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夜の迷宮と待ち受けるモノ

 僕は迷宮に向かう道すがら少し気になったことをマルクスに尋ねる。マルクスの表情から何か思いつめたような必死さを感じるのだ。


「マルクス。月光茸で作る物は何だ?」


「精神回復薬だ。」


 精神回復薬は作成難易度が高い為、錬金術の授業での単位はかなり高い課題だ。マルクスはそこまで高い単位が必要なのだろうか?


「精神回復薬か……マルクス、お前そんなに単位が必要なのか?それに錬金術は僕も取っているけど君は出席していなかったと思うけど?」


「ああ、錬金術の講義は事情があって出ることが出来なかったんだ。だから今期の単位が全く足りなくなった。精神回復薬なら十分な単位になる。」


 マルクスの事情が何であるかは判らないが、単位が足りない事になっているとは驚きだ。貴族院では一期でも単位が足りなければ退学になる。仕方がない、僕も迷宮探索など単位取得を手伝ってもらっている。


「そうか、それなら仕方が無いな。僕も月光茸を確保していれば良かったのだけれど、この間の実習で使ったからな。その分も含めて取りに行くとしよう。」


 僕はそう言ってマルクスと迷宮を進んでいった。


 マルクスの用意した魔物除けの香の威力は素晴らしく、四階層の入り口に来るまで一匹の魔物にも会わなかった。まるで、実力者が迷宮の魔物全てを討伐したかのようだった。


 流石に一匹も魔物に出会わないのは手持ち無沙汰だ。灯りの杖もあり精神力も余っている。この際、魔道具で使う基本的な魔導回路の予習、復習をしよう。


 先ずは基本となる火の魔導回路を描く。魔道具に使う魔導回路は魔法銀ミスリルを使い描かれる。魔法銀ミスリルは精神力を通す為、魔法銀ミスリルで作られた魔導回路は呪文を発動することが出来るのだ。

 よし、形は少し良くないが描くことが出来た。壁や空中に描くのは机の上で描くのと違いちょっとしたコツがいる。

 調子に乗って中レベル魔法の爆炎風ボルカニックブラストの魔導回路を描き上げた。この魔法の魔導回路は流石に大きく、人ぐらいの大きさになった。

 流石にこの魔導回路を再現する魔道具を作るには魔法銀ミスリルが多く必要になる。今の僕にそこまでの費用はない。それにここまで大きい魔道具は固定砲台ぐらいにしか使えない。



 練習をする僕をしり目にマルクスは四階層の最奥めざし、どんどん奥へ進んでゆく。

 それに気づいた僕が慌てて追いかけるいった事を繰り返し何度か道を曲がった末、少し大きめの部屋に出た。


 そこで思いもかけない人物が僕を待ち受けていた。


「カルミア!何故ここに?」


―――――――――――――――――――――


 少し薄暗い一室で私は廊下に在った魔導回路の解析を行っていた。事は帝国の秘密にもつながる事だ私以外の者にこの魔導回路を解析させるわけにはいかない。


「この魔導回路は廊下を歩く対象者を移動させることは判っている。だがその移動先の記述がどこにもない。これはどういうことだ?」


 屋敷の廊下に在った魔導回路は転移門ゲートと同じ効果を持っており所定の位置につなげる物だ。しかも、対象者以外は転移することのできない優れた物なのだ。

 対象者か対象者以外を判断する魔導回路は廊下の天井や壁に張り巡らされていた大がかりなものだ。そこからの情報を元に廊下の魔導回路が転移を発動させる。


「いったいどこに移動先の記述があるのだ?廊下の天井や壁にはなかった。あるのは情報を得るための魔導回路だ。廊下を通る者の装備の情報を事細かに調べている……まてよ?」


 私は、廊下の天井の魔導回路の覚書を広げた。


「そもそもなぜここまで細かく調べている?特定の装備を持っているかどうかなら、比較するための情報がどこかにあるはずだ。それが無いと言う事は情報を得ること自体が目的か!」


 私は情報の元になりそうな物をアイザックが持っているかを考える。


「確か、指輪を持っていたな。魔道具ではないから放置したが、もしやあの指輪に何か秘密が……。不味い、あの無能は冒険者になるつもりだと報告にあった。もしそれが本当なら指輪を確認するのが遅れてしまう。」


 私は即座に決意する。


「仕方がない。早急にあの無能がつけている指輪を確保せねば……。」

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