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ミケモカ編

「モカ様、好きです!僕と付き合ってください!」


入学してから何度目になるだろう、この台詞。そろそろ主人公補正に休暇を与えたいと思う今日この頃。


「ごめんなさい、私好きな人いるから」

何度目かの台詞を告げて振り替えることなくその場を立ち去る。


私、秋葉モカはミケくんとお付き合いを初めてから何度か告白されている。

相手は異性だったり同性だったり、歳上だったり同級生だったり。


最初の頃こそ「これが主人公補正ってやつなのかな、やだ私ってばかつてないくらいのモテ期!」とか喜んでたけど何度も何度も続くといい加減に疲れてくる。

贅沢な悩みなのかもしれない、けど私が好きなのはミケくんただ一人だ。

ミケくんにモテていればそれでいい。


廊下に設置された自販機でココアを買い、ベンチに腰かける。

放課後の時間を部活に勤しむ生徒たちの声が何処か遠い。

一人ぼんやりしていると不意に肩をポンと叩かれた。振り替えると大好きな人の姿。


「疲れてるみたいだね、大丈夫?」

そういって私の頭をよしよしと撫でてくれるミケくんに思わず頬が緩む。

「だ、大丈夫!すぐに元気になるから」

そう言うとミケくんは私の隣に腰を下ろす。


「無理しなくていいからね。オレに出来ることがあったらなんでもいって!」

「ありがとう…ミケくん」

その優しさに嬉しくなって微笑み、どちらからというわけでもなく手を繋ぐ。伝わる温もりが少しだけささくれた私の心を穏やかにしてくれた。



けれどその時間は一瞬で終わる。

さっき振った男子生徒が私の後を追いかけてきたのだ。

「モカ様、どうしても貴女を諦められない、好きなんです!チャンスをください!」


よりによってミケくんの前で!


男子生徒が私にすがろうと手を伸ばしてきた。

けれどすぐに間に入ってきたミケくんによって阻まれる。ミケくんは私を片手で抱き寄せて、もう片方の手で男子生徒の手を叩き落としていた。


「悪いけど、モカちゃんはオレの彼女なんだ。手、出さないでくれる?」

じっと男子生徒を睨む瞳は細められて感情がないように見えた。


「なっ……!」

男子生徒は驚愕して私たちを見詰める。


うん、驚くよね。私も驚いた、まさかミケくんにこんな形でカミングアウトさせてしまうとは思わなかった。


「……もしこれ以上モカちゃんに付きまとったりしたら…如月家が敵になるけど、覚悟はあるの?」

声色も冷たくいつものにこにこしたミケくんの面影は欠片もない。


「…す、すいませんでしたあぁっ!」


ミケくんの気迫に負けて男子生徒は逃げ去っていく。


「…ふぅ、モカちゃん、大丈夫だった?」

男子生徒が居なくなるとミケくんはいつもの調子で私に話しかける。

「うん……でも、少し吃驚した。ミケくんもあんな顔できるんだね」

「一応ねっ……それにモカちゃんはオレのものだから。それを分からせようと思って」


さらりと自分のもの発言された!?

いや、私は物じゃないよ!?物じゃないんだけど…ちょっと嬉しいとか思ってる私がいる!



「モカちゃん…顔赤いね?」

私の顔を覗き込んでミケくんが笑う。

「こ、これはミケくんのせいで…っ!」

恥ずかしくなって弁解しようとすれば、ミケくんの指が私の顎に添えられる。

「オレのせいで赤くなるんだ?…可愛い」

そのまま上を向かされ唇が重なった。


唇越しに伝え会う熱に、鼓動が加速して心臓が破裂しそうになるのを感じながら私はぎゅっとミケくんにしがみついてその熱を受け入れたのだった。


ミケモカ編はただこの2人をいちゃつかせたかっただけです(*ノωノ)

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