74話 自分の良心
私にはどうすればいいのかわからない。
怖い思いをさせられたし、不安にもなった。
なのにあんなに泣いてる犯人の子を見て、責めたり怒ったりする気は起きなかったのだ。
寧ろ一瞬許したいとさえ思ってしまった、けれどあの恐怖は無かったことには出来なくて。
私の感情は『許したい』と『許せない』の間をぐるぐるしている。
結論を出せずに悩んでいると控えめにドアがノックされた。
「ハル…私だ、いれて?」
虎太郎くんの声だ。
そっと鍵を開けるとそこには虎太郎くんが一人で立っていた、ソラの姿はない。
「……大丈夫?」
部屋に招き入れるとそっと手が伸びて抱き締められる。
「コタローくん……私…あの子のこと許すべき?」
抱き締め返しながらそう尋ねてみると虎太郎くんはそっと頭を撫でてくれる。
「ハルはどうしたい?」
「……わからない」
逆に質問されてそう答えると虎太郎くんの指先が私の髪を一房絡めとり弄ぶ。
「……私は、ハルの良心に従えばいいと思う」
「私の、良心?」
首をかしげる私に虎太郎くんは頷く。
「許して心が苦しくなるならそれは悪だ、けど許さないで心が苦しくなるなら…それが悪だ。ハルの心はどっち?」
「私は………」
許したら苦しくなるのか、許さないと苦しくなるか。
「………許さないと、きっと私も苦しいままだと思う。だって誰かに対して嫌な想いを抱き続けるって…顔を合わせる度に辛いし、自分自身も苦しいもの…きっと救われない」
そう呟くと虎太郎くんは優しく微笑んだ。
「ハルがそう思うならきっとそれが正しい答えだ」
「うん、ありがと…コタローくん」
虎太郎くんの言葉でぐるぐるしていた思考が整理された気がする。
礼を述べるとどういたしまして、と頬にキスされる。
「ちょっ…い、いきなりっ!」
突然の行動に顔が赤くなるのを感じながら体を話そうとすると腰に腕を回されて逃げられないように確りと抱き締められる。
「弱ってるハルも可愛いくてつい」
真剣な話をしていたはずなのになんでこうなった!?
「……ダメ?」
首をかしげそう聞かれれば私が断れないのを虎太郎くんは知っている。
「その聞き方はズルい……」
拗ねたふりをして頬を膨らませるとくすりと笑われた。
「ハルが可愛すぎるのが悪い」
そういってこつんと額をくっつけてくる。
「少しでも元気になったならそれでいい」
私を励ますためにわざと話題をそらしたのだろうか、そう思って見つめると触れるだけの軽いキスをされた。
不意打ちに鼓動が高鳴る。
「御馳走様」
訂正、励ます為じゃなく単に虎太郎くんがキスしたかっただけだ、これ。
「………コタローくんのそういうところ…」
「嫌い?」
「………嫌いじゃない」
「つまり?」
「うぅ…」
羞恥心に言い淀む私を虎太郎くんはにこにこしながら見詰めていた。
昔の可愛い忠犬わんこはどこ行ったの!!




