第8話 ピンクのリボンと青いリボン
柚子とあの謎の戦艦紀伊の艦長が一騎打ちをするらしいという話はあっという間に呉に向かう連合艦隊の艦魂達に伝わった。
その伝わった中の一人戦艦伊勢の艦魂の少女は駆逐艦の艦魂に聞いた後行くか行かないか迷っていた。
「どうしたものかな…」
ふむと自分の部屋の艦魂の能力で発現させた家具を見ながらベッドに腰掛ける少女はある意味女らしいとも男らしいともいえる美少女だった。
長い髪を少々大きめの青いリボンで結び右手の親指と人差し指を顎に当てて考え込む彼女を男が見たら大体ものはこういうだろう。
「凛々しい」
と、白い海軍の士官服と短めのスカート(これが艦魂達の士官の制服)である。
背には2本の日本刀があり鞘には桜を象った紋章が掘られていた。
よく柄を見れば紫電と雷電と書かれているのが分かる。
彼女は連合艦隊最強の剣の使い手比叡の艦魂『朱里』に続く剣の使い手であり二刀流の使い手でもあった。
トントン
そんな時、彼女の部屋の扉を叩くものがいた。
「誰だ?」
彼女が聞くと私だよと声が返ってくる。
「京子か?入れ」
ガチャリと扉が開き新たな艦魂の少女が入ってくる。
その場に彼女達に会うのが初めての人がいれば目を丸くするだろう。
伊勢の艦魂、真名を『剣』と『京子』はまったくの同じ顔をしていた。
髪型や長さも同じだが違うのは京子はピンクのリボンだということだ。
京子は扉を閉めた瞬間いきなり剣に飛び掛かった。
「あっ!」
さっと剣がよけたため京子はそのまま壁にごつんとぶつかって恨みがましい目で剣を見た。
「うう…よけるなんてあんまりじゃ姉上」
剣は呆れた目で戦艦日向の…妹の京子を見て言った。
「お前のスキンシップは過激すぎる。それで何か用か?」
「おお!そうじゃ、そのことで来たのじゃった」
京子はベッドに座る。
もうあきらめたが剣は京子の喋り方は変だと思っていた。
どっかの駆逐艦が姫様口調だといって何やら人気があるらしいが剣には理解不能だった。
「姉上もいくのじゃろ?紀伊とやらに」
「お前にも柚子から連絡が来たのか?」
「当然であろう?戦艦、空母の艦魂には伝わっておるはずじゃ」
「私は行きたくないんだが…」
正直剣は眠りたかった。
もう大分落ち着いたがミッドウェーでは仲間の空母、『蒼龍』『飛龍』『赤城』『加賀』を失いあの紀伊がいなければ皆悲しみに落ちているところなのだ。
艦魂達が騒ぎ悲しみを紛らわせる役目をあの紀伊の艦長とやらがしてくれるなら悪いことではないとは剣は思っていたが…
「姉上がこないとつまらんのじゃ!柚子と人間の対決は剣の戦いなのじゃから姉上がこぬと始まらぬ」
京子が不満そうに言うのを剣は聞きながら
「朱里がいるだろう?あいつと見ればいい」
「いやじゃいやじゃいやじゃ!姉上がいないと嫌なのじゃ!」
とうとう京子は最終手段に出た。
それは只をこねることだ。
見た目は同じなのにすました姉とは違い駄々をこねる京子はわがままな妹そのものだった。
よく規律にうるさい長門の艦魂鈴や柚子にいろいろ言われるがこの妹、実は射撃の名手なのだ。
腰にある2丁の拳銃は100発100中で外さない。
銃を持たせたら朱里や自分でも苦戦は免れない相手で実は昔、鈴や柚子にこの妹は勝っている。
だからあまり二人も大きなことは言えないのであった。
鈴は以前なら連合艦隊旗艦としての権限で京子に言えたが今は大和に旗艦が移りその権限を持つものは撫子だけとなっているのであった。
そして、剣は結構妹のわがままに弱い。
「分かった。分かったから」
「本当か?」
ぱっと笑顔に変わった京子を見てまたやられたかと剣は思ったが今更意見を変えてもしょうがない。
「ああ、行くよ」
「決まりじゃな!ではすぐ出発じゃ」
「何?すぐか?」
剣は時計を見た。
一騎打ちが始まるまでまだ2時間以上もある。
早過ぎると思うのだがそれを京子に言うと
「その柚子と戦う男を見てみたいのじゃ柚子の前に戦うのもいいかものう」
「待て!私はすぐに行くとは…」
慌てて剣は言ったが京子に手を捕まれ光が集まってくる。
艦魂の転移能力である。
「出発じゃ!」
「ま…」
パシュンと光が弾けて剣の部屋から2人は消えた。
「ちょっと大丈夫なの恭介!」
凛はソファーに座り本を読んでいる自分の艦長を見て言う。ちなみに彼が読んでいるのはマンガである。
戦艦紀伊の艦長室である。
柚子が帰った後、恭介は特に何かするわけでなくソファーに座りマンガを読み始めたのだ。
「そ、そうですよ。あの、柚子さんってすごく強そうですよ?」
と言うのは帰るタイミングを逃した藤宮 桜である。
「お前ら心配しすぎだ」
そういいながら恭介は机の上においてあるクッキーを口にほうり込む。
「し、心配なんかしてないけど…」
凛は少し顔を赤くして自分もクッキーを食べる。
桜には凛は口で言うほど心配してないのではと思った。
何を根拠にそう思っているかは知らないが…
「大体な梓にどれだけ俺が鍛えられたと思ってる?」
「梓さん?」
聞き慣れない名前に桜が尋ねると凛は一瞬悲しげな顔を浮かべた。
「機動戦艦『長門』の艦魂だよ。俺はあいつに剣を教えてもらったんだ」
「優しいやつだった…」
「あ…」
まずいことを聞いたかなと桜は思ったが手遅れである。
気まずい沈黙が部屋を覆う。
その時光がいきなり収束し
「こら!いきなりこんな…」
といいながらポニーテールの青いリボンの少女と…
「構わぬ!奇襲じゃ奇襲!」
まったく同じ顔のピンクのリボンの少女が現れた。
恭介は対して慌てもせず本から目を離して二人の姉妹を見た。
「誰だお前ら?」
「ふむ、よくぞ聞いてくれた。我が名は…」
それが伊勢姉妹と桜の出会いであった。
桜「さて今回は」
京子「ふむ、姉上ではなくわしが先か?」
凛「日向の艦魂ね」
京子「汝は紀伊の艦魂じゃな」
凛「そうだけど?」
京子「よろしく頼むぞ凛」
凛「な、なんか偉そうね…」
桜「えっと真名でいいかな日向さん?」
京子「ん?よいぞ?ここでは我が名と同じ名を持つものがいるからな。真名なぞわらわは気にせんよ」
凛「完全に姫様口調ねあんた」
京子「気がついたらこの喋り方だったのじゃ。しかたなかろう?」
凛「ま、いいけど…」
桜「き、紀伊さん文字数が…」
凛「ふん、携帯だと600文字しかないなんて差別よこれ」
京子「こちらも無制限にしてほしいものじゃ」
桜「確かに…」
作者「まあ、無理ですね」
桜「あれ?草薙さん」
凛「ちっ」
京子「誰じゃ汝?」
作者「私こそ独立機動…」
凛「飛び散りなさい」
作者「ぎゃああああ」
ズドオオオオオオン
京子「おお」
桜「ああ…」
凛「ふん」
京子「派手じゃのう」
凛「まあね」
桜「ああ!文字がもう!京子さん最後に自己紹介と挨拶を」
京子「ふむ、よかろう。戦艦日向の艦魂、真名は京子じゃ。みなのもの、よろしく頼むぞ。意見・感想は歓迎じゃ」
作者「うう…」
京子「ふむ…ここでの風習は吹き飛ばすことか…」
ズドオオオオオオン
作者「ぎゃああああ」
京子「これでいいかの?」