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38話 生徒会長の偽装婚約者

月曜日、ミケくんは何事もなかったかのように登校していた。

2人が恋人になった事は回りに隠すつもりらしく、事情を知る私とソラにも隠してほしいと頼まれた。

もちろん友人の頼みを断るつもりは元から無いので了承した。



昼休みにモカちゃんとお昼を食べていると急にクロくんに生徒会室へメールで呼び出され、行ってみるとそこには一人で優雅に昼食を取るクロくんがいた。


「クロくん、用事ってなに?」

向かい合うように座り首を傾げるとクロくんは言いづらい事なのかあー、だのうー、だの唸っている。

暫く待っていると意を決したのか、まっすぐに私を見つめて頭を思い切り下げた。



もふもふのお耳!お耳が目の前に!もふもふ不足だった私の目の前に今、もふもふがあぁぁ!!



荒ぶるもふもふ魂を必死に押さえていると、クロくんが口を開いた。


「頼む、ハル!うちのパーティーに出席してくれ!」


…パーティー?もふもふのパーティーですか?


もふもふ不足のためそうだったらいいなと願望が漏れだしてしまうがそんなわけはない。


「夏休みの初日に中御門家でパーティーがあるんだ、そこに参加してほしい。その………僕の婚約者として」



………………

………………………ほ?



クロくんの言葉に目が点になる。


「も、もちろん偽物の婚約者としてだ!」

クロくんが慌てて付け加える。


だよね…!?だよね…!ビックリしたぁっ!


「婚約者の偽装ってこと?」

「あぁ…最近年頃のご令嬢の取り巻きがすごくて…うんざりしてるんだ」

どこか遠くを見るようにクロくんは目を細める。

「僕には大事に想う人がいる。両親にもその事は話して分かって貰っているんだが…周りのご令嬢達の売り込みがすごくてな。諦めて貰うためにも偽物の婚約者としてパーティーに出席してほしいんだ」



財閥の御子息は大変だなぁ…


私も一応ご令嬢の一人なのだが今のところ婚約という話は出てない。クロくんやミケくんのように婚約の話が持ち上がってもおかしく無いはずなんだけど…。


まぁ、いっか。今は婚約とか興味ないし。


「私でお役に立てるなら協力するわ」

「本当か!」

ぱっとクロくんの表情が輝く。

「もちろん、友達の頼みだもの」

「ありがとうハル!」

そういってぎゅっと手を握られる、その瞬間クロくんの手はべしっと叩き落とされた。


いつの間にか生徒会室に来ていた虎太郎くんによって。


クロくんは一瞬、目を瞬かせたがすぐに虎太郎くんを睨んだ。

「どういうつもりだ」

「生徒会室でのセクハラ行為は禁止ですよ」

「セクハラなんかしてないだろう」

「ハルも、いくら友人の頼みでも安請け合いするな」

「おい!無視するな」

クロくんを無視して虎太郎くんは私に向き直る。

「最初は偽装でも、そのまま成り行きで婚約させられる可能性もある」

「そうなの?それは…困るね」

その言葉に思わず目を見張る。


「それに偽装婚約なら相手がハルでなくても良いでしょう。ハルでなくてはならない理由でもあるんですか?」

そういって虎太郎くんはクロくんににっこりと微笑みかける。何故だろう、微笑んでいるのに周りの空気が少し寒い。


「他に頼れる友人がいないんだ、仕方ないだろう」

クロくんはため息混じりにそう呟く。

「いるじゃありませんか、ぴったりの人材が。生徒会に」

にっこりと微笑む虎太郎くんに私とクロくんは首を傾げる。


生徒会で他に女の子っていったらモカちゃん……?


「コタローくん、モカちゃんは駄目だよ!?」


せっかくミケくんと上手くいったのに、クロくんと婚約させられたらその幸せが壊れてしまうかもしれない!


慌ててモカちゃんは駄目だと告げれば虎太郎くんは優しく私の頭を撫でる。

「私がハルの大事な友人を売るわけがないだろう」

「おい、虎太朗、それはセクハラじゃないのか」

「私はハルと旧知の仲なので問題ありません」

「っ…お前なぁっ!」


楽しそうにクロくんと虎太郎くんがやり取りしているが私は余計に思考がこんがらがる。

モカちゃんと私以外に生徒会の女の子は居ない。ならば誰なんだろう?

私が疑問に思ってるのを察したのか虎太郎くんはスッとスマホを取り出して表示した相手の名前をこちらに見せる。


「今からその人物を呼び出す」


その見覚えのある名前に私は頭の隅で「モカちゃんが狂喜乱舞しそう」とぼんやり考えていた。






虎太郎くんの呼び出しから5分後。

眉間にシワをよせ、生徒会室のソファーの上で行儀悪く足を組み頭を抱える1人の生徒。


呼び出されてやってきたのは…私の可愛い弟、ソラたんでした。


「………突然呼び出されて何かと思えば会長の偽造婚約者のフリしろとか無理だろ!」


呼び出された理由を聞かされソラはどこぞの不良ばりに鋭い目付きで虎太郎くんを睨み付ける。


「大体俺は男だ!会長だってイヤですよね!?」

助けを求めるようにクロくんの方を向けば頷かれる。

「当然だ、何が楽しくて男に偽装婚約者の役をしてもらわなければいけない!ハル以上の適任は居ないだろう!」

「そうだそうだ!ハルが適任………は?」

クロくんの言葉にソラが目を見開く。

「ソラが引き受けないとハルがその役回りになるが……いいのか?」

虎太郎くんはじっとソラを見つめる。


「…………」


ソラは数回目を瞬かせると私とクロくんにそれぞれ視線をやる。

そして最後に虎太郎くんの顔を見て……。

「……わかった、やればいいんだろやれば!」

急に引き受けた。それに驚いたのはクロくんだ。

ソラの腕を掴むと部屋の隅に連れていく。


「待て待て!僕はハルが良いんだ!」

「会長、諦めてください。俺、まだハルを嫁に出すつもり無いんで」

「……くっ、シスコンめっ…」

「なんとでも。ハルにやらせるくらいなら俺がやります」



ぼそぼそなに話してるんだろ?

内容が小声のため聞こえにくいが私の名前は聞き取れた。


私じゃ不釣り合いってことかな…?だよね、クロくんなら引く手あまただもん。


会話の内容を予測して納得していると、2人が部屋の隅から戻ってきた。

「……流石に男のままだと変な噂になるだろうから、ソラには女装した上で偽装婚約者になってもらうことになった」


「ソラ、本当に良いの?」

納得いかないような顔のソラを見つめて首を傾げると、今にも口から魂が抜けてしまいそうな弱々しい笑顔で頷かれる。

「ハルの事は…俺が守るからな」



私が成り行きで婚約しないように、ソラが体を張ってくれるらしい…。

なんか、ごめん…。


「あぁ、でもどちらにしろハルにも招待状はいくだろうから…是非参加してくれ」

ソラと同じように何かを諦めたような表情のクロくんに私は頷くことしかできなかった。



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