一話
人生山あり谷ありというが、異世界に来たばかりなのにもう谷にきたようだ。
問題は、水面に写っている自分の顔だ。
元々、自分の容姿は下から数えた方が早いレベルだったが、今の顔はとても武骨で艶消しメタル色だ。
鼻無し、口無し、耳無し、目の変わりにレンズが一個、気合いを入れると赤く光る機能付き。
「こりゃ、冷静な訳だわ」
そもそも冷や汗を出す皮膚も、頭から引く血も、激しい鼓動を刻む心臓も無く、不安を煽る要素が一切無いのだ。
そのおかけで、今の状況を冷静に整理出来るのは中々良い皮肉だが。
今の顔には見覚えがあった、自分がゲーム内で使っていたキャラクターのモノだ。
ゲーム内では、人間、ロボット、エイリアンの外見が選べ、自分はロボットの外見を選択しており、キャラメイクした外見が写っていた。
今の今までこの顔に気が付かなかったのは、全身に装備しているアーマーをどう外すか試行錯誤していて、ようやく頭部全体を包むフルフェイスタイプのアーマーを外せたからだ。
「エイリアンタイプよりはマシだろうけど、畜生!」
昔の自分の行動に後悔し地面を殴ると轟音と振動が響き、小石を握ると簡単に砕けた。
「パワーは設定どうりなんだね!」
ロボットは肩書に常人の数十倍の身体能力を持つ高性能殺戮マシーンとあったが、偽り無しなようだ。
「次は全力で走ったり、ジャンプでもするかな!」
こんな時でも検証は忘れない、そもそもそれ以外にすることが無いのもあるが。
さっそく移動するためにアーマーを再装着する、やり方は簡単で装備したい武具をイメージするだけで、ヒーローの変身のように一瞬で完了する。
自分のお気に入りであるイベント限定で配布された忍者風マント付き装備、顔は完全に隠れておりメカニックな外見を完全ガード。
これなら話や意思疎通が出来る相手が来ても、素顔よりはマシだろう。
「ヒャッハー!」
人間離れした体は伊達ではなく、ゲームと同じく速度は車並みで走れ耐久力もかなりの長時間を走れている。
一つ問題があるとすれば、集中力の低下や疲労感を全く感じず違和感があることだろう。
まあ、メリットといえばメリットなので深くは考えないことにしよう、解決方法なんてものは思いつかないし。
「あれ?」
しばらく走っているとレーダーに二種類の反応があり、一つは敵対を意味する赤が複数もう一つは味方ではないNPCを意味する白が二つ。
しかも白の反応は赤に囲まれており、ゲームの中での経験ではあるが深刻な状況という事は間違いないようだ。
「仲良くかごめかごめをしているわけ無いよね」
ゴブリンの死体を見たせいか、正直戦闘を避けたい気分だ。
一体の死体でこれだけ気が滅入るのだ、もしそれが複数なんて想像したくもない。
しかし、人命が掛かっているかもしれないのだ、今は目の前の事に集中しよう。
レーダーに反応があった場所は周りに障害物が少ない平原で、なるべくバレないように地に伏せ倍率が高い狙撃銃でまずは観察をする。
「よりにもよって人間かよ……」
敵は剣や槍を持った見た目山賊といった風貌の男たち、少数だが杖を持っている者がいる。
前衛の戦士と後衛の魔法使い、俗にいう中世ファンタジーという感じか。
そして護衛対象予定の二人の風貌は。
「ケモミミキター!」
子供とケモミミ&メイド服(ロングスカートしっぽ付き)、これは予定では無くて確定だね。