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53話 ガールズトーク

「え、えっとそれは…あのコタローくんが…『蒼生の一輪華』に出てくるルークに似てるから写真をお願いされて……それを断るために…」


「断るために?」


「……こ、恋人のフリをする必要が…あ、ったのよ…」


言葉にするほど羞恥心が込み上げてきて、最終的に私は俯いてしまう。羞恥心ゆえに赤くなった顔を隠すために。

顔は見えないけど絶対にモカちゃんはニヤニヤしていることだろう。



モカちゃん何でこんなに楽しそうなの!?

私は恥ずかしくて心臓が爆発しそうなんだけど!!



「写真を断るためだけに、恋人のフリなんて意味ないと思うけどなぁ?断りたいなら『写真は苦手です』って言えば済むんじゃない?」


「でも、そのコタローくんが…」


「西園寺先輩が?」


「………『デート中だから遠慮して下さい』って」


「で?ハルはそれを聞いてどう思ったの?」


「どうって……断るためなら仕方ないかなって」


そう言うとモカちゃんは「あぁー」と落胆したような声を上げた。

顔を上げると頭を抱えている。


「ハルって鈍感?それともわざとなの?…前にも西園寺先輩に『デート』って言われて、ハル自身が西園寺先輩は冗談で『そんなこと言う人じゃない』って言ってたのに」


「……万が一、コタローくんが私を…その、好きだとしても確証がないもん。それに…コタローくんは、アヤメさんと2人きりで出掛けるような関係で…」


「アヤメさんて誰?」


首をかしげたモカちゃんに私はクロくんに呼ばれたパーティーで、アヤメさんに会った事や駅前で2人が仲睦まじく歩いていた事などを話した。


「なるほどねぇ…そんなことがあったんだ」

話してるうちに運ばれてきたパスタをぱくりと口に運び、咀嚼して飲み込んでからモカちゃんはそう呟いた。


「で、ハルはそのアヤメさんに嫉妬して西園寺先輩の気持ちを素直に受け取れない、と。そう言うことね」



ふぉ!?

何でそうなった!?私が、アヤメさんに嫉妬!?



食べかけのオムライスを吹き出しそうになり、慌てて紙ナプキンで口許を押さえる。

「そう言うんじゃないから!嫉妬も何も…私はコタローくんを好きな訳じゃないし…」


「……あのね、ハル」

モカちゃんはスッとフォークを私の方に向ける。


「モカちゃん、フォークは人に向けちゃダメだよ」


「あ、ごめん。気を付ける…ってそうじゃなくて」

フォークをお皿の上に置いて、モカちゃんは私が出しっぱなしにしてたブレスレットを指差した。

「西園寺先輩を連想させるようなアクセサリーを買って、西園寺先輩と一緒にいるアヤメさんに嫉妬して………私から見ればハルは充分、西園寺先輩の事好きだと思うよ」


「私が…?」


私が、コタローくんを好き……?

……え?…えぇ?ええええぇぇぇ!?!?


心臓がばくばくと動き、顔に熱が集中する。完全にフリーズした私を見てモカちゃんは目を瞬かせた。

「ハルは乙女ゲームのヒロイン並みに無自覚なのね」



いや、いやいやいや!

私は悪役令嬢だよ!?ヒロインはモカちゃんです!

と言うか、ちょっと待って、私がコタローくんを好き?

そりゃもちろん、嫌いじゃないよ?

でも…恋愛的な意味かって言われると…素直に頷けなくて…。

でも、恋人のフリをした時…少しだけ嬉しかったのも事実で。


「それがどういう気持ちなのか、しっかりと向き合わなきゃいけないのはハルだからね。もし西園寺先輩を友人としか見ていないなら、必要以上に近距離を許しちゃダメだよ。気がないのに気があるフリをするのって、相手に不誠実だし失礼だもの」



それは確かに…そうかもしれない。

気持ちがないのに、気のある素振りを見せるのはコタローくんに対して失礼だ…コタローくんが私を好きというのを前提にすれば、だけど。

でも、距離を置くのは寂しい気がする…だからと言って好きかと聞かれればその気持ちは曖昧で…



ついに頭を抱えだした私にモカちゃん苦笑を浮かべた。

「直ぐに答えは出さなくて良いんじゃないかな。はっきり告白された訳じゃないんだし、ってこれ前にも言った気がするね……けど、今度はあやふやなままにするんじゃなくてしっかり自分の気持ち考えなさいよ。西園寺先輩とハル自身のためにね」


「モカちゃんは……こんな風に悩んだりした?」


そう尋ねるとモカちゃんは肩を竦めて笑う。

「当たり前じゃない、悩んで迷って…諦めそうになって諦めきれなくて。それでやっと欲しいものを手にすることが出来たの。自分の気持ちに向き合って決めたのは私自身だけど、背中を押してくれたのはハルだよ。だからハルが1歩踏み出す勇気が欲しいって思ったらいつでも相談して、私はハルの力になるわ」


励ましも込めたモカちゃんの言葉に少し胸が暖かくなる。

「ありがとう、モカちゃん」

そう言うとモカちゃんはにっこりと笑った。その笑顔はいつか見たような、男前な笑顔だった。


「でさ、忘れてるかもしれないけど。明日はアニマケ2日目だからね?西園寺先輩、明日もくるんだからね?」




………………………忘れてた!

明日どんな顔してコタローくんに会えばいいの!?




閲覧、ブクマ、評価ありがとうございます。


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