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67話 味方がいてくれる

虎太郎視点です

ハルを実家まで送る前に教科書を取りに行く必要があると言うので、寮母さんに許可を得て私も同伴させてもらうことにした。


ハルの部屋に初めて入ることに少し落ち着かない感情を抱きながら足を踏み入れたが、私はすぐにそれどころではなくなった。

ふと視線を落とした部屋の床に同じ封筒が置かれていたからだ。


教科書を鞄に詰めているハルに気が付かれないように、その封筒を回収して制服のポケットに押し込む。

封筒の上からの感触はまた写真のようだ。

こんなものが自分の部屋の中にあったと知ればハルを余計に怖がらせてしまうだろう。



部屋の中まで入ってくることが出来る人間は限られる…、その人物を特定しなければ…。


そんなことを考えていると準備を終えたハルが声をかけてくる。

挙げ句に迷惑をかけてごめんと謝ってさえきた。



全く…いつもこの子は…

昔からそうだ。

自分の事より誰かの事を心配して、謝らなくても良いことに謝って。

その姿が酷く愛しいと思える私も大概だな


衝動のままに抱き締めながら私は改めてハルを守ると強く決意した。





△△


ハルを送り届け、男子寮に戻った私はクロとソラを自室に呼び出して回収した封筒を開封することにした。


「と言うか何故、虎太郎がハルの部屋に行けるんだ!!」


解せぬと言うようにクロが叫ぶ。


「そんなの決まっているじゃないですが。私がハルの恋人だからですよ」


クロにはハルと付き合うことになった時報告してあった。

クロも淡い恋心をハルに対して抱いていたのは知っていた。その辺りは告白する前にクロにもしっかりと伝えてある。

殴り合いとまではいかなかったがちょっとした擦れ違いもあった、今は和解しているが。


「知ってる、だから悔しいんだ。八つ当たりくらい甘んじて受けろ、この幸せ者め」


「会長、男の嫉妬はみっともないっすよ?」


「ソラ、お前だって大好きな姉をとられて悔しいだろう?」


「俺はハルの幸せが1番だから、ハルが幸せならそれでいいんで」


和解にはソラも力を借してくれた。

ソラがクロを励ましてくれたのだ、それからソラとクロは友情が芽生えたのか前より仲良くなっている。軽口をやり取りできるほどに。


「とにかく、封を開けますよ」


未だに少しふてくされたような顔をしているクロに声をかけると開封する。

中から出てきたのはひまわりの写真と1人で下校するハルの写真だった。


「またこのひまわりかよ」

ソラが意味がわからないと言うように首を傾げる。


「ひまわりの花言葉は『貴方だけを見つめる』。送り主はハルのストーカーってことか」

クロが眉を寄せてひまわりの写真を睨み付ける。


「虎太郎、ソラ、心当たりはあるのか?」


「あったらすぐに捕まえています」

「あったら血祭りにあげてますよ」


言葉が重なり思わずソラと顔を見合わせる。ソラは時々思考が物騒だ。


「心当たりはありません。女子寮に立ち入ることができる人物だと言うことはわかりますが」

私が改めてそう発言すればクロは犯人について考え込むように写真を眺める。


「女子寮に立ち入ることができる人物、と言う時点で絞り込めればいいんだが…入寮許可を与えられている者、もしくは女子寮に居たとしても不自然ではない者……」

クロは眉間にシワを寄せながらハルの写真を手に取りじっと眺める。

前者は犯人が教職員だった場合、校舎は犯人が女子生徒だった場合だ。

男子生徒が女子寮に忍び込むのはまず難しいだろう。

警備もあるし、寮母さんの目もある。

余程うまく侵入できる経路でもない限り、犯人は教職員か女子生徒の可能性が高い。


「犯人探しもだけどハルの安全確保も大事だ。寮の手紙は秋葉に連絡して注意してもらうことにするとして、学校ではなるべく1人にしないように誰かが傍に居られるようにした方がいい」


「なら僕が虎太郎と犯人探しを、秋葉さんとソラにはハルの護衛を担当してもらいたい。どうだ?」


「俺は異論無いです。秋葉にも、あとそれとなくミケにも事情を話して協力頼んでみます」


「よし、頼む。虎太郎はどうだ?」


「私も異論ありません、ですがなぜクロが仕切るんですか?」


「僕は生徒会長だからな!仕切る権力がある!」

答えになっていない答えに胸を張ったクロにソラがぽつりと突っ込む。


「会長って時々アホ……いや、残念ですよね」


「同感だ。クロは残念な部類だと私も思う、顔はいいのに」


「……虎太郎、それはお前もだ。ハルが関わるとお前残念になるじゃん」


「私はいいんだよ、ハルへの愛情込みだから」


「うっわ、のろけんなよ。負け犬…じゃなかった負け猫の前で。会長、可哀想だろ?」


「おい、お前ら!誰が負け犬だ!」


「負け猫でしょう?」


「違う!」

ムキになったクロに「すみません」とくすくす笑いながら私は彼らが味方でいてくれる事に心の中で感謝した。


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