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42話 弟、女装する

虎太郎くんの言葉に困惑していると、会場の入り口がざわつき始めた。

そちらに視線を向ければ、クロくんと女装したソラが入場してきたところだ。


その姿に視線が釘付けになる。

ウィッグをつけているらしくライトグレーの髪は鎖骨の辺りまで長く、メイクでほんのり桜色になった頬は愛らしさを醸し出している。



男の子だとは思えない……!

身長が少し高いモデルみたいな美人に見える…子供の頃から一緒だから気が付かなかったけど、ソラって綺麗な顔立ちしてたんだ!?



そうでなければ女装もここまで似合わないだろう。

クロくんにエスコートされながら時折微笑む姿に会場がざわめいている。

虎太郎くんも驚いたようにソラを見ていた。


「まるで別人だよね」

「確かに…。ソラの面影が全くない」

「コタローくんはああいうタイプが好み?」


なんとなく尋ねてみると虎太郎くんは思い切り顔をしかめた。イケメンが台無しだ。


「やめてくれ…男に興味はないから」

「もし女の子だったら?」

「仮に女性だったとしても。私はハルにしか興味がない」

さらりとそんな事を言ってのけるので女誑しの素質があるのかもしれない。

ホストクラブに勤めたらすぐにでもトップになりそうだ。

「コタローくんは口が達者だね」

そう告げると困ったように笑われた。



こんなに口が上手いし、見た目もいいから女の子達に人気が出るんだろうなぁ…。



染々とそんな事を思っているとクロくんとソラが近付いてきた。

「ハル、来てくれてありがとう」

クロくんは私の顔をみると嬉しそうに微笑む。対照的にソラは眉間に思い切りシワを寄せて不満そうだ。

「ソラ、美人が台無しよ?」

「うっせ」

こそっと耳打ちすればボソッと呟かれる。

「…話すと一発でバレるから口数の少ない大人しい令嬢ってことにしてる」

クロくんが苦笑を浮かべながら説明すると虎太郎くんが視線をソラに向ける。役割を押し付けてしまったことを後悔しているのだろうか。


「……ソラ、似合ってるぞ」


違った。これ絶対面白がってる。


それを証明するように口の端がひくついていた。

ソラが虎太郎くんに言い返そうとした時、小太りのおじさんにクロくんが声をかけられる。私たちは邪魔にならないようにそっとその場を離れた。



離れてすぐに虎太郎くんがご令嬢に声をかけられる。

「あの…西園寺虎太郎様、ですよね?わたくし、1度お顔合わせさせていただきました桃乃塚アヤメです。覚えておいででしょうか?」

声をかけてきたのは着物が似合う大和撫子を絵に描いたようなすらりとした美少女だった。


ご令嬢って何故か美少女が多いよなぁ…

ちらっとこっちをみた気がするけど気のせいかな……?


「アヤメ嬢、その節はどうも」

虎太郎くんはにっこりと笑みを浮かべてアヤメさんに言葉を返す。するとアヤメさんはぽっと頬を染めてすっと虎太郎くんの手を取った。

「覚えていてくださって光栄ですわ。宜しければあちらでお話いたしませんか?」



おぉ、これは2人きりになりたいというお誘いなのかな!?

凄い…ご令嬢ってイケメンにぐいぐい迫れるだけのステータス持ってるんだね

凄いわー…さすがだわ!



思わず感心していると虎太郎くんは取られた手をそっと離し、私の肩に手を回した。


「申し訳ありませんが、私は彼女のエスコート役なので離れるわけにはいきません。また機会がありましたらその時に」


ニコニコしながら断る虎太郎くんにアヤメさんは残念そうに目を伏せた。そして値踏みするような視線を私に向けた後、「残念ですわ、ではまた」と告げて私たちから離れていった。


「…良かったの?」

虎太郎くんにも人付き合いとか色々あるだろうに、と思い首をかしげると構わないというように頷かれる。

「言ったろう、ハルにしか興味がないって」


あー…私を1人にすると怒ると思ったのかな、そこまで私器狭くないよ?


「私、1人にされても怒ったりしないよ?」

そう言うと虎太郎くんは苦笑を浮かべ私の頭をそっと撫でた。

「私がハルといたいんだ」

その言葉に成る程、と納得がいく。


私といると周りのご令嬢に囲まれなくて済むし、お誘いを断る理由にもなるからか!


「わかった、私がコタローくんのボディーガードになるよ」

任せてくれというように胸をはって見せると虎太郎くんは目を細めて生暖かい視線を私に向けた。

「……あぁ、ありがとう」


あれ、なんか違った?


乙女ゲームでいうならば選択肢を間違えた気がして首をかしげると「ハルはぶれないな」と言われた。


…………これは褒められてるの?馬鹿にされてるの?

よくわからないけど虎太郎くんがどことなく楽しそうなのでそれでいいってことにしておこう。



伊集院ハル、深く考えるのは苦手です。



「ハル、お腹空いてない?何か持ってくるか?」

私が自分の思考を纏めると同時に虎太郎くんが首をかしげた。

視線をあげてみると、会場中央のテーブルには豪華な料理やデザートがバイキング形式で置かれている。

「……美味しそう」

料理をみて呟けば虎太郎くんがくすりと笑う。


「ここで待ってて、持ってくるから」

「私、自分で取りに行くよ?」

「いいからいいから。すぐ戻ってくるから待ってて」

そう言うと料理があるテーブルの方へ行ってしまう。

私は大人しく虎太郎くんが帰ってくるのを待とうと近くの椅子へ腰掛けた。


すると私が一人になるのを狙っていたかのように3人組のご令嬢が近付いてくる、そのうちの1人に急に怒気を含む口調で話し掛けられた。


「貴女、西園寺様を振り回して申し訳無いとは思いませんの?」




アヤメさんは今後また出てきます。

ちなみにソラの女装を手伝ったのはクロくんのお母さんです。ノリノリで服を選んだりメイクをしました。


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