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斥候の仕事

 ルヴァンまでは帝都から馬車の旅で二週間の日数がかかる。


 最初の一週間は町から町への移動なので町では宿を取った。

 帝都とルヴァンのちょうど中間にある町であるカールトンを過ぎるころ、次の町との距離が遠くなり一日では町に着かないようになった。

 その場合は野営することになる。カールトンからルヴァンの間で宿に泊まれなかった三日は野営をすることになった。


 旅の間の僕の役目は道中の警戒の他、野営地での見張りである。

 特に野営地の夜の見張りは朝までの間のほとんどの時間は起きていなくてはならない。(その分、昼の間に馬車で眠る)

 盗賊や魔物に襲われるのは夜の間が多い為、早期に発見しやすい斥候スカウトの役目が重要になるから仕方のない事である。


 斥候スカウトの技能の周囲探索が威力を発揮する。

 この技能は周囲の生き物の動きを感じ取り位置を判断する技能だ。斥候スカウトの技量が上ると探索範囲が大きくなる。


 この探索技能、灯りの杖で魔導回路を描いた時の感覚に少し似ている。うまく表現できないが、外にある何かを使って行っているのが似ているのだ。

 魔導回路を上手く描けたのは斥候スカウトの技能のおかげの様な気がする。


 帝都からカールトンまでの間は治安がとても良い。盗賊や魔獣はほとんど出没することは無い。だが、カールトンの町を越えたあたりから治安が悪くなる。

 その証拠に野営中、魔獣が一回、盗賊団が一回襲ってきた。しかも魔獣と盗賊団は同じ日に襲ってきのだ。

 どちらも小規模な集団だったことと、ガストンさんのパーティの殲滅力が高く大事には至っていない。と言うよりガストンさんが異常に強かった。


 僕は腰のショートソードがガストンさんのメイン武器だと思っていた。ところが、いざ魔獣との戦闘が始まると手に嵌めた鉄の籠手で魔獣を殴っていたのだ。

 ガストンさんは襲い掛かってきた魔獣、ダイアーウルフをほぼ一撃で絶命させた。

 盗賊団が襲ってきた時も槍の攻撃を物ともぜず、躱しながら槍の柄を掴み引きずり倒し殴って気絶ノックアウトさせる。


 相手が槍を持つ場合、剣で対峙する時でも実力がよっぽど上でなければ敗北する。

(懐に入れば剣が有利も考えるのは何もわからない素人の考えなのだ)

 それを素手(籠手だが)でやってのけるガストンさんの実力はどの位の物なのだろうか?


 そんな疑問の答えはセーナが野営の時に教えてくれた


「ガストンさんは元拳闘士なのよ。」


 帝都でも剣闘士グラディエイター や 拳闘士グラップラーが戦う円形闘技場コロッセオがあった。コロッセオでは何日かおきに競技という名の殺し合い(中には殺さない場合もあると聞いた)が行われている。そこの拳闘士だった。


「あたしのこの前髪や格好、アルセの服装もガストンさんのアイデアなのよ。それまでは変な男によく絡まれていたわ。」


 セーナはぼさぼさの前髪でぶかぶかで小汚いマント、腰にはマチェットをぶら下げている。アルセの方もセーナと似たような格好である。

 彼女らの格好はセーナの言う変な男(多分貴族だろう)に絡まれない為のもので、それを指示したのはガストンなのだ。ガストンは僕が最初に受けた印象よりも頭が回る男の様だ。


 魔獣や盗賊団を撃退した後はこれと言った襲撃はなかった。(盗賊団は次の町で帝国警備隊に引き渡した)

 その後は旅はゆったりとした調子で進み、日が傾き始めたころルヴァンに到着した。

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