プロローグ
目の前の小柄なエネミー、よくファンタジー物で見るゴブリンに似た外見の生き物の頭部に拳銃を向け数発を放つ。
「あれ?」
頭部を狙ったはずの銃弾はゴブリンから外れ、発砲でこちらに気が付いたゴブリンがナイフを振りかざしながら向かって来る。
一呼吸置き、より的の大きい胴体に発砲。
「―――!」
悲鳴か断末魔かも判断できない声を上げ、弾丸が命中した胴体が爆発し同時に血と肉が飛び散る。
おお、グロイグロイ。
スキル『炸裂』の影響で弾丸は命中と同時に爆発し、相手に追加ダメージを与えるのだが違和感がある。
「こんなエフェクトあったっけ?」
ゴブリンから飛び散った血と肉、元々こんな感じのエフェクトはあったがここまでリアルではなかったはずだ。
「変更内容を確認しとけば良かったな…」
ここは現実ではない、ゲームの中だ。
つい先ほどメンテナンスが終わり、大型DLCで追加された新マップで探索をしていたのだが、外れた射撃、かなりリアルなエフェクト、大きな仕様変更があったらしい。
自分は初見時のワクワクが大好きで、映画やゲームのCMやPVを極力見ず、いきなり体験するのが信条なのだが、今回は失敗したようだ。
まあ、それはそれで新しい環境下での検証をしたり、新しい発見を出来る楽しみがあるので悪いことばかりじゃない。
「しかし、良く許可下りたなコレ」
未だに足元には血を流しながらピクピクしているゴブリン、ゲームの仕様では死体は数秒で消えるのだがそれは起きない。
それどころか小さな虫や鳥に似た生物がどこからか現れ、死体に集まりつつあった。
「おおぅ……生命の神秘」
自分はグロイ物は好きでもないし嫌いでもないが、流石にキツイものがある。
気分が悪くなり、一度ログアウトしようとするが、出来ない。
視界にはゲーム内でいつも見ている様々なゲージ、レーダー、銃の残弾、は映っているのだが、ログアウトのコマンドを実行すると何も起きない。
試しに武器の変更や兵器の召喚も行うが、それは問題ない。
「ファーwww」
嘘みたいで本当にあった異世界転移、でも焦りはそんなに感じずふざけた言葉が口から漏れた。