彼らの世界
「あの子は自分の生きる世界を決めたのかい?」
ふと声をかけられて私はのぞき込んでいた画面から目を離した。
これには地上での生活が映し出されて、私たちはそれを見ることが出来る。
「そうみたいです、いやぁ、一時はどうなる事かと思いましたけど何とかなってよかったですよ」
「何とかしたのは私だけれどね?」
その言葉に申し訳なくなり頭を下げると相手は冗談だよ、とからから笑った。
「ひとまず、これからの人生を彼女が楽しんでくれるといいけれど」
「……彼女次第じゃないですか?」
「ふむ……君の言うとおりだ。彼女の人生を決めるのは彼女だからね。人はどんなに名声や富を得ても必ず死ぬ」
「そして…本来ならば転生なんて存在しない。今回は特例中の特例ですから、しかも二件も。こんなの前代未聞ですよ」
私の言葉に相手が肩を竦める。
「仕方ないさ、それが神様の決定だ。我々には至る事の出来ないお考えがあるのだろう……さ、彼女の事はもういいだろう?これからまた導かなければいけない人間たちがたくさんくるよ」
その言葉に私は画面を閉じて立ち上がる。
これからまた多くの人間を導き、時には試練しなくてはならない。
人の世界で起こることは全て霊的現象だ、それをしらない人間たちは科学でもって目に見える形にしないと信じようとしない。
仮に目に見える形にしたとしても、信じる者は少ないだろう。
そして体を脱ぎ捨て、魂だけになって初めて世界の心理を知るのだ。
天使や悪魔が居る事、神様がいる事。
………魂の世界は永遠に続くことを。
「さて…行きますか」
私は気合を入れながら声をかけてきた同胞と共に、天使としての役割をこなす為現場に足を向け歩き出した。




