表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/83

55話 混乱

無事にアニマケ2日目の買い物も終えた私達は会場を後にした。

モカちゃんは戦利品を早く読みたいからと、早々に帰ってしまい私と虎太郎くんが残される。


「ハルはこの後、どうする?」

「特になにも決めてないけど……」

「なら、デートしに行こう」

さらりと言われて顔を上げるとにっこり微笑む虎太郎くんと視線が合う。


あぁ、デートですか……デート!?


「そ、そのっ…デートって……あの、デート!?」

思わず声が裏返る私に虎太郎くんはクスクス笑う。

今までこんなに直接的に誘われたことは合っただろうか……いやない。多分。

気がつかなかっただけ?

そんな事ないよ!はっきり言われないと分かりません先生!



待って、逆にこれってチャンス?

アヤメさんとの事聞けるんじゃ……でもそんな事聞いたら気があると思われる!?

気がないなら距離感に気を付けないとって言われたばっかりなのに……!

いや、無い訳じゃない……気もしなくもなくもないけど……うわぁぁ、何この思考スパイラル!



「デート、嫌?」

私が悶々と考えていると顔を覗き込まれた。

「嫌じゃ…………ない」

小さな声でそう答えると虎太郎くんは満足そうに微笑み、私の手を引いて歩き出す。

「何処に行くの?」

行きたいところでもあるのだろうか、と声をかけると虎太郎くんは歩きながら楽しげに答えた。

「ハルの喜ぶところ」




向かっている場所を教えてもらえないまま、私たちは街中のビルにたどり着いた。

手をひかれるままにエレベーターに乗り込み、その扉が開くとそこにはもふもふパラダイスが広がっていた。

………訂正、そこはたくさんのもふもふウサギと触れあうことのできる、私にとって天国のような場所だった。


「ハル、こういうの好きそうだから連れて来ようと決めていたんだ」


好きです!大好きです!もっふー!


私たちは入場料を支払い、ウサギが逃げないように設置されている柵の中に入る。

入ってすぐの所に設置されているソファー上にグレーのウサギがお座りして寛いでいた。

近寄っても逃げないのでそっと手を伸ばして頭を撫でると、気持ち良さそうに目を細めもっと撫でろと言うように手のひらに頭を擦り寄せてくる。



ぐっはぁぁ!!何これ何これ、くっそ可愛い!

もって帰りたい、もっふい!もふもふ!

よし、君にはもふ4つ星を進呈しようじゃないか……え?なに?もっと撫でろって?

可愛い過ぎんだろおおおぉ!!

もふもふもふ、もふっんもふ!もふふー!!!ふんもっふ!


………おっと危ない、久しぶりに人語を忘れました。


「来てよかった?」

不意に虎太郎くんから声をかけられて私は満面の笑顔で頷く。

「連れてきてくれてありがとう!凄いもふもふがもふもふしてて、もふ最高!」

「それはよかった」

そう言って微笑む姿につい見とれてしまう。



あれ、コタローくんてこんなに格好よかった?

いや、いやいや、イケメンなのはもとから知ってるよ!?



半ば強引に視線をはずした私に虎太郎くんが不思議そうに首をかしげた気配がする。

「や、やっぱりもふもふは良いわー!」

見とれてしまったことを誤魔化すようにウサギを撫でまくる。めっさもふいです。

大好きなもふもふをこれでもかというほど撫で回しているのに、すぐ近くにいる虎太郎くんが気になって仕方なかった。








△△

もふもふを堪能した後は遅くなる前に帰ろうと言うことになり、私は虎太郎くんを迎えにきた車に乗せてもらい自宅まで送って貰うことになった。

虎太郎くんの実家は、私の家に向かう途中にあるので遠回りさせてしまうことになる。

最初はそれが申し訳なくて遠慮しようとしたら「車だから気にしなくていい」と言ってくれたのでお言葉に甘えることにした。


車で虎太郎くんの実家の前を通ろうとした時、丁度入り口に見たことのある車を見つけた。


あれってアヤメさんの……!


「すまないが止めてくれ」


私が気が付くのと虎太郎くんが運転手さんに声をかけるのは同時だった。

「ハル、少しだけ待ってて」


虎太郎くんはそういうと車を降りていく、車内に残された私は気まずさを感じなが窓越しに様子を伺う。

虎太郎くんが車を降りてすぐに、向こうの車からアヤメさんが降りてきた。


「虎太郎様、御待ちしておりました」


「……アヤメ嬢、あの件はお断りした筈ですが」


僅かに聞こえてくる会話に耳を済ませる。気のせいか虎太郎くんの声が固い。


「責任は取ってくださると仰いましたよね?」


「もちろん、違う形で取らせていただきます」


「私の希望を飲んでくだされば一番簡単ですわよ?」


背中しか見えないけれど虎太郎くんとアヤメさんは何か話しているようだ。

会話の内容も時々聞こえづらい。

もう少し近付いたら聞こえるだろうかと窓側に寄ってみようと身動きした瞬間、外にいるアヤメさんとばっちり視線があった。

アヤメさんは驚いたように目を見開いた後、ぐっと唇を噛み締めて急に虎太郎くんに抱き付いた。


「私を傷物にした責任を取って結婚していただけないのならば自害致しますわ!私は虎太郎様の事をずっとお慕いしていたのですから!」


車の中にまで聞こえてきたその言葉に私は動きを止めた。



コタローくんがアヤメさんを傷物に………!?

その責任を取って結婚………!?

聞いてくれなきゃ自害って……どういう事!?

というか、アヤメさん重いです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ