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7話 シベリアンハスキーな執事

お使いデビューから数ヶ月後、家庭教師の授業が終わると私とソラはお父様に呼び出された。


この世界のお金持ちは中学生レベルまでの勉強なら学校にいかず家庭教師に教わることが出来る。

私にとっては楽勝な学業だが、変に優秀な事がバレればうちの両親は親バカなので「もっとレベルの高い家庭教師を!」とか「うちの娘は神童だ!」等と言い出す可能性があるので、知能は外見に合わせている。


自意識過剰だって?

いや、一回試したのよ。

家庭教師のテストで満点取ってどや顔でお父様とお母様に見せたら、本当に天才だの神童だの言い出しからおっとこりゃいけねぇわと思って。その後はわざといくつか問題を間違えるようにしたの。

仕事でも同じでしょ?入ったばっかりの新人が頑張らなきゃ!って気合い入れて良い結果を出すと、最初から能力があると思われて過大評価され、上司からこき使われたりとか…。

常にフルパワーを求められたりとか、できないと理不尽に怒られたりとか……。あれ。おかしいな、前世の自分に心当たりがありすぎで目から水が…。

つまり何事も程々が良いってことですよ、うん。



とまぁ、この世界の学業事情は置いておくとして問題はお父様だ。ソラと一緒にお父様の待っているリビングに向かう。


おっと、これはなんかデジャヴだ。また弟か妹でも連れてきたとか……?


私のお父様はお人好しだ。ソラの時もそうだったけれど、困っている人を見たら相手がどんな人でも放っておけない。自分ができる限りの事をしようとする。

お母様に聞いた話だと、うちの財閥が経営してる会社に顔を出した時、たまたまパワハラの被害を受けてる社員を見つけたらしくて。自分が首を突っ込んで業務形態や就業規則を見直し、社員1人1人と面談しパワハラをしていた人を改心させるくらいにお人好しとのことだ。めっちゃいい上役じゃないか。羨ましい、何その希少なホワイト企業。


将来は是非お父様の下で私も働きたい。

そう言ったらお父様もお母様も目頭を押さえて「なんて親思いの優しい子なんだ」とか泣かれた。

うちの両親の涙腺、壊れてませんかね?そして親バカ過ぎませんかね…これが仕様なの?





リビングに入ると、お父様とお母様がいてその横に燕尾服を着た少年がいた。

皆さん、燕尾服ですよ、燕尾服。某都心のカフェとか二次元以外では初めて見た。

少年の髪型と、そこから見える犬耳には見覚えがある。ソラが誰?と眉を寄せると同時に私は彼に駆け寄った。

「………コタローくん?」

恐る恐る声をかけると、にっこりと微笑まれる。

「はい、お久しぶりです」

「本物だ!なんでうちにいるの?」

再会できた喜びと疑問にお父様とお母様を見上げると、二人は生暖かいような視線をこちらに向けてくる。

あれ、なんか違和感というか…何その視線。なんかとんでもない勘違いしてませんか?

「彼のお父さんとお父様は学生時代の友達でね。この前お使いの時に、ハルが彼を助けてあげたことを聞いたんだよ。それで恩返しと社会勉強もかねて、執事として我が家で働かせてくれないかと頼まれたんだ」



執事!執事とはあれですか…主人に忠実な紅茶の入れ方とかが様になる人!銀食器で悪と戦ったり、サバンナ育ちで燕尾服の中に鞭とか忍ばせて、裏社会で首領とか呼ばれ某国を牛耳っているという……え、違う?

でも、うわぁ、本当にいるんだ!?カフェとか二次元じゃなくても実在するんだ!



「…執事?」

私が首を傾げると虎太郎くんは、はいと頷いて私の手を取った。

「あの時ご自分も怪我をされて独りだったのにも関わらず、私をお救いくださったハル様に心打たれました。この西園寺 虎太郎、誠心誠意お仕えさせていただく所存であります」



んん…?この前会った時とだいぶ雰囲気も口調も違っていませんか?様とかつけられた。お嬢様と呼んでもいいのよ!ってそうじゃない。

もふ耳はあれど尻尾は無いのにブンブン左右に揺れる尻尾が見える気がする……


私を見つめる視線は、主に忠誠を誓う忠犬みたいに見える。


うん、見えるじゃない、忠犬だ。犬科だし。


その時、私の手を取っている虎太郎くんの手をソラがぱしんと叩き落とした。

「ハルに触るな」

ギッと虎太郎くんを睨むソラに、虎太郎くんも睨み返す。バチバチと火花が散っているようだ。

「あらあら、ハルったら私に似てモテモテねぇ」

うふふ、と頬に片手を当ててお母様が微笑む。


それは絶対違うよ、お母様…。

いや、確かにお母様にそっくりな私は可愛い顔に生まれたと思います!毛並みもそれなりにいいし、前世の私より顔の配置とか整ってるし将来美少女に成長しそうです。

って、いや、だからそうじゃなくてね。

どうせモテるならもふもふにモテたい。もふもふのにゃんこにわんこ………ん?目の前にいるじゃない!

これは……もふもふを期待してよさそうだ!



睨みあって火花を散らす2人を横目に、私は心の中で思い切り拳を突き上げてガッツポーズした。


犬耳をもふもふしたいと切実に願っていたからもしかしたら、あの自称天使が転生先を間違えたお詫びにもふもふしたワンコを私の元に遣わせてくれたのかも!

そう思うことにしよう、違ったとしてもそうだと思い込む!

ウェルカムもふもふライフ!


「と、兎も角。ソラもハルも虎太郎くんと仲良く出来ると思うよ。彼の種類はシベリアンハスキーで、2人の1つ歳上だ。住み込みで執事をしてくれる、とても優秀だから色々教えて貰えるだろうからね」

お父様が私とソラに微笑みかける。

「はい!」

「………はい」

私は笑顔で、ソラはむすっとしながら返事をする。



こうして我が家にもふもふが1匹増えたのだった。



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