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四話

 この世界はダンジョンからの恩恵で成り立っている。

 ダンジョン内から出てくる魔物を倒すと、魔石と魔鉄のどちらかが手に入る。

 この二つはここでの生活と密接に繋がっており、例えば建物の骨格に魔鉄を使い魔石を消費することで建物中の空間を外見の倍以上に広げたり温度を調節したりとかなり便利だ。

 もちろん都市の作りにも活用され、その二つなくして都市の機能は成り立たず、それらを採取出来る唯一の組織がギルドだ。

 ギルドに登録すると実力や人格を審査しA・B・C・D・Eのランクを与えられ、Aが最高でEが最低になる。

 因みに自分が志願したFランクは、主に刑罰の代わりに働いている犯罪者やギルドでも身元が保証できない様な奴用の普通は与えられないランクだ。

 そんな人でも登録する制度があるあたり、異世界でも人手不足は深刻らしい。

 おかげで素顔を晒さなくても登録出来そうな可能性があると思いギルドに来たのだが、ここまで警戒されるとは予想外だ。


「お待たせ、君がFランク希望の物好きやね? ウチはここ東都市南地区を仕切らせてもらっているギルドマスターで隣のは護衛兼旦那さんや」


「……」


 言われた通り、案内された部屋で待っていると二人の亜人が入ってきた。

 関西チックに話しかけてきた方は女のエルフ、黙っている方が狼を筋肉隆々な人型にした男のワーウルフだ。

 しかし地区を仕切っている人が来るなんて、かなり重大な事になっているのだろうか。


「初めまして、アサシンです」


「ご親切にどうも、暗殺者さん」


「……」


 二人からの圧が凄い、受付での反応といい山賊に嘘情報でもつかまされたか?

 異世界に来て早々、牢屋送りは勘弁してほしいのだが。


「どうしたん、そないに緊張して? これから色々聞きたいことがあるんやから、そんなんやと持たんよ」


 無言のワーウルフも怖いが、それ以上にエルフがヤバい。

 最初はよく喋るし優しい印象があったが、なにやら思惑をヒシヒシと感じる。

 ってか完全に圧迫面接だコレ!


「すみません、余りにも物々しい雰囲気だったもので」


「いやー、最近他の地区でFランクで登録した人間が他の都市で指名手配されとった、なんて事があって神経質になっとるんよ。上からのノルマはキツイわ人手不足だわで、実力があるのなら雇いたくなるのも分からんでもないんやけど……。」


 地区を管理してても中間管理職には代わりないか、心中お察しします。


「お喋りが過ぎるぞ」


「ああ、そやね。それじゃあまず、その物騒な名前と顔を出せへん理由教えてくれる?」


 ちゃんと面接をしてくれるという事は、雇ってもらえる可能性があるという事ここは真剣に挑みましょう。


「はい、名前は親から貰ったもので、顔は臆病なもので素顔になる勇気がないもので」


 名前は本名がアサツマ・シンイチなのでそこからアサシン、顔に関しては嘘ではないのでセーフ。

 真剣と言ったが、ふざけた返事になってしまったが大丈夫だろうか?


「苦手は克服せなあかんけど、親からの贈り物を大切にする事はええことや」


「……疑ったりしないのですか?」


 自分で言っといてなんだが、いくらなんでもチョロくないですか。


「なら問い詰めたら本当の事を言ってくれるんか?」


 前言撤回、このエルフはこっちのはるか先の事を考えてるわ。

 さすが長寿の代名詞エルフ、年の功には敵わないか。


「はい、面接はここまで。次は実技や、移動しよか」


 エルフが何考えているか、全く分からない。

 今は流れに任せるしかないので、二人に黙ってついていく。


「……凄い」


 案内された部屋には草原と青空が広がっていた。

 話に聞いていたが、実際に魔法を目にすると興奮するねぇ。

 こんな事がホイホイ出来るなら、そら資源が大量に欲しくなるわ。


「ルールは簡単、この模擬戦で暗殺者さんに相応の実力があると分かれば無事登録完了や。」


 あら本当に簡単、戦闘は自分の十八番だ。

 この世界の常識は仕入れているので、この二人に異常な能力を持っているなどと思われる事なく戦闘するくらい容易い。


「それで、何と戦えば!?」


 こっちの話の途中なのにワーウルフが突然襲い掛かって来るが、レーダーのおかげで距離を取ることができた。


「相手は俺だ」


「開始のゴングにしては物騒過ぎません?」


「ほら、実戦にレフリーはおらんやろ?」


「そりゃそうだ」


 成程、二人の考えが読めてきた。

 おかしいと思ったんだ、たった一人の為にかなり上の立場の人が出てくるなんて。

 だがワーウルフの方はやる気満々なので、今は推理よりこの戦闘を終わらせないと。

 更に距離を取りこの世界でも違和感のない武器、滑車の付いた弓矢コンパクトボウを取り出す。

 この世界での武器の取り出しは、防具の隙間やポケットの空間を魔法で広げそこに仕舞うのが主流なのはリサーチ済み。

 銃弾に比べ矢ならまだワーウルフも射線の見極めも避けるのも容易いだろう、という考えたからだ。

 実戦に近いとはいえ、模擬戦で何かあったら後味悪いし。

 距離が開いているうちに矢を放つ、当たっても映画みたいに爆発はしないから安心してくれ。


「甘いぞ!」


「うそぉ!?」


 ワーウルフは槍を取り出すと、槍を振り回し壁を作り矢を弾きながら突き進んでくる。

 こりゃ相手を狙っても関係無いよね、ちくしょう銃にしとけば良かった。


「名前の通り、真正面からの戦闘は苦手な様だな暗殺者!」


 せっかくあった距離が縮まっていく。

 この状況なら伝家の宝刀引き撃ちをするんだろうが、ここでは実力を見せなければならないので却下。

 次の手をどうしようか考えるが、もう少しで槍が当たりそうな距離にまで近づいていた。

 このまま負けるのも嫌なので、こうなりゃヤケだ。

 ワーウルフの顔面に向け、コンパクトボウを相手に放り投げる。


「勝負を捨てたか!」


 ワーウルフはコンパクトボウを弾き、槍を俺に当てるため大きく振りかぶる。

 勝利を確信したこの一瞬のスキを待っていた!


「っな!」


 自分からワーウルフに突っ込み、槍の柄を脇腹で受け止める。

 かなりの力を込めたのか鈍い音が響くがこの体は機械だ、痛覚もないし鉄の塊はそう簡単に吹き飛ばされずまだまだ動ける。


「せい!」


 槍を脇腹と腕で挟み固定し、もう片方の腕で槍を叩き折る。

 そのまま叩き折った槍をワーウルフの喉元に突き付け、宣言する。


「これで登録してもらえるかな?」


「……無事登録完了や」


 何かめっちゃ渋ってるけど勝ちは勝ちだ、でも次からは銃使おっと。


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