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51話 "素"なんです

そしてやって参りました、アニメマーケット!ててててーん!


本日はアニマケ一日目!

最寄り駅でモカちゃんと虎太郎くんを待つ私は楽しみでそわそわしっぱなしだ。

昨日は楽しみすぎて朝の三時頃まで目がギンギンに冴えていた。



虎太郎くんに会う事に少し不安はあったけど、この前のモヤモヤは……気のせいってことにして今日は思いきり楽しむんだ!



チラチラとスマホを眺めていると先に着いたのはモカちゃんだった。

「ハルー!久しぶりー!元気だった?」

「元気元気!モカちゃんも元気そうだね」

「当たり前じゃない、今日の為に体調は万全だし暑さ対策もバッチリよ!」

「ちなみにサークルチェックは?」

「もちろん抜り無し!」

モカちゃんも大分気合いが入っているようだ。


「秋葉さん、ハルお待たせしました」

「西園寺先輩、お久しぶりです。大丈夫ですよ、私も今来たところです」

モカちゃんより遅れること少し、虎太郎くんとも合流した私たちは会場内へと向かう。

待機列は解消されたものの会場内は人で溢れ帰っていた。


「とりあえず東側を回ろうと思うけど、ハルの見たいところは?」

「乙女ゲームのところ!」

「了解、じゃあ1時間後にこのサークルさん横の柱の下で待ち合わせしましょう。西園寺先輩はどうします?」

「私はハルに同行します」

「わかりました、じゃあハル。健闘を祈るわ!」

「えっ…ちょ、モカちゃん!?」

私の制止も聞くこと無くモカちゃんは肩で風をきりながら目当てのサークルさんに向けて歩き出し、やがて人に紛れて見えなくなった。



まさかのコタローくんと2人!?


てっきり3人で回ると思っていた私は予想外の出来事に動きが止まってしまう。


「それで、ハルは何処に行きたい?」

ふと虎太郎くんに声をかけられて慌ててメモ帳を開く。

「えっと…このゲームのサークルさんを片っ端から見たいんだけど…」

「そうか」

そう言うと虎太郎くんはスッと私の方に手を差し伸べる。

「行こう?」

首をかしげる虎太郎くんに伸ばしかけた手が止まる。


記憶に甦るのは、アヤメさんと虎太郎くんの抱き合う姿。


………いいよね、ここにアヤメさんは居ない。コタローくんの手をとっても咎められる事はないはず…


誰かに言い訳をするように、自分にそう言い聞かせると私は虎太郎くんの手を取った。すると虎太郎くんはふわりと微笑んで手を引いてくれる。

「それじゃあ行こうか」

「う、うん…」


虎太郎くんと手を繋ぎながら、1番近くに設置されたサークルさんを巡る。

それぞれの『好き』を形にしたグッズや同人誌はキラキラと輝いて見える。

そのひとつに目を止めて、足が止まった。


ここは、この前リストアップしたサークルさん!絵柄が凄く好みでイラストサイトも巡回させていただきました!


じわじわと込み上がってくるような興奮をなんとか押し込めて、そのサークルさんで1冊購入する。

「これ、1冊…っ、お願いします!」

「ありがとうございます、500円になります」

代金を支払うと、品物を受け取りすぐに鞄の中へ。家に帰ってから堪能させてもらうとしよう。

礼を言ってそのサークルさんを立ち去ろうとした時だった。売り子さんが「あっ」と声をあげる。

顔を上げてみると視線は虎太郎くんに向けられていた。


「あの、あのっ……ルーク様の現代コスですか!?」


「……はい?」

首をかしげる虎太郎くんをじっと見つめてハッとする。


今更…本当に今更なんだけどコタローくんて素の状態って……私が昔、両親におねだりして買って貰った乙女ゲーム『蒼星の一輪華』に出てくるルークに似てるんだ!

近くに居すぎて気が付かなかった!



ルークと言うのは異世界召喚系乙女ゲーム、『蒼生の一輪華』にてメインヒーローのライバルであり攻略対象でもあるキャラの名前。

攻略前はクールでとても冷たいが、好感度をあげるとデレるキャラクターだ。

ファンからはルーク様と呼ばれネットのキャラランキングではメインヒーローを抑え堂々の1位に輝くほどの人気である。


「あの、この人は…これで素なんです」

戸惑っている虎太郎くんに変わって私が説明すると、売り子さんは口許に手を当てて頬を赤らめた。

「やだ、リアルルーク様じゃないですか!はうぅ、素敵過ぎです!!彼女さん、是非戦闘衣装でコスしてもらう事をお勧めします!」

「そうですね、機会があれば!」

興奮する売り子さんについ私もその気になってしまい、良い笑顔でその場を離れた。彼女さんとか言われた気がするが気のせいだ。


「ハル…、あの方が言っていた『ルーク様』と言うのは…たしかハルがしてたゲームのキャラだった気がするんだが…私はそのキャラに似ている?」

サークルさんを離れて建物の端に行くと虎太郎くんが首をかしげた。

「うん、似てると思う!コタローくんとは長く一緒に居たせいか気がつかなかったけど…比べて見るとやっぱり似てるよ」

そう言ってスマホで画像を検索し、虎太郎くんの顔の横に並べてみる。



似てる。

さっきの売り子さんじゃないけど、これはリアルルーク様だ!服装が私服だから現代コスと思われるのもわかるかも。



そこで気がついた、私たちがいるのは『蒼生の一輪華』のサークルが集中している場所だ。その為、すれ違う人や売り子さん達が虎太郎くんの方を見て黄色い声をあげていた。


「あ、あの…よろしければコスプレ広場でお写真お願いできませんか!?」

不意に声をかけられて振り替えると『蒼生の一輪華』のキャラにコスプレした女性2人が私たちを……いや、虎太郎くんを見ていた。

「あの…彼は素で、コスプレしてるワケじゃ無いんですよ」

私がそう言うと女性たちから驚きの声が上がる。


「えー!素なんですか!やだ、イケメン過ぎる!リアルルーク様素敵!!」

「素でも良かったら撮らせて貰えませんか?お願いします!」

懇願する女性たちに、どうするのだろうと虎太郎くんに視線をやれば虎太郎くんは申し訳なさそうに微笑んだ。


「すみません、今日は彼女とデートなので写真は遠慮させてください。私が居ないと迷子になってしまうので」


……………!?

でぇと!?誰と誰が!?


権版キャラの捏造私服とかスーツとかのコスプレって原作には無くともそれなりの楽しさがあると思うのです…'ω'


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