1枚となり何も問題はない。


 冒険者ギルドから“暁の星亭”への帰り道、歩きながらガストンさんは僕に話しかけてきた。


「イザーク。お前は算術が出来て頭は良いが、世間の常識を知らない。冒険者としてやって行くにはその辺りを学ばないと駄目だぞ。そうだな、どうせなら帰り道だ、市場に寄ってから何かを調達するか。」


 その後、市場でも僕に世間一般の常識が無い事が判明しガストンさんを呆れさせ、“暁の星亭”に帰ってからも調理をする際(借りた部屋はベッド八つと台所付きの大部屋)にも僕はパーティのみんなを呆れさせていた。

冒険者を一人一か月間雇う金額は大金貨1枚。

貴族は基本的に街で買い物をしないので銅貨は使いません。

ほとんど金貨、もしくは大銀貨です。

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