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こころ

作者: 結城 雅

K視点


【零】


 その日にはもう、私の運命は決定づけられていたのだと思います。

 ただひたすらに、やがて訪れる破滅へと向かう線路を一歩、また一歩と、四百四病の外に存在する病とも言えぬ病を煩いながら、悶々と歩き続けることを。

 私はそれを知らぬまま、そうなることすら夢にも思わず、彼の誘いを受けました。

 恐らく、過去の私が見たら己を絶望し、侮蔑することでしょう。

 それが正しい。

 そうであった頃こそが、正しい私です。

 ですが、今に至り、その正しい私は欠片すら残っていません。

 では、如何にして私が狂っていったのか。

 誰の為でもない、私が自らを省みる為だけに、ここに書き記します。


【壱】



 いつの話だったでしょうか。

 もう何十年も昔にも思える、そんなある日。

 新潟の真宗寺の実家といざこざ持って絶縁した私は、暮らす宛もなく途方に暮れていました。

 そんな時、私の同郷である友人S(以後彼と呼称する)に誘われ、故郷を離れ、遠く東京の伝通院近くの母と娘だけの家に下宿することになりました。

 今まで仏の道のみを進んでいた当時の私にとって、見ず知らずの女子や、親しいがそれほど話せない友とひとつ屋根の下で共生するというのは、とても難しいことに感じていましたが、下宿先の親子はとてもやさしい心の持ち主であり、私の心配はすぐさま泡と消えました。

 中でも、娘(我々はお嬢と呼称しているので、以後はお嬢と呼称する)はとても親切で、私の心身に張り詰めていたものたちを一つ一つ懇切丁寧に解してくれました。

 私はそうした過程で、次第にお嬢というひとりの女子に心惹かれるようになっていきました。

 一方で、友人である彼とは上手くやれているのかはわかりませんでした。正直なところ、馬があっているように思えませんでした。

 あまり精進をしているように思えない彼には一度、夏の旅行で「精神的に向上心のないやつはばかだ。」と言ってやりましたが、彼の心に響いたかはわかりません。

 妙な顰めっ面をしていたような気もしますが、当時は自信を持ってやりこめた私も、今となっては口が裂けても言えぬようになってしまったのだから無様なものです。

 今、過去を追憶して、彼があのとき妙な顰めっ面を浮かばせたのが、それを予期していたからなのではないかと思えてなりません。

 不思議と、彼ならばそんなことがわかっていたのではないかと、今はそう思えてならないのです。


 そうして、紆余曲折を経ながら、私は順風満帆とはいかないものの、ささやかな幸福を味わいながら下宿生活を送っていました。


 ですが、とある十一月のある日から、私の人性は確実に狂い始めました。

 その日は、朝から凍てつくような空気が張り詰めていたことを、今でも覚えています。

 布団から目覚め、あまりの寒さにしばらく動けませんでした。布団にくるまりながら畳を擦り、やっとの思いで火鉢の元までたどり着いたものの、冷たい灰が白く残っているだけで、火種ひとつありません。

 どうしたものかと困り、ひとまず火種を作ろうと悴む手で灰を探しましたが、そも灰がどこにあるかすら私は知りませんでした。声とも言えぬ声でいるとも分からぬ下女を呼ぶにも、砂漠で水を求めるようなわずかな声では届きません。私は苛立ちましたが、やがてどうしようもないと諦め、その日は偶々朝出るまでに時間があったもので、私は再び布団にくるまりました。

 しかし、僅か経って、私が浅い眠りにつくと、かさこそと音がし始めたのです。私は夢現だろうと思いながら、布団に付していましたが、どうにも上手く寝れません。次第にそれはぱちぱちと音を変え、眠るには耳煩わしくなっていきました。

 私は眠るのを諦め、夢現の狭間から意識を戻し、布団から起きあがりました。すると、どうでしょう。つい先程まで凍てつくように寒かったはすなのに、いつの間にか暖かくなっていたのです。

 起きられましたかと、玲瓏とした小声が聞こえ、その方を振り向くと、そこには正座をしながら火鉢を起こすお嬢の姿がありました。

 今日は寒いですね、と窓の外を見ながら、お嬢は白い息を吐き、どこに閉まっていたのかすら忘れていた私の外套を持ってきてくれたのです。そのやさしさに、私の心身は温もりで包まれました。

 私は高まる気持ちを抑えつつ、そうですねと応え、外出の用意をしながら二言三言言葉を交わしたあと、今日は何か予定があるのかとお嬢に問いました。お嬢は稽古の後、夕方まで神保町の方へ小説をと答えると、続けて、御用が終わってからでも一緒に参りますかと笑いながら問うてきました。いつもの悪戯そうな笑い方だったので、私は素っ気なく、気が向いたらと答えました。

 隣の彼はどうやら一足先に出て行ったらしく、私は一人で朝食をとり、出立しようと外へ出て、何となく空を見上げると、鉛色をした分厚い雲が幾層にもなって連なっておりました。私はお嬢に雨は降るかと問うと、お嬢は降るかもしれませんねと答え、蛇の目を一本私に渡してくれました。しかし、その蛇の目を開けようとしましたが、どうにも壊れているらしく、開きませんでした。私が、壊れていると言うと、お嬢は別のを持ってきてくれました。しかし見る限り、彼と出掛けているらしい奥さんが既にそれぞれ一本ずつ持つて行ったようで、残りはなく、その蛇の目が最後の一本でした。

 お嬢はそれに気づき、そう遠くには行かないのでなくても大丈夫でしょうと言いました。私も、そう豪雨にはならないと思っていたので、気を付けてと声をかけ、下宿をあとにしました。


 それからしばらく経ち、いつもの通り授業を終えた私は、構内の窓硝子をふと見ると、鉛色の雲から雨が降り落ちているのを確認しました。やはり雨が降ったかと私はしばらく憂鬱に外を見ていましたが、ふと横の窓の縁かけていた蛇の目を見て、お嬢は大丈夫だろうかと心配になりました。平生ならば案じるままでで終わるだけでありましたが、今日だけは、その想いは強まるだけで、潰えることはありませんでした。

 私は大学を出て、私は本を漁りに行くだけだと自分に言い聞かせ、神保町へと向かいました。

 神保町は明治に入り、本屋が並列する大きな本の街として日本でも有名な街でした。Sや私のような学生は勿論のこと、小説なども豊富にあるこの街には、お嬢のように娯楽を求める者も多く、何時も多くの人でごった返しておりました。

 しかし、流石に雨の神保町には人は少なく、通りに咲く蛇の目も数える程しかありませんでした。

 私は書物を探すついでにお嬢の姿を探しました。しかしいくら探してもお嬢はおりません。もう帰ったかと思い、私は適当に店に入り、書物を漁りました。

 どれだけ時間が経ったでしょうか。二冊ほど立ち読みを終え、足が痺れ始めたあたり。日が傾き始めたのを感じた私は、そろそろ帰ろうかと店を出ようとしました。しかし、私は出られませんでした。帰ろうと体を振り向けた時、隣にお嬢がいたのです。私は驚き、金縛りにあったように体が止まりました。

 お嬢は私が振り向いたことにも気づかず、ただ夢中になって小説を読んでおりました。その横顔に私はしばらく惚けていましたが、やがて、今の自分を俯瞰して見て、これでは変態ではないかと自覚し、なにかこの状態以外の行動を起こさなければなるまいという衝動に駆られましたので、私は取り敢えず面白いですかと声をかけました。お嬢はたいして驚く様子もなく、書物から目を離さないまま、ええと小さく答えました。あまりにも無愛想な返事だったので、私はそうかと答えたあと、しばらく無言でした。この状況を何とか打破すべきと思索した私は、よければ買いますよと提案しました。すると、お嬢は今度は書物から目を離し、それには及びませんと言って、今しがた、読み終えましたからと書物を棚に戻しました。

 貴方もお帰りですかとお嬢が聞いてきたので、私はええと答えると、お嬢は狡賢そうに私もですと笑いました。彼はお嬢の笑みが嫌いだと言っていましたが、私はどうも嫌いにはなれませんでした。

 外は生憎、まだ雨が降っていました。そこで私は今朝のことを思い出し、お嬢は蛇の目を持っていないのではないかと勘ぐり、蛇の目を開き、どうぞと言いましたが、お嬢は予備はありますよと、また悪戯そうに笑っていました。私は困るよりも先に、恥ずかしさが起伏し、そのあと、何か別の感情が襲ってきました。ですが、こんな歳になったにも関わらず、それはあまりに初めての感情だったもので、私はやはり困ってしまいました。

 ですが、常日頃から精進を基盤として生きてきた私はその心を表に出さないよう努力し、なるべく無表情に振る舞いました。

 しかし、その態度が気に入らなかったのか、お嬢は私の顔を一瞥すると、猫や犬のようにふんとそっぽを向いて、泥濘と化した通りに足を踏み入れました。ただ運悪く、お嬢が踏み込んだ先は水溜まりでした。彼女は小さく悲鳴をあげると、後ろ飛びで古本屋の屋根の中に飛び入り、私をじろと睨みました。私は何も悪くないのに、なぜだか悪者にされたようでした。

 初冬の寒さは降る雨を氷柱のような冷たさと重さを持っており、蛇の目を勢いよく叩いては地面に散っていきます。ですが、幸いにも雨の量自体は少なく、私たちの足を止めるようなことにはなりませんでした。

 神保町を抜けたあたりで、不機嫌になったお嬢が、何か買わなくてよかったのですかとぶっきらぼうに聞いてきました。私が、もう読み終えたのでいいと答えると、お嬢はそうですかと無愛想に答えたきり、何も話しては来ませんでした。

 鉛の下、下を向き、何も話さず、まるで葬送の列のように前を歩くわずかた人々が、蛇の目を持ちながら行進する様子を見ながら、私たちはその一部となり、通りを進みました。

 幸いにも、水道橋に差し掛かった辺りで雨はやみました。蛇の目を閉じ、私たちはやはり無言のまま、下宿へと行進を続けました。鉛色の雲に覆われた空のように、私の心はなんとも歯痒くもやもやとした気持ちでいっぱいでした。

 柳町の通りかは脇へ逸れた細い路地に入ると、そこから先の往来はどろどろでした。一、二尺程しかない、道の真ん中に自然と細長く泥がかき分けられた所を、一列で歩かなければなりませんでした。

 お嬢はそこで久方振りに口を開き、私が前に行きましょうと言いました。私が先に行こうと思っていた矢先、そんなことを言われたもので、私は咄嗟に、いや、私が行くと反駁しましたが、お嬢の有無を言わさずずかずかと進んでしまったので、薄志弱行の私はお嬢が切り開いた道を無様に後ろを着いて行くことになりました。

 お嬢はずっと下を見ながら歩いていました。しかし、しばらくして鉛色の雲の切れ間から光が射し込んできた時、お嬢は上を向きました。お嬢を見ながら進んでいた私は、お嬢につられて上を向こうとしました。ですが、それは叶いませんでした。お嬢は上を向いた時、足下の泥濘に足を取られ、私の方へと倒れ込んできたのです。男である私にとって、女ひとり支えるのは容易ではありましたが、些か急でしたもので、私は一歩足を踏みしめました。その先が泥濘でなければ、私も言うことはなかったのですが。

 お嬢は慌てたように立ち直ったのですが、慌てるあまり、また足を泥濘にとられそうになりました。私は今度は手を掴み、泥濘に倒れないようにお嬢を引き寄せました。

 私の胸の中に凭れる形になったお嬢は、何も言いませんでした。ただ、少しだけ震えていました。私は、寒いのかと問いました。しかし返ってくる言葉はありません。このまま問い掛け続けても無駄と思い、私は手を離し、しばらくそのままでいました。

 無言は、苦痛でした。


 やがて、また雲に光が覆われると、お嬢は私から離れ、ありがとうございますと、小さく微笑みました。

 外の空気が寒いはずですが、私は何故だか暖かく感じました。これが、人の温もり、というものなのでしょう。平生、あまり人の温もりを感じたことなどなくわかりませんでしたが、ようやくこの時分になってその言葉の真意を理解できたように思えました。

 私は普段と変わらぬように、気をつけて下さいとだけ返しました。

 お嬢もようやく素直になったようで、はいという潔い返事が返ってきました。

 いつの間にか、私の中の雲は晴れていました。

 私は泥濘から足を抜き出し、お嬢の前を歩きました。そこで私は、彼と出会ったのです。

 彼は下を向いていましたが、私の目の前に来るとさすがに気がついたようで、顔を見上げ、驚いたような顔をしていました。

 彼は私に、どこへ行ったのかと聞きました。いつもの通り質問に答えるのが煩わしく思った私は、ちょっとそこまでと言葉を濁しました。彼はそれ以上何も聞こうとはせず、私と彼は細い道の上で体を替わせました。後ろでお嬢ともすれ違ったようですが、彼はその時、泥濘に足を踏み入れていました。

 私たちは下宿へと帰り、各々で汚れた身体を洗いました。彼はどこへ何をしに行ったのか分かりませんでしたが、すぐに帰ってきました。

 彼は帰ると、お嬢さんと一緒に出たのかと聞いてきました。私はまた煩わしく思いながら、そうではないと答えました。彼は続けざまに、ではどうして一緒にいるのだと聞いてきまたので、私はとうとう面倒臭くなって、真砂町で偶然出会ったから連れたってきたのだと、嘘の説明をしました。これ以上追及されるのが嫌だったのです。彼は思った通り、それ以上追及はしてきませんでした。

 彼は食事時にもお嬢に追及していましたが、お嬢はいつもの通り笑うだけで、何も答えようとはしませんでした。彼にはそれがせせら笑い見えるようですが、私にはやはり、ただの意地の悪い普通の笑いにしか見えませんでした。

 お嬢は一頻り彼をあしらったあと、私を一瞥し、またあの笑いを送ってきました。まるで、今日のことは秘密ねとでも言わんばかりの表情です。

 私はやはり、この笑いが嫌いになれそうにありませんでした。


 そのとき私は、彼がどんなことを思い、どんなことをしようとしていたのかなんて考えようともしませんでした。


 それが、私の大きな過ちでした。


【弐】


 そのうち、年が暮れて春になりました。

 ある日奥さんからかるたをやるから誰か友達を連れて来ないかと言われましたが、今来、私には友達なぞという殊勝な者はおりませんでした。唯一、彼のみが友人と呼べるほどの間柄にいましたが、連れて来る来ないも何も、彼は私よりずっと前からここに住み着いているのです。態々彼の名を上げる必要もないと思った私は、奥さんに友達なぞ一人もないと答えました。奥さんは大層驚かれ、今度は彼に同じ質問を行いました。彼はあいもわかり易くかるたをやりたくないという想いが身体から滲み出ており、奥さんが問うてもいい加減な生返事ばかりであしらっていました。

 やがて奥さんは諦め、私と彼は各々の部屋で書物を貪っておりましたが、晩になってとうとうお嬢がやって来て、私たちを引っ張り出してしまいました。

 夜の帳が落ちる頃。客も誰も来ない中で行う小人数でのかるたは、予想以上に静謐でした。その上、私はこういう遊戯には疎く、流れる詠と跳ね返るかるた遠巻きに眺めているだけしかできませんでした。

 詠と畳を叩く音が夜に流れる様は、私にとっては自らだけがまるで別の世界に隔離されているようにも思われ、時の経つ速度が何倍にも何十倍にも早く感じられました。

 心ここに在らずといった様相でただ座っていただけの私を見かねたのでしょう。彼は詠を止め、私にいったい百人一首の歌を知っているのかと尋ねました。私は正直に、よく知らないと答えました。

 すると、何の魂胆か、次の首からお嬢が目に見えて私の加勢をし始めました。私はまた、今度は自ら自我を隔離しようと思いましたが、お嬢はそんな私を許さなかったようで、私が上の空になった瞬間に、何度もあぐらをかいていた私の脚を叩いては、正座をして、死に物狂いで取りなさいと叱りました。ええ、あれはお叱りでした。私は眠気の醒めぬ朝、上から冷水をぶちまけられた気分になりましたが、こう何度も言われるのも面倒なので致し方なく正座をし、お嬢と組になって彼と相対しました。

 お嬢はいくつかの上の句を教えてくれましたが、結局知らぬものは知らず、知ってるものには叶わず、私はついぞ一枚も取れぬまま、その夜は終わったのでした。

 彼は得意げに部屋へと帰り、奥さんは晩の洗い物に追われて台所へと籠り、私は顰めっ面したお嬢と共に茶の間に残されました。

 お嬢はまた不機嫌そうな顔でぶつぶつと何かを言っていましたが、私には何も聞こえぬもので、私は何も考えず悠々と部屋へ戻ろうとしました。しかし、お嬢はそれを止めると、特訓ですといい、強引に私を畳の上に座らせました。

 私は面倒極まりありませんでしたが、お嬢の有無を言わさぬ態度に、薄志弱行の私は従わざる負えませんでした。

 お嬢の教え方は至って単純でした。詠を覚えさせるわけでも、取り方を教えるでもなく、ただ、取り続けることでした。お嬢はお嬢自身が自らで読み、下の句を読み終えた所で自らも取りに行くという大きな足枷をつけた取り合いでしたが、結果は完敗でした。私はやはり一枚も取れずに負けたのです。

 お嬢は何故取らないのかと聞いてきましたが、そも初めてやる遊戯で経験者に勝つなど無理難題なのです。私は、やはりやる必要はないと帰ろうとしましたが、お嬢は日本人の教養ですと意地を張り、私を押さえ付け続けました。そうして日が明けるほどまでやったでしょうか。奥さんには叱られましたが、お嬢は叱られる度意固地になって私を鍛えていき、私もそれに応えようと最低限努力しました。やがて、完敗続きで一枚も取れなかった私も、次第に完敗から惨敗、惜敗と徐々に取れるようになり、黎明が東の空から顔を出す頃には、足枷付きとはいえ、勝利を掴むに至りました。お嬢はそのわずかな成長を自分の事のように喜び、そしていままでの疲れの反動か、そのまま倒れて寝てしまいました。

 私は何をくだらないことで徹夜をしたのかと後悔の念を覚えましたが、愚かなことであってもここまで意志強固の信念を持つお嬢に、少しばかり尊敬と羨望を抱いたのもまた事実でした。

 私はお嬢をお嬢の部屋に運んだ後、自らの部屋に戻り、床に就きました。ですが、寝られようはずもないのでした。


【參】


 それから二、三日が経った頃、奥さんとお嬢は朝から市ヶ谷の親類の所へ行くと言ってうちを出ていきました。私と彼はまだ学校の始まらない頃でしたから、居留守同様あとに残っていました。

 私は書物を読もうと机を前にしましたが、数項ほど読み、どうも集中ができないことをさとりました。文字を読もうとも、本の世界に入り込めない。論の内容が頭に入って来ない。やけに首の位置や肩のコリが気になるなど。何かと理由をつけては、書物を読む手を離してしまうのです。そして時計を気にしては、空を見上げ、市ヶ谷のどこにいるとも知れぬ二人の安否を気にかけることばかりしてしまいました。

 ここまで節操のないことは生まれてこの方、初めてのことでありました。

 理由は私でもわかるほど単純でした。

 お嬢です。あのお嬢が、私の心を誑かしたのです。

 当たり前のように接して、当たり前のように弄り、当たり前のように笑う。そんな当たり前の日々に酔っていた私は、実はどうやらどうしようもない美酒によっていただけであって、彼女が居なくなった途端、その酔いはきれいさっぱり覚めてしまいました。

 そうして気が付くのです。お嬢という存在が、私の中でどれほど大きなものになっていたのかを。

 お嬢が私の心に植えた種は、今まですぐ近くにいたお嬢という強い光に隠れて見えていませんでしたが、お嬢が姿を消して直ぐにその全容を表しました。それは、巨大な樹木と化して、私の心をいけしゃあしゃあと貪っていたのです。

 私はしばらくの間、無言で己の内側に秘められた感情と闘い、苦しむ羽目になりました。

 周りの世界は同じように沈黙の帳が落ちていました。彼のいる隣の部屋からも生活の音は一切聞こえてこず、またいつもの通り書物でも読んでいるのだろうと勘繰っていました。しかし、別段珍しくもない沈黙も、今日だけは何故かとても気に障って仕方がありませんでした。

 十時頃になって、私は自分の心とその沈黙に耐えかねて、ついに彼の仕切りの襖を開けて、彼と顔を見合わせました。私は立ったまま、まず、彼に何を考えているのかと問いました。するとどうでしょう。彼は暫く思索に耽けた様子を浮かべた挙句、私の顔をじっと見つめたまままた無言でいました。私はまた、その視線と無言の圧力に耐えかねて、彼の火鉢の前に座りました。彼は私の前に火鉢を押しやると、何も言わず、やはりただ無言でいました。

 私は何を話そうか迷いました。思い切って心の内を開けようかとも考えましたが、あまりに急すぎるのではないかとも思い、迷った挙句の果てに、お嬢と奥さんは市ヶ谷のどこに行ったのかと聞くことにしました。彼は、大方叔母さんの所だろうと答えました。私は叔母さんをよく知らなかったもので、続けざま、彼に叔母さんは何だと聞きました。彼の答えは、軍人の細君だと言うのです。しかし、女の年始は大抵十五日過ぎたあたりからで、一般的に考えても、親戚の家に行くには早すぎた気がしました。しかし、彼は何故だか知らないと曖昧に答えるばかりで、明確な回答はありませんでした。私は、その玉虫色の返事に苛立ちを覚え、あれよあれよと、まるで酒が入ったかのように喋りました。

 私も、落ち着いて考えれば彼が急に言いよられて困っていると認識できたはずなのに、その時は何故だか自制が効かなかったのです。

 気がつけば、彼の反応など知らぬまま、私はひとりで勝手に喋り続けていました。奥さんのこと、お嬢のこと、自分でも考えたことの無いようなことが滝の如く言葉となって口から溢れ出てくるのです。自制をしようともやめられず、せめて落ち着こうと思っても落ち着けず。私はそんな、制御不能な自分に恐怖すら感じました。

 ですが、そんな私の暴走を止めてくれたのは、他ならぬ彼でした。

 彼は、私の話を落ち着いた様子で聞くと、やがてゆっくりと口を開き、なぜ今日に限ってそんなことばかりを言うのかと尋ねてきました。

 私は閉口しました。

 その答えが、私にはすぐ浮かびました。

 ですが、その言葉を放つのに、私は躊躇せざるおえませんでした。

 ここまで言っておきながら、私は肝心なことを彼に告げるのを心の奥底では怖がっていたのです。

 私は考えました。

 言わんとしていた言葉を、何度も、何度も、頭の中で咀嚼し、考えました。

 そして、自覚したのです。

 私は、お嬢に恋をしているのだと。

 私は震える喉元から湧き出る声を、何とか精一杯吸った肺の空気を存分に使って、外へと押し出しました。その言葉の重みは、誰よりも、私が一番知っているものだと自負してました。

 しかし、私は考えていなかったのです。

 否、考える余裕がなかったのです。

 私の言葉の重みは、何も私だけ背負われるものではないのだと。

 そうとも知らぬ私は、ただぽつりぽつりと、自信なく、ゆっくりと自らの想いを形にしていきました。自分でも、何を言っていたかは覚えていません。ただ、支離滅裂だった想いを、言葉にすることで一つにまとめ上げていったのだろうと、後々の感情を思えば理解出来ました。

 私は彼の顔を見ませんでした。怖いのではなく、ただ、見る余裕がなかったのです。

 きっと、少しでも顔を上げる余裕があったのならば、私は今でもこの世に生きていられたのかもしれません。ですが、今となってはもう遅いのです。

 やがて昼飯になり、私たちは向かい合って座ることになりました。

 飯の味は何もしませんでした。ただ全てを出し切り、無気力になってしまった私には、食事が栄養を補給するという作業にしかならなかったのです。結局、私と彼はそのあと一言も会話を交わすことなく、めいめいの室に引き取ったぎり顔を合わせませんでした。

 私は一段落がついて、後悔の念にかられることになりました。何てことを言ってしまったのだろうかとひとり悶々とせざるを得なかったのです。私は彼の様子が気になりました。しかし、隣の室からは、やはり何も聞こえてきませんでした。

 そして私は、全てを過去のものとする為にも、潔く眠ることにしたのです。


【肆】


 ある日私は学校の図書館で外国雑誌を読む彼を見つけました。普段であれば、私はそのまま素通りすることが多いのですが、あの日からというもの、私は彼と少なからず話したいという欲求を持っていました。話すことの、心の内を吐露することの気楽さを知った私には、愚かにも他人を考える余裕などありませんでした。

 私は広い机を跨いで彼の向かい側に座り、他の人の邪魔にならないように上半身を机の上に折り曲げるようにして彼に顔を近づけて、彼に勉強かと話しかけました。彼はどうやら調べものがあるらしいのです。その時点で私は引き下がるべきだったのですが、思いだけが先へ先へと走っていった、自らの利欲だけを優先してしまいました。私が散歩でもしないかと提案すると、彼は少し待っていればしてもいいと答えたので私は待つことにしました。しかし、彼は一分も経たぬうちに立ち上がったのです。私はもういいのかと尋ねましたが、彼は少し怒ったふうに、もういいのだと答えて先に図書館を出ていってしまいました。

 散歩へと誘ったとはいえ、特に行くあてもなかったもので、私たちは竜岡町から池の端へ出て、上野の公園の中へ入りました。

 上野の公園は広大な公園でした。ここならば暫くは行く宛も考えずに歩き続けられるだろうと思い、私は堪えきれずに早速、この前のことについて彼に話題を振りました。

 けれど、このことについて話そうと決めていた私も、なぜ彼に話したいのかを自覚していなかった為、私はついぞ、落ちのない終わりのない話を始めてしまったのです。収拾に困った私は、強制的に、漠然と、どう思うと彼に問いかけました。つまり、彼に何か意見を求めたのです。それは恐らく、私の言葉に無言を貫く彼の本心を、私は心のどこかで聞きたがったのです。そして、お嬢に対して未だ迷っている私を、律して欲しかったのでした。

 彼はまず、迷うという言葉の真意を聞いてきました。精進のみで生きてきた私はこの初めての感情に対し、自らも戸惑っているのだと。そして、進んでいいか退いていいかすらも分からず、迷っているのだと説明しました。

 すると彼は続けざまに、退こうと思えば退けるのかと問うてきました。

 私は、答えに窮しました。

 そうです。思えば、とてもおかしな話だったのです。進んでいいか退いていいかと聞いている筈なのに、退けと言われて、私は退けるのでしょうか。いいえ、退けるとは到底思えません。それは、私自身が一番身にしみてわかっている事だったのです。

 結局の所、私は進むべきだと言って欲しいだけなのだと、そこでやっと自覚して、いかにおこがましい人間であるのだと自認しました。その時の私は、酷く慚愧に堪えない気分でした。きっと、鬼が見ても青ざめるほど、私は苦々しい顔をしていたことでしょう。

 彼はそんな私を見て、急に厳粛な改まった態度を示しだしました。そして、言ったのです。

「精神的に向上心のない者はばかだ。」と。

 それは、二人で房州を旅行している際に、私が彼に向かって使った言葉でした。彼は私が使った通りを、私と同じような口調で、再び私に投げ返してきたのです。

 その時私は初めて、下らぬ夢に浸っていたのだと、気が付いたのでした。

「精神的に向上心のない者は、ばかだ。」

 彼は二度、同じ言葉を繰り返しました。

 私は自ら言い放ったはずのその言葉に打ちひしがれました。まさか、その言葉が返ってくるとは思いもよらなかったのです。因果応報とはまさにこのことです。

「ばかだ。」知らず知らずのうちに、私は勝手にそんなことを口にしていました。「僕はばかだ。」

 私の足は止まっていました。思えば、彼の顔を見ることもまた、拒絶していました。

 今度は、そう。彼のことが、あまりに恐ろしく感じたから。

 私は、彼を唯一自分の心の感情を吐露できる人間だと、ずっと勘違いしていたのです。


 私は彼と歩きながら、ただ自分のことを考えていました。

 私は、単純な阿呆でした。目の前に現れた未知の感情に対し、子どものように心躍らせ、その有り余った興奮を誰かと共有しなければいけないという欲の一心で、周りも見ず、ただ彼に喚き散らした結果、彼によって宥められ、いとも簡単に砕け散ったのです。

 気づけば、私は彼の名前を呼んでいました。

 彼は目の前で止まり、私も続いて止まりました。私には、彼が、得体の知れぬ怪物か何かに思えてなりませんでした。だから私は、懇願しました。もうその話はやめようと。やめて欲しいと。しかし、彼は真実を突きつけてきました。

「やめてくれって、僕が言い出したことじゃない、もともと君の方から持ち出した話じゃないか。しかし君がやめたければ、やめてもいいが、ただ口の先でやめたって仕方があるまい。君の心でそれをやめるだけの覚悟がなければ。いったい君は君の平生の主張をどうするつもりなのか。」

 私は口を噤みました。

 真実とは、現実とは、ありとあらゆる可能性と状況の中で、最も残酷で残忍なものである、と。ふと、どこかの書物の一文を思い出しました。

 そう、彼の言葉は真実でした。紛れもなく真実であって、どうにしようもない現実なのです。だからこそ、その言葉に含まれた、彼の唯一の問いかけ――覚悟という言葉が、私の胸に突っかかったのです。

「覚悟、――覚悟ならないこともない。」だから私は、無意識に私はそんなことを口にしていました。

 確かに、私には思慮分別がありませんでした。ついでに言うと、知識も、経験も、行動力すらも持ち合わせていませんでした。

 ですが、何も丸腰でこんな所まで来るほど、私も愚かではありませんでした。覚悟ぐらいの持ち合わせは、幾らでもあったのです。

 それが、私にとっての最後の頼るべき命綱でした。

 ですが、その言葉がどれだけ余計だったか。後私はになって気が付くのです。


 それからというもの、家に帰ってお嬢と会っても、打ちひしがれ、慚愧と煩悶と懊悩が蔓延る私の心中に余裕などは一片たりともなく、飯を片付け、そそくさと自らの室に閉じこもっては、床に就くことしかでませんでした。

 しかし、それすらも私には許されませんでした。追い討ちをかけるように、彼が私の部屋に上がり込んで世間話を始めてきたのです。私は嫌々付き合いました。対して、彼は心做しか嬉しそうに見えました。

 彼は満足したのか、程なくして室へ戻りました。私は今度こそ床に就こうかと思いましたが、最早その気すら失せてしまいました。

 夜が更け、私は灯火を見ながら自らの行動を省みていました。私が彼に対してどれだけ自分勝手気ままに振る舞ったのか、思い返し、恥ずかしさと後悔、そして今の私に対する侮蔑混じりの失望が起伏し、寝られようもありませんでした。私は、その話はしたくはないが、せめて最後に彼には謝ろうと思い、襖を二尺ほど開けました。

 真っ暗闇の中を灯火が照らし、布団に横たわる彼の名を私は呼びました。むこうを向いていた彼が寝ているか寝ていないかもわからなかったので、私はもう寝たのかと問いかけると、彼は何か用かと答えました。

 私は今すぐにでも謝ろうかと思いましたが、何故かその話題に触れることを恐れ、誤魔化すことしかできませんでした。最後には便所の帰りついでだという嘘までついたのです。

 さすがの私も、これ以上彼の睡眠を邪魔するのは良くないと感じられたようで、話を広げることなく私は室に戻りました。

 灯火を消し、部屋が暗闇になってすぐ、私は睡魔に襲われました。

 翌朝、飯を食うときになって、彼は昨晩の名を呼んだかと問うてきました。恐らくは、夢と現の区別がつかなかったのでしょう。そのまま夢にしてしまっても良かったのですが、こういう時に限って何故か私は嘘をつけないようで、確かに呼んだと答えました。

 当然、彼は何故と尋ねてきました。そしてまた当然、謝ろうとしたのだなどと言えるはずもなく、私は玉虫色の返事をするしかありませんでした。

 そのあとも、私は何度か彼に話しかけました。熟睡はできているのかと、最近勉学はどうかと。なるべく、あの話にならないように、そのことを彼が忘れてくれることを願うかのように。

 けれど、彼も執拗にその話題を問うてきたのです。私はやはり玉虫色の返事をして、その話はもうやめようと再三言いました。後でじっくりと思い直すと、やはりそれも自分勝手な主張なのだと気が付きました。

 結局、私も彼も、ずっと歯痒い気持ちのままその日を過ごすことになりました。

 私はついぞ、彼に謝ることは出来なかったのです。


【伍】


 私が色々なことを考えていたように、彼も色々と思う節があったのでしょう。彼はあれから一週間が経った頃、病気に臥すことになりました。私は嫌な予感がしました。そして、嫌な予感というのは、大抵当たるのが現実なのです。

 私が下宿に帰ったとき、彼はいませんでした。いたのは奥さんと、お嬢だけでした。私は挨拶も早々に、病床に臥せているはずの彼の居場所を聞きました。すると、奥さんは散歩にでも行ったのではと答えました。彼は病気ではないのかと聞きますと、奥さんは悪戯な笑みを浮かべ、何故か顔を心做しか赤面させたお嬢を一瞥したあと、「ええ病気です、病気です。ですが一番の治療法はこれなんです」と訳の分からないことを言い始めました。

 私は奥さんまで病気にでもやられたのかと思いましたが、考えても仕方がないので室に戻って書見をしました。

 暫くして、彼が帰ってきました。私は今帰ったとは言わず、「病気はもういいのか、医者へでも行ったのか。」と聞きました。彼は一瞬震えたように見えましたが、直ぐにいつものような澄まし顔で、大丈夫ですと答えました。私は彼らの何かおかしい様子に訝しげました。

 夕飯の時、お嬢はみんなと同じ食卓に並びませんでした。奥さんが催促すると、次の室でただ今と答えるだけでした。私はやはり訝しげましたので、奥さんにどうかしたのかと尋ねました。しかし、奥さんからはおおかたきまりが悪いのだろうと言って彼の顔を見るだけで、明確な返事は教えてはくれませんでした。私はなお訝しげ、なんできまきが悪いのかと追及しました。しかし、やはり奥さんは明確に返事をせず、微笑を浮かべながら彼の方を見ていました。

 私は、訝しげました。

 室に戻ってもまだ、訝しげました。

 そして、考えました。

 奥さんと、お嬢と、彼の反応。それから今日までに起きたことを全て総じて、じっくりと、ひとつの結論に至るまで考え込み、やがて私はある恐れていた結論に達しました。

 日を追う事にその結論は確信へと変わり、そして奥さんの口から告げられ、事実へと昇華しました。

 彼が、お嬢と結婚します、と。

 別段、驚くことはありませんでした。

 ひとつ驚いたとしたら、自分があまりにも何も思わなかったことに自分でも驚いていました。

 しかし、急事が起こった際、人というのは意外にも、慌てふためいたりせず、これからどうしようという思考の方が先に出るものです。この場合の私も、どうやらそれに当てはまったようで、私は彼にどんな顔をしてどんな言葉を送るべきか、まず迷ったのでした。

 奥さんは無愛想にそうですかと答えただけの私に、「あなたも喜んでください。」と言いました。私は微笑をこぼし、「おめでとうございます。」と答えました。奥さんはその微笑を喜びと捉えたようですが、実際は違います。それは、無様な私に対する嘲笑にも似た類の何かでした。

 私は考えました。

 どんな台詞であれば、不自然なく奥さんに彼らの結婚に対する喜びを表現できるかを。それでいて、なるべく長く彼らのことを考えずに済む方法を。

 そして、私は言いました。

「何かお祝いを上げたいが、私は金がないから上げることができません。」と。

 それは、お祝いする意思と同時に、〝彼らに〟どんな贈り物を買おうかという思考と、その贈り物を買うための時間を費やしたくないという影の意思を持った言葉でした。

 私は、逃げ出す道を選んだのです。

 なるべく平生を保ち、過去の自分を思い出しながら、いつもの通り振る舞うことを心がけました。その効果は順調だったようで、彼にも、奥さんやお嬢にも、訝しげられることは何一つありませんでした。

 だからこそ、すぐに限界がきたのです。

 このまま進んでも何も無いのだと、人生に諦めの決心が着いたのです。


 私を貶めていたのは、どうしようもないこの虚栄心なのかもしれません。

 今、これを書き記している時点で、私は何かに対して闘ったのだという意志を見せつけてやりたいのかもしれません。

 あるいは本当はこうだったんだと、誰かに許しを乞うているのかもしれません。

 私がこの世界にいたのだという証を遺そうとしたのかもしれません。

 誰でもない、この文を見ている誰かに、何かを伝えたかったのかもしれません。

 今の私にも、それは解りません。

 これは、私の反省文です。

 死ぬ前に、私の業を書き記しておこうという、ただそれだけのことなのですから。


 理想と現実の乖離に狂った一人の男の無様な物語として。



【陸】

 私も後を追います。

 最も、私の行先は地獄でしょうけれど。


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