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ガストンの勧誘

 僕も初めて知った事だが斥候スカウトの冒険者は意外に少ない。

 斥候スカウトの技能は手先の器用さや身体の素早さだけでなく、幅広い知識とそれを理解する知性が必要である。

 農村から冒険者になる為に出てきた者は教育の程度が低く字も書けないものが多い。その為、斥候スカウトではなく戦士ファイターになる事が多い。

 知識が十分ある貴族の冒険者は大抵、魔法使いソーサラーになる。魔法は貴族だけに許可された物だけにそれ以外のクラスに就くことはない。

 必然的に、斥候スカウトは知識が十分ある、そこそこの教育が行われた者、例えば商人の子供がなる場合が多いのだ。それら以外は騎士団をお払い箱になった斥候スカウトぐらいである。

 加えて斥候スカウトの技には罠外しや鍵開けなど良からぬ道から誘いを受ける技が多いし、その道に進む者も少なくない。


 冒険者パーティには斥候スカウトがいないパーティも少なくない。これは隊商の護衛程度なら斥候スカウトがいなくても何とかなる場合が多いからだ。

 僕を誘ったガストンのパーティも斥候スカウトがいないパーティだった。


「まぁ、俺が言うのもなんだが。俺達のパーティに斥候スカウトはいない。この隊商の移動先であるルヴァンはダンジョンで有名な町だ。俺達はそこを拠点にしているのだが、そろそろダンジョンに本格的に挑もうと考えている。その為にも斥候スカウトが必要なんだ。」


「ルヴァンでも斥候スカウトは得られると思いますが……違いますか?」


 パーティのメンバーを見る限り斥候スカウトを必要とするのは理解できる。しかし、会ったばかりの僕をパーティに勧誘するのは別の話だ。

 何か意図があるのだろうか?


「ルヴァンでは斥候スカウトを探すのは難しいだろう。たとえ見つけても十中八九問題のある奴しかいない。そんな奴をパーティに入れるぐらいなら、素質のある有望な新人を仲間にした方が良いと言う物だ。」


「素質のある有望な新人?」


 素質があるという事は生まれた初めて言われた事だ。僕は少し照れる。


「ギルド長から話は聞いている。あの試験をクリアーしたんだってな。」


 ギルド長の試験?箱や部屋で潜んでいる人の数の事だろうか?あれなら、箱は開けることが出来なかったし、人数は間違えたはずなのだが?

 僕が首をかしげているとガストンがその答えをくれた。


「ギルド長の箱は開けるまで百通りの仕掛けを外すしかない。最初の仕掛けを見つけるのが難しい物だ。それと、部屋に潜んでいたのはギルドでも名うての者。そのほとんどの数が判る上、全員の気配が判るのは腕の良い斥候スカウトしかいない。以上を持って、有望な新人と判断したわけだ。」


 僕が斥候スカウトのスキルをうまく使えるのは魔法の訓練をしたことがあるおかげだ。たしか何かの本にスキルと魔法は全く異なる物と考えられているが、その本質は同じ物、それ故に効果的な訓練も魔法と同じ訓練が有効である。

 何処で読んだ本だっただろうか?


「ガストン。ギルド長の評価を疑うわけではないが、一応イザークのスキルの確認した方が良いのではないか?」


 同じ馬車に乗る魔法使いのサムがガストンに僕のスキルの確認をするように助言した。


「ふむ。それもそうか。でもイザーク君のスキルはルヴァンに着くまでに判るだろう。それまでパーティの勧誘は保留。それ良いかサム?」


「本人の前でそれを言いますか……まぁいいですよ。」


「と言うわけで、イザーク君、君のパーティ入りはルヴァンに着いてからだ。よろしく頼むよ?」


「は、はぁ」


 ガストンと言う男はパーティを率いるリーダーだけあって少々強引だが、彼のパーティならば僕の素性を隠してくれるかもしれない。

次回更新は水曜日の予定です。

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