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幕間 緊急救護者

 王都のはずれにあるデザミー救護院。帝国では聖者としてし知られるヴァン・デザミーによって作られた平民の為の施設だ。

 その為、帝都の中心部ではなく帝都のはずれの小さな森の隣にある。

(森は帝都拡張時に郊外の森をお取り込んだもの)


 デザミー救護院の若いシスターの一人であるマルガリータがドタバタと駆け込んでくる。


「どうしたのです、シスター・マルガリータ。騒がしいですよ。」


 マルガリータをたしなめるのは院長のベルモット、七十近くのシスターである。


「ベルモット院長、大変です!けが人です!ひどい火傷を負った子供が救護院の前で倒れていて!」


「火傷?それは大変ね。すぐに水と布を用意して。私が見ます。」


 ベルモットはマルガリータに案内されて孤児たちが暮らす部屋に出向いた。火傷を負った子供が部屋のベッドに寝かされていた。

 所々焼け焦げた古びたローブや服は質の良い物を着ている。顔に大火傷を負っている。


「……魔法による火傷の痕の様ね。綺麗な布に湿らせ患部を冷やして。ローブや服を脱がした楽にさせた方がいいでしょう。」


 マルガリータのゆっくりとやさしく脱がせる手が不意に止まった。


「ベルモット院長これは……。」


 脱がせた服の下から所々にやけどを負った体が出てきた。形から見て魔法による物だろう。どうやらこの子供は貴族から日常的に虐待を受けていたようだ。


「また貴族でしょうか?顔を焼くなんて……むごいことを。」


 ベルモットは少し考えるとマルガリータ達に話しかけた。


「マルガリータ、そしてほかの人も良いですか?この子供は院内で誤って火傷をしてしまったのです。救護院の前で倒れていたわけではありません。」


 よくある貴族による虐待と勘違いしたベルモットは火傷の原因をいつもの様・・・・・に院内の事故として扱うように皆を言い含めた。

 そしてこの事はアイザックにとって幸運なことになった。その日以来、帝都でのアイザックの足取りは途切れたのだった。

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