迷宮都市ルヴァン
”ルヴァン”
帝都から遠く離れた辺境、誰も頂上を極めたことのない霊峰”グランケープ”の麓に位置する都市である。
ルヴァンの別名は”迷宮都市”。
馬車で一日もかからない距離に未踏破のダンジョンが三つ存在し難攻不落の霊峰がある。
冒険者が集う街と言っても過言ではない。
その為、ルヴァンは辺境にもかかわらず、人口が多く帝国でも有数の都市になっていた。帝都にも勝る活気に僕は驚嘆した。
「これが迷宮都市ルヴァンか……」
大勢、それも様々な人々、様々な職業、様々な種族が忙しそうに行き交う。帝都では見かけない亜人種、エルフやドワーフ、それに獣人もここでは数多く暮らしている様だ。
「ああ、ここは帝国から多くの人が集まってくるからな。」
ガストンさんによると帝国各地から人が集まってきている様だ。亜人種もいることだ、周辺の属国からも多くの人々来ているかもしれない。
「ギルドで依頼終了の手続きをしたら、パーティの拠点に案内しよう。」
「拠点?」
「拠点って言っても、借宿なんだがね。」
ガストンさんは僕がパーティに入る前提で話をしている。だが僕はこのパーティに入るかどうか決めかねていた。どうしようか少し思案している僕を見てセーナが手を取り話しかけてきた。
「大丈夫よ。最初は不安かもしれないけど、すぐにみんなと仲良くなれるよ。ガストンさんは怖いけど……」
ぼさぼさの前髪から覗くセーナの青い目で見つめられると穏やかで優しかった日々が蘇るような気がする。それと同時に忘れてはいけない感情が同時に心に渦巻く。
はたして彼らと共にいて大丈夫だろうか。この感情を忘れてしまわないだろうか?
不意にセーナが僕の仮面に手を触れ僕の目をじっと見つめた。
「イザークの目も青い。私と御揃いだね……。」
「セーナさん……。」
僕とセーナ、見つめ合う二人の間に沈黙の時間が流れる。
どれほどの時間が流れたのだろうか?
「ゴホン、ゴホン、いいねえ。若い者同士仲良く見つめ合うシーンてのは。」
「「いえ、そう言う訳じゃ」」
ガストンさんに言われ思わず二人とも同時に目を逸らした。
「で、イザーク。考えてくれたかい?」
「ガストンさん。一つお伺いしてもよろしいですか?何故僕をパーティへ?」
何か訳がある僕をパーティに入れる理由は何だろう?どう考えても判らない。パーティのリーダーならリスクは犯すべきではないと思うのだ。
「そりゃ、それだけ使える斥候のスキルを持っていれば当然だろう。」
「何か僕に重大な訳があってもですか?」
「人ってのは大なり小なり何かの訳がある。大した違いは無いだろう。」
ガストンさんは話を続ける。
「俺は元々は拳闘士だ。試合とは言え殺し合い、中にはイザーク、お前ぐらいの相手もいた。それをすべて倒してきたから俺はここにいる。お前やセーナたちの面倒を見るのは罪滅ぼしみたいなものだ。」
ガストンさんは少し寂しそうに笑った。




