僕には魔力が無い
僕の名前は、アイザック・グラハム・オーランド。
クリティアス帝国、五公爵の一つであるオーランド公爵家当主、ディラン・アリオス・オーランドとカトレア・グレイス・オーランドの間に生まれた。
父上と同じ黒髪と母上と同じ青い目、容姿はそれなりに整っている方だと思う。背丈は同年代の者より少し高め、剣術で鍛えられた体は少ししまっている。
父上や母上の両親は僕が生まれた時には既にいなかったと聞く。そして、オーランド家には僕以外の子供はいない。その為、僕が次期当主と言う事になっていた。
けれど、僕には一つ大きな問題があった。
”魔力が無い”
僕にはその魔術回路を作る為の容量が僕には全くなかった。
魔力が無い代わりに僕の精神力は極めて大きい。貴族で魔力が高ければ精神力が低く、精神力が高ければ魔力が低いとされている通りだ。
だが、魔力に比べて精神力の低さは問題にならない。魔力も精神力も魔法を練習することでその量を増やすことが出来る。
魔力に比べて精神力は極めて上がりやすいのだ。
逆に魔力は極めて上がりにくい。生まれ持った魔力で魔術師としての実力が決まると言ってもいいだろう。
貴族のほとんどは大なり小なり魔力を持っている。逆に平民の大部分は魔力が無いもしくは著しく小さい者が多い。その為、帝国では平民には魔道具の使用さえ許可されていなかった。
使用した場合、重罪であり最悪で死刑。軽くても全財産没収の上、奴隷落ち。使わなくても所持さえ許されない。
理由として、魔法の扱いに慣れていない平民は事故を起こす可能性が高い為となっている。
魔力が無い者もしくは著しく小さい者は貴族の家に時々生まれることがある。その場合のほとんどは問題になる事はない。
(平民並みと蔑まれることがあるぐらいだ。)
しかし、オーランド家は公爵家である。貴族の中でも特に身分の高い家の次期当主が魔法を使えないという事実が問題なのだ。
貴族の中でも公爵家となれば国王を支え、有事には国軍を指揮し戦わなくてはならない。軍を指揮する者は”魔法が一定以上使える必要がある”と規定されていた。
戦争となれば魔法の重要度は大きい。その為、”魔法で出来ることが判らなければ兵の運用は出来ない”と考えられていた。
”魔法を一定以上使える必要がある”と言う規定は一定どころか全く魔法を使うことが出来ない僕にとって大きくのしかかる問題だ。
だが、規定とは言え一応の救護策はある。
”何らかの技能が優れていれば、魔法に関しては魔道具を用いてもよい”というものだ。
その為、必要以上に何らかの技能が”極めて”優れていなければならなかった。