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37話 恋愛成就

ミケくんがモカちゃんの手をそっと包み込みまっすぐ見詰める、その頬は赤く染まり、つられたのかモカちゃんの頬も染まっている。

完全に二人の世界だ。


「……モカちゃんは覚えていないかもしれないけど、オレ……入学前に、夜の公園でモカちゃんと会ってるんだよ」


モカちゃんが息を飲む気配がした。

「あの時、モカちゃんは本当のオレに向き合ってくれた。君の言葉がどんなに嬉しかったか、どんなにオレの支えになったことか…。学園で君と再開できた時、奇跡だと思ったんだ……それから、君のことを知る度に、どんどん惹かれていった」


ミケくんはモカちゃんをまっすぐに見つめる。


「オレはモカちゃんが好きだ。だから…どうか、将来のことも視野にいれてオレの恋人になってください」


その言葉にモカちゃんの頬からぽろっと涙が一筋こぼれる。


「私も…、私も覚えてるよ。夜の公園で会ったこと…。そこからずっとミケくんが気になって仕方なかった…話してるとすごく楽しかった…。だから、その……私もミケくんの、恋人に、なりたい」

語尾につれて小さくなっていくその言葉は、しっかりとミケくんに届いたようだ。

ミケくんはぎゅっとモカちゃんを抱き締めた。


そこまで見届け私は覗き見をやめる。

眉を寄せたソラが小声で悪趣味だぞ、と注意してくる。

しかし、その顔はほんのりと赤い。


自分だって見てた癖に。


…あぁ、でもよかった…モカちゃん、すごく嬉しそうだった。


「ねぇ、ソラ」


顔を手のひらでぱたぱたと扇ぐソラに小声で話しかける。


「なんか、友達が幸せだと自分も幸せだね」

そういって微笑むと、頭を鷲掴みにされわしゃわしゃと撫でられた。

あまりにも雑なので文句をいってやろうかと顔をあげるとソラは微笑んでいた。

思わず、一瞬、ほんの少しだけど…ドキッとするような甘く優しい微笑みだった。








△△

そして私たちは無事に寮に帰ってきた。

ミケくんも一緒に。


ミケくんのご両親はタエさんが調きょ………教育し直すのでミケくんは寮に戻っても問題ないとのことだった。


当主様、めっちゃ強い。

私もあんな風になりたいといったら真顔のソラに止められた…。


翌日の日曜日、寮の自室で過ごしているとモカちゃんがやって来た。

部屋の中に招き入れて2人分の紅茶をいれる。

「ハル、昨日はありがとう。お陰でミケくんと……こ、こ、恋人に…なれました」

頬を赤くしながらそう告げるモカちゃんは全身全霊でもふりたいほどに可愛い。

「お礼言われるような事してないよ、本当に。私がしたのは…モカちゃんのメイクだけだから」


本当にそれ以外何もしてない。

ファンクラブを動かしたのも無駄になったし。物事を納めたのはほぼタエさんだ。


「それでも、きっと、ハルがいてくれたから私は諦めることを考えずに立ち向かえたと思う。だからありがとう」

「…うん、どういたしまして」

素直にそういって貰えるのは嬉しい、少しでも彼女の役に立てたのなら私はここにいて良かったと思う。


「で、モカちゃん。その後どうなの?」


紅茶を飲んで一息ついてから私は首を傾げる。

「その後って?」

「もちろん、ミケくんとの事。恋人になったんでしょ?」

「え……あ、う……」

モカちゃんの顔は真っ赤に染まり猫耳がピーンと立っている。

「なった……けど、そんな、いきなりは何もないよ…?」

頬を染めながらぱたぱたと手を振るモカちゃんはやっぱり可愛い。


「でも……その、将来の事も視野にいれてのお付き合いって事に…なった」


知ってる。

けれど盗み聞きしてました、なんて自白できないので良かったね、と微笑む。

少しだけ、羨ましいななんて思ったり。



「でも、私まだミケくんに……カミングアウト出来てないの」


突然モカちゃんが真剣な顔付きになる。

カミングアウト…?意味が分からず首を傾げる。


「………私、ミケくんに貴腐人ってカミングアウト出来てないの!」


モカちゃんの言葉に思わず頭を抱えた。


大事なのそこ!?そこなの!?両想いになってこれから学生恋愛謳歌しちゃうぞー!っていう時に、それ!?


「も、モカちゃん…それ…大事?」

「大事大事!めっちゃくちゃ大事!」

先程の花も恥じらう乙女は何処へやら、拳を握りしめ力説する姿に面影はない。

「貴腐人を卒業するという選択肢は?」

「無い!」

即答されました。


「ハルだって、仮に恋人が出来たとしても乙女ゲーム卒業できる?」

「出来ない!」

「でしょ?」


モカちゃんの言うとおりです。

趣味はそう簡単にやめられそうにない。


「出来れば、理解してほしいけど…苦手な人だって居るし。もしミケくんに軽蔑されたら私、立ち直れない」

モカちゃんは頭痛を押さえるかのように眉間に手を当ててうつ向く。


「いきなりカミングアウトするとミケくんも驚くだろうからまずは、少しずつ慣らしてみたら?」

「慣らす?」

「まずは、アニメとか漫画とかが好きなのって話をして、ミケくんがそれに慣れてきたなーっと思ったら然り気無くその話を持ち出してみるとか」

提案してみるとモカちゃんは渋い顔をする。

「上手くいくかなぁ」

「ごめん、私腐ってないからわからない…」

「だよね…」

苦笑を浮かべるモカちゃんに謝ると大丈夫だよ、頼りっぱなしでごめんねと逆に謝られてしまった。


「でも、今はミケくんとのこと目一杯喜んでいいんじゃないかな?腐っていることをカミングアウトするかは置いといて」

「うん、そうするありがとうハル」

「どういたしまして」


こうして私たちはモカちゃんのお祝いも兼ねて、束の間の女子会を楽しんだのだった。



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