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41話 終業式とパーティー

やっと明日から待ちに待った夏休みだ。

終業式が終わり、8割の生徒は帰省する。モカちゃんとも暫くは会えない。


「じゃあまた連絡するね」

「うん、アニマケ楽しみにしてる!」

そう言って昇降口で別れようとした時だった。



「お休み期間にハル様にお会いできないなんて…!」

「モカ様、どうか休み明けまでご無事でお過ごしください!」

「お二人に会えない休みなんて無くなってしまえばよろしいのですわ」

「休みの間、乗り切れるようにどうか一言いただけないでしょうか?」

「ハル様、宜しければ俺の家のパーティーに来ませんか?」

「モカ様!握手してください!」

「是非、ファンクラブの集会を行ってくださいませ」

「ハル様ー!」

「モカ様ー!」


ファンクラブの会員達に囲まれた。

人の多さに思わず後ずさりすると私たちと会員たちの間に、ファンクラブを統率する4人が割り込んできた。


「はーい、下がって下がって!ハル様とモカ様に迷惑をかけるのはファンクラブ規約違反よー!」

「規約を守らない会員にはペナルティがあるのをお忘れなく」

ハナちゃんとタマちゃんがそう言って私たちを囲んでいた会員たちを、校門までの道のりに順序よく並ばせる。


「贈り物、ファンレターのお渡し希望はこちらに並んでください」

プレゼントを持った子達を並ばせているのは茶色犬耳の爽やか少年1号、東海林シロくん。

「はいはーい、テープから前には出ないでね。あ、普通に通行する人はどうぞー!」

キープアウトのテープを校門から昇降口にかけて張り、道を確保しているのは爽やか少年2号の児玉ジロウくん。

この2人もファンクラブの認知を私に迫ってきたメンバーだ。

ジロウくんの方はいつの間にかソラとも仲良くなっていたようで、ソラから話を聞くこともある。



「うわぁ……ファンクラブってこんなにいたんだ…」

モカちゃんが思わずといったように呟く。


4人に任せきりにしてたから私たちはファンクラブの人数がどのくらいいるのか知らない…ファンクラブを設立して会員カードを発行すると聞いたことはあるけれどこんなにいたなんて……。



私たちはアイドルでもなんでもないんだよ!?歌って踊ったりしないよ!?

いや、歓迎会では踊ったけど!



ここまで熱狂されると当事者としては引く。

本当どこのアイドルだよ、というくらいのファンに囲まれて私とモカちゃんは学校を後にした。


迎えが来ているであろう駐車場に向かうと車に乗った両親が待っている。

「モカちゃんはお迎え?」

一緒についてきていたモカちゃんに尋ねると頷いた。

「さっき迎えに来るってメールがあったからもうすぐつくと思う」

「そっか、じゃあ今度こそまたね」

「うん、後で連絡するね」


モカちゃんと別れて車に乗り込むと既にソラが乗っていた。

「………はぁ」

私が乗り込むとソラは深いため息をついた。

「あら、ソラくんどうしたの?」

「何でもないです、お母様」

「きっと終業式が疲れたんだろう、今日は早めに休むといい」

「ありがとうございます、お父様」


そう言って健気に微笑むそらのため息の原因を私は知っている。

にやつきそうになる口許を押さえると、「余計なことは言うな」と言うようにソラに思い切り睨まれた。








△△

翌日、私は虎太郎くんと共に中御門家主催のパーティー会場へ来ていた。

これこそが昨日ソラがついていたため息の原因だ。



ギリギリまで女装するの嫌がってたもんなあ…



思い切り顔をしかめてクロくんの家に出発したソラを思い出していると、後ろから声をかけられた。

「ハル、喉渇いてないか?」

振り返るとジュースの入ったグラスを差し出す虎太郎くんが立っていた。

「ありがとう」

礼を言ってグラスを受けとると、ふと周りの視線に気がついた。艶やかに着飾ったご令嬢達がそわそわしながら虎太郎くんに熱っぽい視線を向けている。



モテモテですなぁ……。



今日の虎太郎くんはフォーマルスーツを着こなしていて、いつもより少しだけ大人っぽい。


隣に立つのに恥ずかしくないようにお母様にドレスを見繕ってもらって、髪もお団子アップにしてもらったけど……やっぱりこんなイケメンの隣じゃどんなに着飾っても霞むよねぇ…


ふと顔をあげると虎太郎くんと視線が合う。


…見られてた?

………もしかして、地味!?

周りの子みたいにもっとキラキラ装備してこないと駄目だったかな?



周りの子達は宝石のついたイヤリングやネックレス、髪飾りなどキラキラしたアクセサリーを何かしらつけている。

けれど私はアクセサリーをつけるのがあまり好きではなく、唯一つけてるのは虎太朗くんに買ってもらったワンコチャームのリボン位だ。


「この格好、地味かな?」

不安になってそう尋ねると虎太郎くんは首を横った。そしてグラスを持っていない手を私の髪に伸ばす。


「そんなことはない。これ、水族館の時もだったけど今回もつけてくれてるんだな、似合ってる」


そう言って柔らかく微笑むその表情に少しだけ胸が高鳴るのを感じた。


イケメンの笑顔は攻撃力が高いっ!!

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